呪い7-鬼ヶ島組
代を送った後、代美はそのまま研究所へと向かった。
「おはようございます」
と室内へと入ると
「テメエエ! 分かってんのかあ! ああ!」
とドスの効いた怒鳴り声が聞こえてきた。
ビクッとなりながら代美は目を向けると所長が明らかにゴツイ目つきの悪く顔に傷の入った厳つい男に胸倉を掴まれていた。
てっぺんをがツルっとなっている中年オヤジの頭から冷汗が噴き出す、鼻水が白衣にベッタリ付き、眼鏡がずれる。
そして、震えた声で、
「ヒイイイ! ででもおおお!」
と言い訳をしようと口を開くと
「ああ! でもだっとおおおお!! ごらあああ!」
そんな異常な状態を見て代美は
「やっ止めてください! 何なんですか! 貴方は!」
と震える手を押さえ込んで男の腕を掴んで止めに入る。
「おお! 姫島君! 来てくれたか!」
と安心したような声を出す。
男は睨み付けながら
「ああん? 何だ嬢ちゃん?」
と脅す様にメンチを切る。
代美は怯みながらも
「ここは研究所です! 暴れないでください! 危険な物もあるんですよ!」
それを聞いて男は
「そんなもんが怖くてヤクザが務まるかああ!」
とそのまま代美の前を積めていく。
代美は震えながらも負けじと
「ヤクザがここに何の様なんですか!」
と強気に質問する
すると男は睨み付けながら
「嬢ちゃんには関係……」
「うーん、それはどうか分からないが……そうだなあ、ここには忠告に来た」
と男とは別に女性の声がした。
研究所には代美の他にも女性は勤めているがその中の度の声にも当てはまらない声であった。
目線を超えのする方へとやるとそこにはとても美しい赤毛の入ったロングの髪とスタイルの良いスーツを着たおっとりした顔の女性がいた。
「ひい!! 鬼女嬢!」
と男は恐怖した表情でその鬼女と呼んだ女性に頭を下げた。
鬼女はにっこり嗤い、代美の方へと向かうと
「お嬢ちゃん肝が据わってるねえ、最近何か異様な事でも起こったかな?」
と言いながら代美の顔を凝視する。
代美は少し怯えながらも
「そんなことはどうでも良いでしょう! それよりヤクザがどうしてこの研究所に!」
と訳を聞こうとした。
すると鬼女は驚きながらも
「ほほう、君はなかなか良い目をしている、今どき珍しい正義感だ、新入社員はこんな純粋な気持ちを持っている人なんて最近は少ないと思ってたんだが」
と頭を掻きながら鬼女は
「安心してよ、別に危害を加える思いで来たんじゃないよ、忠告をしに来ただけだから」
「忠告って何のこと?」
代美は不安そうに聞くと鬼女は
「それはさっきそこのオッサンに言っておいたさ、もうバカな事をしなければ何も問題はない、そう何もね、君はまだ知らなくても良いさ、このまま火事になったマンションとは別に家を買ってそこで住んでも良いし、今は住まわせて貰っている家に居候して貰っても構わない」
「!! どうしてそれを!」
と代美自身が置かれている状況をピッタリ当てていく鬼女にゾッとした。
鬼女はにっこり微笑みながら
「まあ私らに分からないことは無いさ、そこのオッサンが忠告を守る様に君も見張ってくれると助かるがその純粋な心を汚したくない、ああとても汚したくない! まるで少女の様な綺麗な心だ! その心を大事にね! あ! 自己紹介まだだったね! 私の名前は鬼ヶ島 鬼女! 鬼ヶ島組の若頭だよ! よろしく!」
と頭を下げて挨拶をした。
姫島は返す様に
「私の名前は姫島 代美です、ここの研究員です」
と言って頭を下げる。
鬼女は嗤いながら
「アハハハハハ! 返してくれた! ありがとうね!! 君は常識的で嬉しいよ!」
と言いながら出口の方へと向かった。
「帰るよ!」
「良いんですか!」
「いいのいいの! 伝えたいことは伝えたから」
そう言って手を振りながら
「じゃあねえ! くれぐれも忠告を無視しないように!」
とだけ伝えて二人は去っていった。
代美は不安そうな表情で中年の男に
「主任、一体何があったんですか……」
と理由を聞こうとすると主任は
「……君はまだ知らなくていい」
とだけ言ってそっぽを向いた。
それを聞いて代美は主任に
「知らなくていいって! そんなの納得できません! どうしてヤクザなんかが研究所に!」
と問い質そうとするが主任は
「とっとにかく! 新人の君にはまだ話せない事だってあるという事だ! 入ったからってなんでも話せるわけではないんだよ!」
と代美に怒鳴った。
代美はビクッと震えながら
(落ち着け、私……そんなこともある! 今ここで喧嘩したらせっかく入れた就職先をダメにしてしまう……落ち着けえ)
と自分を冷静にさせようと深呼吸をした。
そして代美は主任に
「はあ、分かりました、これ以上は聞きません、でもいつか話してくださいお願いします」
とだけ伝えて話を終わらせようとした。
主任はホッとしたように
「ああ、いつかな……時が来れば必ず」
と言って主任は代美に
「それでは研究に入ろう、昨日伝えた通り人間の再生能力を最大限引き上げる方法だ」
「そうですね……」
「?? どうしたのかね? 何か気になる事でも?」
と主任は代美の顔を覗くように見ながら聞くと代美は
「い! いえ! なんでも!」
とすぐ否定する。
主任はジロッと見た後すぐに笑顔になって
「そうか、分かったよ、私にも隠し事はある、気にしないでおくよ……」
と伝えて代美は少しホッとした。
(もし代君の事がバレたら研究対象にされるんじゃ……呪いの力って言ってたけどある意味ではあれも立派な再生能力だろうし)
と代の顔が浮かびながらもモルモットの再生力を調べる実験に移った。
その後、他の研究員もぞろぞろと研究室へと入ってきて、再生能力の研究を手伝い始める。