呪い4-涙と血の気が引く。
代美はびっくりした表情で
「え! どうして……」
すると詠美は微笑みながら
「さっき渡されたマンションが火事になったってニュースで見て心配で息子と一緒に探してたのよ」
と安心したような表情で代美を見ている。
代美は呆けながら
「えっと、わざわざ探しに来てくれたんですか……」
と聞くと詠美は代美を抱きしめながら
「だって息子の事を心配して色々と頑張ってくれようとしている人を放って置けるわけないでしょう?」
と優しい声で囁いてくれた。
それを聞いて緊張が解れて代美は涙を流した。
「ごっごめんなさい、いきなりの事で動揺して……ホテルも漫喫も全部だめで……」
とそのまま抱きしめながら詠美の胸を借りるはずだった。
「ああ……いたんだ」
ブシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!
血を噴出させて脳みそが露わになっている代を見るまでは
「えええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!」
一瞬にして涙と血の気が引いた。
「あんたちょっと見ない間に頭をバットで打ち抜かれたの?」
「うん、仕事で上手くいかなかったのは俺の責任だって」
「えええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!」
「他には?」
「お前は死なないからサンドバックとして利用させろってさ、ほら肩の辺り抉れてるでしょ? 指も何本か落とされた」
「えええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!」
代が自分の負傷を見せながら説明していく。
すると大量の黒ずんだ光が代の体を包み込み傷が瞬く間に修復していった。
「あ、治った……だから俺は行きたくなかったんだ」
「どうせあんたは外に出ればいつもそんなんでしょ? たまには人助けぐらいしなさい」
「俺を轢いた人だけど?」
「それはあんたの呪いが原因でしょうが」
そんな会話をしていると代美は
「えっと……なんだかすみません、私のせいで……」
と頭を下げながら申し訳なさそうにした。
詠美は笑いながら
「良いの良いの! 取り敢えず私達の家に来て、さすがに泊って行った方が良いわ」
代美はその言葉に
「え! いえ! さすがにそこまでお世話になるわけには!」
と遠慮していると代は
「泊る場所あるの?」
と質問すると代美は気まずそうに
「いえ……どこも満室らしくて」
と話すしか出来なかった。
それを聞いて代は
「まあ、別にお母さんが良いなら良いんじゃない? 別段貴方の迷惑にならないなら」
とあまり興味無さそうに代美に話す。
代美は俯きながらも
「えっと……分かりました、それではお世話になります」
とこれ以上断るのも申し分ないと思い提案を受け入れることにした。
代美は詠美に
「えっと、車を止めれる場所ってありますか?」
と聞くと詠美は
「一応はもう一台は入りますよ」
それを聞いて代美は微笑みながら
「何から何までありがとうございます」
お辞儀をしながら代美は感謝を伝えた。
代は車の方を指さして
「取り敢えず家まで行きましょう、寒いし」
そうして、代美は自分の車を発進させて、詠美の車の後を追う様に車を走らせる。
そして、その日は四二杉家で過ごすことになった。
詠美はレンジの中から
「これ食べて、お腹空いているでしょう?」
と言って代美へ料理を振舞った。
代美は驚きながら
「ありがとうございます」
と言ってお礼を言って料理を食べた。
煮物の野菜を口に入れてご飯を頬張った。
涙を流して
「美味しいです」
と言いながらお味噌汁を飲む。
実家ではないがお袋の味を味わっている感覚になった。
いつもはコンビニ弁当などで済ますため、手料理は久しぶりであった。
代はご飯を食べると
「うん、やっぱりカピカピになった」
と言いながらカピカピのご飯と食べ切った。