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呪い9-泊る……と言う事は?

そして、詠美が食事の用意をしていた。


「おかえりー、ご飯できてるわよー」

「え? 早」

「そうかな? 18時ぐらいだしそれぐらいじゃない?」


そう言って靴を脱いでそのまま食事へと移った。

詠美は瓶ビールを用意して



「姫島さんはお酒飲める口?」

と聞いて代美は慌てて


「えっと飲めますがそこまでお世話になるなんて! 泊めて頂いている上にそこまで贅沢するなんて!」


と遠慮していると詠美は


「遠慮しないで、皆で気持ちよくご飯を食べる為にも遠慮されたら気まずくなるわ、飲めないならともかく飲みたいなら一緒に飲みましょうよ」


そう言ってコップにビールを注いで渡した。

そして、照れながら代美はコップを貰って


「あ、ありがとうございます」


と言ってビールを飲んだ。

代はお茶を飲んで


「顔赤いっすよ? 大丈夫ですか?」


そして、代美は照れながら


「そっそうですね、さすがに緊張して回ってきてしまったのかな?」


と言って頭を掻きながら


「今日は止めておきます、明日も仕事があるので」


と言ってお酒を遠慮した。


「そう? 分かったわ」


と言って詠美はビールを入れて飲んでいた。

代は食事を終えて


「ご馳走様、お風呂入ってくる」

「学んだわね、先に入るなんて」

「うん、学んだ、もう後には入らない」


そう言って代はそのまま風呂場に向かった。

その後、代美も詠美も食事を終えて代美は詠美に


「えっと、昨日といい今日といい本当にお世話になりました、取り敢えず今日はそのことでお話がしたいんですが?」


と切り出した。

詠美は神妙な表情で


「話ねえ……なるほど……それで? 寝泊りの当てはあるの?」


と聞いて来たので、代美は気まずそうに


「えっと、今日貯金も下ろしたのでネットカフェなどで寝泊まりをしようかと」

「その貯金額は給料が安定した住居が決まるまで持つの?」

「持ちます、一か月後には給料が入るので一カ月までに住居が決まらなくても給料が出れば何とか暮らせます」


その言葉を聞いて詠美は


「それで仕事の疲れは取れるの? 貴方の仕事は?」

「えっと研究者で詳しい事は守秘義務で話せませんが」

「なるほどね、まあ寝泊まり何かで研究所でも泊れることもあるでしょうね……でもそういうのも含めて疲れが出るはずよ? 寝泊まりが出来れば問題がないと思っているでしょうけどね」

「え?」


そして、詠美は続けて


「貴方はまだ就職したばかりでしょう? だから寝泊り出来る場所があればなんとかなると思っているんじゃない? そう簡単じゃないわよ……ネカフェだって敷居があるだけで禁煙場所を使えても臭いは服に付くし、予約がいっぱいだと昨日みたいに寝泊り出来ないわよ?」

「たっ確かに、でもその日は安いホテルで泊まれば、他にもカプセルホテルとかも!」

「そうね、でもそうやって寝泊りの場所を必死になって探すのもかなり精神的に来るわよ、車中泊だって暖房をつけていないと寒かったり寝心地が悪くて腰が痛くなるわよ」

「……えっと」


代美は詠美を納得させる案が見つからなくなった。

詠美は続けて


「それに新人職員がそんな状態で仕事に支障をきたしたらまずいと思わない? 研究者ってミスが許される仕事なの? ちょっとしたミスが大事故に繋がったりしたらどうするの?」

「……」

「たった些細なことが貴方の将来を潰すかもしれないのよ? ならそうならない為にもここで寝泊まりにしたらいいじゃない! 私だって息子を持つ身として目の前で若者が潰れてしまうかもしれないのに無視なんて出来ないわ、だからここに居候していいのよ」


