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呪い8-周りの不幸は……

そして、仕事が終わり代美は帰るし支度をした。


「ではお先です」

「はい、お疲れ」


主任に挨拶をした後代美は研究所を出ると代の向かいに行った。

17時に仕事が終わり、学校に向かいに行く事を伝えていた。

また、死んでしまうかもしれないと思ったのもあるが


(居候の身になったしこれぐらいの恩返しはしたいしね)


そして、学校の近くの駐車場に車を止めて校門の前まで代を迎えに行こうとすると


「あら? 貴方は昨日の……」


と一人の女性が話し掛けてきた。

その女性は中年のおばさんで、髪にパーマをかけており派手な服装であった。

代美はおばさんに対して


「初めまして、姫島代美と申します、今後ともよろしくお願いします」


と頭を下げて自己紹介をした。

するとおばさんは笑いながら


「あら! ご丁寧に! こちらこそよろしくねえ」


と言って頭を下げた。

そして、おばさんは


「校門の前まで来て、誰か知り合いでも待っているの?」

「はい、昨日轢いてしまった彼を迎えに……」


と気まずそうに話すとおばさんは


「あら、昨日は災難だったわね、きっとあのゴミ屑野郎のせいだから気にしない方が良いわよ」


その言葉に代美は少しムッとした。

だけど、代美は代の事をまだ詳しく知らない、だからすぐに否定出来る訳でもなかった。

そして、呪いという恐れるべき彼自身の能力も未知数である為、おそらくおばさんは私を思って言っているのであった。

その為、いきなり気分を害さないように


「いえいえ、あれは私が悪いですよ、ブレーキを掛けたんですけど全く効かなくて……恐らく整備不足ですよ……」


と言って誤魔化そうとするが


「いいえ、違うわ、あれはきっとあのクソガキの責任よ、絶対にそうよ」

「えっと……どうしてそう言い切れるんですか?」


と代美は戸惑いながらもおばさんに聞くと


「だってあの子呪われてるでしょ? なら絶対にそうよ、昨日起こった火事だってあの子がいるから起こったのよ、もはや殺人よ殺人! あの子なんてさっさと死ねばいいのにねえ、気味が悪いわあ……本当に生まれて来るべきではないのよあんな子!」


とおばさんは代美に同意を求める。

代美はだんだんと腹が立って来た。


「あの! 昨日の事故に関しては分かりませんがどうして火事まであの子の責任なんですか? 呪いと関係あるって! 何か知ってるんですか! それにそこまで言うなんて酷いですよ!」


代美は怒りの余り口調をキツめにしておばさんに問い質した。

そんな彼女の様子を見ておばさんはムッとした表情で


「だってそうでしょ! あんな不気味な奴のせいで皆不幸になってるのよ!」


とおばさんは言葉に確信したように言った。

代美は言い返す様に


「一体どんな不幸を起こしているんですか!」

「全部よ! 不慮の事故も人の自殺も会社をリストラされる人がいるのもこの間受験に失敗した二人の高校生にしたって全部あのガキが悪いのよ! あんな奴さえいなければそんなことが起こらないのよ!」


その言葉を聞いて代美は呆れ果てた


(そんなのって……別にあの子が関係しているとは思えない、実際あの子が居なくてもそんなことはよく起こる事でしょうに! 受験に関しては始まれば受からない者も受かる者がいるんだから失敗する人が出来るのは当たり前じゃない!)

「あの子がいれば不吉な事が起こるのよ! アイツは不吉の象徴なのよ!」


そう言って鼻を鳴らしながらドヤ顔で代美に威張り散らした。

代美はそんな様子のおばさんに


「分かりました、貴方がそう思いたいならそう思えばいいでしょう、でも私は自分に降り注いだ不幸があの子のせいだと思っていません! 代君一人に押し付ける程私は落ちぶれてはいません! 子供に責任を押し付ける様な趣味はありませんので!」


