呪い89-知り予測する
皆からブーイングを喰らった春郎は仕方なく席に座り、代の批判を止めた。
そして、そのまま授業は再開される。
その後、春郎は当然の様に職員室に呼ばれ代は別の場所で説教を受けた。
「君の気持は分かるが……だからと言ってあんな我儘が通る事はこの社会ではない!」
「俺は社会に出れる気がしません」
先生は頭を抱えながら
「それでもな、出るかもしれないという自覚だけは持て! どんなことでも全く予測しないで行動するとゴールデンウイークの様な後悔がお前を襲う……というかお前のそれは本当に予測できなかったのか?」
「何が言いたいんですか?」
代は怪訝そうにしながら先生に質問する。
「お前はいつも自分では何も考えない……いや興味を持たない……その心がお前の嫌な予感や恐怖から目を背けている証拠じゃないのか? そうやって嫌な事や予感から目を背け続ければいつかとんでもない不幸がお前を襲うかもしれないんだ……お前は自分自身の恐怖と向き合う必要性がある」
「は? 何で? まさか先生も先生も俺に正義を……人を救えというんですか?」
「救う? 何の話か知らんが別に正義じゃない……人間は正義が無くても幸せになれるし正義を信じても幸せになれる、だが正義だろうか悪意だろうか不幸になる事は絶対にそれに対して関心がないからだ、どういう思いが働きどういう恐怖や欲望がそこにあるかを興味を持ち知ろうとすればその不幸を予測し回避する事は出来るかもしれないんだ……人を救えなくても良いから興味を持って知ろうとしろ……怖くても知ろうとすることは生きる事にとてつもなく不可欠な幸せの近道だからな」
その言葉に代は全く心が動かなかった。
彼はそんな男であった。
先生の言葉に動く様な男であればきっと正義の犠牲になっていたのだろう。
だがそれだけ冷めていることが彼自身を救う悍ましく冷たい何かであった。




