呪い5-登校前
その後、代は少しニタっと嗤いながら
「疲れてるでしょ? 先にお風呂どうぞ」
と代美にお風呂を先に譲った。
代美は嬉しそうにしながら
「ありがとう」
とお礼を言って代の頭を撫でた。
そして、お風呂へと向かった代美を見て代は
『うし! 後風呂で残り湯だ! 女の残り湯うう!!』
と発情していた。
それを見て詠美は微笑みながら代に
「お風呂、私が次に入ってから張り直すね」
「いや、そんな事しなくても良いですよ、代美さんの次に入るので」
「ううん、貴方には新鮮な湯船に浸かって欲しいの、今日も色々あって疲れてるでしょ?」
「そんなそんな」
「良いからそうしなさい」
「……はい」
詠美の圧に代は押し負けた。
そして、張り直したお風呂に入り代は
「畜生め」
と呟いた。
結局お風呂掃除もさせられて踏んだり蹴ったりであった。
代美は寝室へと案内されて隣に詠美が布団を敷いていた。
詠美は申し訳なさそうに
「すみませんね、私と隣で……」
と話すので代美は
「いえいえ、私こそ、それに旦那さんはおられないんですか?」
と聞くと詠美は微笑みながら
「今頃浮気中ですよ」
その言葉に代美は言葉が詰まってしまった。
詠美の目は嗤っていた。
代美は少し恐怖しながらも
「ええっと、そうなんですかああ……だっだいじょうぶなんですかあ」
と恐る恐る詠美に聞くと嗤いながら
「大丈夫よ、証拠は今も確保中だから、いざって時は……うふふふ」
その言葉を聞いて代美は何も聞けなくなり
「そうですかああ……ではおやすみなさい」
「はい、おやすみ」
その挨拶だけを言って眠りになかなかつけずにいた。
そして、眠りに着いたのは1時ぐらいであった。
朝6時、代美は目を覚ました。
詠美はまだ隣でぐっすり眠っていた。
そして、仕事まではまだ時間はあるが他にしないといけない事があるので起き上がる。
「ふああああ」
とあくびをして乱れた髪を整えに昨日案内された洗面所へと向かった。
するとそこには歯を磨いている代がいた。
代美は代に
「おはよう、早いのね」
と少し寝ぼけた声を掛けると代は代美の方を見て
「俺は早く起きて登校しないと絶対に遅刻するから」
とだけ伝えて歯を磨き続ける。
代美はそんな代の邪魔をせずに代が磨き終えるまでは別の場所で待つことにした。
そして、代は制服に着替える為に自分の部屋へと向かった。
代美は代に
「朝ごはんは食べないの?」
と聞くと代は代美の方を見て
「ああ、もう食べたよ、冷蔵庫に入っているパンを……弁当は買うから問題はない」
そう言って代はカバンを背負い
「では行ってきます」
と言ってそのまま玄関へと向かった。
代美は代を見送ろうと
「代君、行ってらっしゃい」
と玄関前で代に手を振った。
代は手を振り返してそのままドアを開けて外に出る。
そして
ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!
そのまま代は上空へと吹っ飛び
「ストラアアアアアイクウウウウ!!」
「やりましたね! ヨウさん!!」
というチャラい声と共に
ゴシャアアア!! ゴギイイ!!
と鈍い音が鳴り代は血を噴き出しながら地面に叩きつけられた。
代美は身震いをしながら膝を崩した。
「ああ……ああああああ」
声が震えて悲鳴も出なかった。
そして、昨日の夜の様に黒い何かが代の体を包み込みへし曲がった腕や体を戻していった。
そして、
「全く、いつもいつも……」
と困りながらも代は学校へと向かおうとした。
「あの……車で送ろうか?」
代美は代に提案すると代は嬉しそうにしながら
「マジで! シャアア!」
ガッツボーズをした瞬間
ボギイイ!!
ゴシャアアア!!
そのまま電信柱がへし折れて下敷きになった。
再び黒い何かが出てきて、電信柱と体を元に戻した。
代は家へと戻り
「じゃあお願いしようかなあ! お願いお願い!」
そのまま代美にダイブしたが
「そうね、昨日のお礼もしたいし」
と代美はそう言いながら代のダイブを避けた。
ゴン!!
代は額から血を流したが数秒で治った。
そして、代は台所に向かって椅子に座って
「じゃあ準備出来たら呼んで!」
と言ってスマホゲームを始めた。
代美は笑いながら
「わかったわ、じゃあちょっと待っていてね」
と言ってそのまま洗面所へと向かった。
代はその間ただひたすらスマホゲームに興じていた。
そして、代美は戻ってきて
「朝食取るけど代君はさっき食べたパンだけで大丈夫?」
と聞くと代は
「ああ、大丈夫大丈夫、朝あんま食べれないタイプだし」
と言ってスマホゲームをし続ける。
すると詠美も起きてきて
「あら? あんたまだ登校してないの? あんたの呪いだと遅れるわよ?」
と声を掛けてきた。
代は詠美に
「代美さんが送ってくれるって」
と話すと詠美は申し訳なさそうに
「ご迷惑をお掛けして申し訳ありません」
と頭を下げる。
代美は笑顔で
「大丈夫ですよ、昨日探してくれたお礼と止めてくれたお礼をしたかったので、それにあんなの見たらさすがに……」
その言葉を聞いて詠美は理解して
「はい、ありがとうございます」
とお辞儀をしながらお礼を言った。
そして
「代、あんたもお礼言いなさい」
と言ってスマホゲームに夢中の代の頭を押さえつけて
「うぐ、ありがとうって言ったのに」
と文句を垂れつつも
「ありがとうございます」
とお礼を言った。
代美は微笑みながら
「良いのよ」
そう言って焼いたパンを食べて、コーヒーを飲んだ。
そして、メイクを終えてスーツに着替え終えた代美はカバンを持って
「お待たせ、時間大丈夫?」
「大丈夫大丈夫、寧ろ早いぐらいだから」
と言って時計を見ると時間は7時半である。
代はニヤッと笑って
「車なら8時半までには絶対に間に合う」
と言い切った。
「それは良かった」
代美は笑顔で答えた。