とハッキリ言い切った。

それを聞いておばさんは代美を睨み付けながら


「何なの! あんた! せっかくこの私が注意してあげているのにその態度!」

「何してるの?」


そこに呆然と立っている代に代美は


「あ……代君」

「あ~やだやだ! 疫病神が現れたわ、不幸を移されるわあああ!」


そう言っておばさんは逃げる様に走って行った。

代美はイライラしながら


「子供の前でなんてことを……」


と言っていると代は


「? どったのよ? なんかあった?」


と代は代美の方を見ながら聞くが


「な! なんでもない! 何でもないわよ!」


と言って気を遣った。

代はおばさんをチラッと見るなり


「もしかして不幸は俺のせいだとか言ってた?」

「!!」

「ああ、そう……なるほどおお」


と笑いながら頷いていた。

代美は不審そうにしながら代を見ていると


「取り敢えずここじゃ邪魔になるし歩きながら話しません?」

「え? ああ、うんそうだね」


と言って代美は代の言葉通り車に向かった。

代は笑いながら


「アハハハハ! まあそうだろうと思ったけど!! アハハハハハ!」


そのまま歩き続ける。

代美は暗い表情で


「きっ気にしてないの?」


と聞くと代は


「え? ああ、そうだけど? だっていつもの事だしあのおばさんは」


とキョトンとしながら車へと着いた。

そして、代美は車の鍵を開けて


「えっと、私はその……気にしていないからね」


と代に気を遣いながら話すと


「ええ! 寧ろ何でそう思わないの!」


と驚くように代美に話すと


「ええ! まさかそうなの!」

「いや、あのおばさんの言う不幸は全く関係ないよ」

「え?」

「多分受験の失敗とかリストラとか不慮の事故とか」

「ああ、そうね、そう言ってはいたけどなら何で驚いたの?」

「え? だって皆そうだし普通は信じるでしょ? あの言葉を聞いたら」

「えええ……」


その言葉を聞いて代美は冷汗を掻いた。


(彼は……一体今までどんな目で見られてきたのであろう、どんな思いで生きてきたんだろうか……皆から気味悪く思われてその上不幸を呼ぶ人間と呼ばれて……それを彼は疑われることについてさも当然の様に受け入れている……そう思えるようになるまで一体どれだけ傷ついてんだろう……)


そんな事を考えながら運転しながら代美は代に


「大丈夫、私は貴方が不幸を呼ぶなんて信じてないから……」


代はそれを聞いて


「へえ、そんなことを思う人もいるんだあ……まあ別にどっちでも良いんだけど……」

「あははは、興味ないなあ……まあ車で轢いてしまったのは本当に申し訳ないと思っているし……」

「ああ、それは俺の呪いだけど」

「ん?」

「だから、死んだのは俺の呪いのせいだよ、車の故障じゃないから」

「ええ!」


その言葉を聞いて代美は変な声を出してしまった。

代は笑ながら


「アハハハ、ごめんねええ、あの不幸に関しては俺の呪いが関係してるんだよねえ! 多分何回か経験してるよ」


とその言葉を聞いて代美は


「もしかして今まで代君が死んでたのは代君自身の呪いが関係しているの?」

「うん」

「おお、そうかそうか……えっとつまり昨日の夜あんなになったのも不良に撥ねられたり殴られたのは呪いのせいなんだ」


と分析していると代は


「それはあいつ等の趣味かな?」

「もうどれが呪いか呪いでないのか分からなくなってくる」


と考えていると代美は


「ちょっと待って! 趣味! アレが!」

「見てて分からなかった? あいつ等は鬱憤晴らしで俺を殺すよ?」


それを聞いて代美は真っ青になる。


(確かに……言葉の通りあの二人が代君を殺す姿は明らかに楽しんでいた、異常ではあるけどそれがとても自然であるように見えていた……)


そんな俯く代美に代は


「まあ気にしてくれてありがとう、そういう人もいるのは悪い事ではないですよ」


と励まそうと伝えた。

そして、代は誤魔化す様に


「そうだ! 俺の呪いの事を少し教えますよ?」


その言葉に代美は少し表情が戻った。


(この子……もしかして気を遣ってる? 恥ずかしいなあ……大人の私が……)


と思いながらも代美は


「ありがとう、聞かせてくれる?」


と言って微笑んだ。

代は笑ながら


「まあ俺が少し憂鬱な気持ちになったり傷ついたり不安になったりすると心を正常に戻そうとしてその負の感情を追い出すっていうかなんていうか……まあそんなのを出してそれが俺の不幸へと転換するって感じかな? 説明下手でごめんね」

「あ……いやいいのいいの! いきなりだし落ち着いて話して!」

「まあその不幸が俺を死なせる原因になるんだよ、その代わり俺が死ぬだけで特に他の人に不幸を撒き散らす事は無いんだよ」

「そうなの? そういうものって思って良いの?」

「うん、だっておばさんの話を聞いても分かる様にあんな不幸って良くあることでしょ? 多分調べれば分かるよ? 多分離職率が多いのはブラック企業とかだし別にうちの地域の人間が受験失敗しているわけでもないし、てか俺ん家の隣の学生がこの間合格率高い大学受かってたし」

「それを聞いて安心したわよ……ちゃんと自分の責任でない事を理解している事に……」


とホッとした表情で運転していると代は


「俺の責任じゃないって信じてるんじゃないの~?」


と悪戯っぽい表情をすると代美は


「信じてるわよ、でもちゃんと説明出来るようにしておきたいのよ、説明出来ないくせに信じるなんて馬鹿だって言われたら悔しいじゃない」

「無かったらどうするの?」


その言葉に代美は微笑みながら


「なら自分で探すわよ! 私これでも研究者だし! そうして見返してやるわ!」


と言い切った。

その言葉を聞いて代は


「うわあ……臭いよおこの人おお」


残念そうな表情で代美を見ていた。

代美は恥ずかしそうに


「カッコ付けたんだからそんな顔しないで……」


と一気に顔が真っ赤になった。

代は呆れながら


「どうして大人ってそんなにカッコ付けたがるのか分からないっすねエ……まあ別にいいですけど」


そして、そのまま二人は家路へと帰宅した。

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