その提案に代美は申し訳なさそうに


「でも……さすがにいつまでもいるのは……」

「遠慮があるのは分かるわ、息子を車で轢いてしまってその上会ったばかりの人間に迷惑を掛けているんだから、だから私からもお願いがあるの」


それを聞いて代美は俯いた顔を上げて詠美の目を見た。


「これからも息子の送り迎えとか出来るならして欲しいの、そして息子と色々とお話してくれると嬉しい」


代美は不思議そうに


「それぐらいならいいですけど……送り迎えは分かりますがお話をするとは?」


その質問に詠美は


「あの子の周りを見て分からない? 当然の様にあの子を殺す人や悪い噂を立てる大人が少なくともいるの……それに良い大人も息子の呪いに恐れてあまり話したがらないの……そんな悪い人がいるだけであの子の性格は歪んでいくわ、私の話も反抗期なのかあまり聞いてくれなくて」

「そっそうなんですか……」

「それでもしかしたら他の人の善意なら聞いてくれるのではないかと思いまして……精神は壊れなくても悪い方向へと成長するのは止められないみたいで欲望に素直になり過ぎると言いますか」

「あはは……」


代美は苦笑いをしながらも


「でも本当にそれだけでいいんですか? 泊めて貰えるのは嬉しいんですが……他にも何か」


その言葉を聞いて詠美は


「まあそうですね、お金は少し入れてくれると嬉しいですね、一応は夫のお金はあるので今のところは大丈夫ですが」

「それはもちろん! さすがに無償で泊めて貰おうとは! いくらぐらいでしょうか?」

「まあ給料によりますけどそうですね、食事付きで5万ぐらいは? もちろん光熱費とか水道代、そして日用品もその中に含んでいますので」

「え!」

「ダメですか?」


と驚く代美に詠美は不安そうに確認すると


「いやいや、住むはずだったマンションより安くて! 家賃が6万ぐらいでしたのに! 食事は自分持ちで……」

「まあそうね、携帯料金に関しては自分持ちになるので実質4万ではないかもですね、まあパソコンなどの通信代はこっちが払います、どうせ代も使うでしょうし」

「携帯代は貯金から勝手に引き落としになるので大丈夫です、本当にありがとうございます」


とお金の話をしてから詠美は


「そう! それなら良かったわ! 代君が変な方向へと成長しないように一緒に居てくれるんですからそれぐらいの待遇は良くしたいもので」


と微笑みんだ。

代美は嬉しそうにしながら


「ありがとうございます、でももし住む場所が見つかればそこに引っ越します、でも代君の事は気に掛けるようにしますので」

「そう? ありがとう、でも私としてはいつまでもいてくれていいのよ?」

「ありがとうございます」


そして、


「上がりましたー、次どうぞお」


と代はお風呂から上がった。

詠美は呆れながら


「あんたしっかり浸かったの? 少し早いんじゃないのお?」

「え? こんなもんじゃない?」


と言って頭を拭いていた。

そして、詠美は


「代美さん、先に入っちゃって? お風呂の掃除とか勝手が分からなかったりするでしょ?」

「え、あはい! 分かりました! では先にいただきます!」


と言ってお風呂場に入りに行った。

そして、代はニヤッと嗤って


「じゃあ俺は自分の部屋に……」

「私もついて行くわ」

「え? 何で?」

「あんた覗くでしょ?」

「そっそっそんなことねええし!」


と代は明らかに真っ赤になりながら否定するが


「動揺してるという事は本当ね……全く、行くわよ」

「嫌だああああ!!」


そんな代の言葉を無視して代を部屋に放り投げて


「そこでもう寝なさい」


と言ってそのまま部屋のドアを背もたれに缶ビールを飲んでいた。


『ぐそおおおおお!! 開かねえええ!!』


代はドアノブをガチャガチャと回すが全く開かなかった。

代は怒鳴る様に


『こんなところに居られるか!! 早く出せ!』


と言った瞬間


ゴシャアア!!


『あぼヴぁああああ!!』


何かが倒れる音がして代の小さな悲鳴が聞こえた。

詠美はビールを飲みながら


「どんだけ見たかったのよ」


と本気で呆れていた。

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