呪い3-息子が息子を慰める
代はボーっとしながら解放された気分になった。
「ふう、やっと終わった……たく、本当に偽善者多くて困るわあ……正直ああいう系が来られるのが本当に迷惑うう」
先程の代美の親切心を貶しながら椅子に座る。
そして、項垂れながら学習机に向き合い引き出しを開けて、1冊のエロ本を取り出すと
「ま、あいつもあの崩し文字を調べている間に面倒になって理解何てくだらない事と思って諦めるだろ! あんなの本気で調べる奴なんてよっぽどの物好きかガチ変態ぐらいだしな!」
と意気揚々にズボンを降ろして息子を慰め始めた。
ガチャ
「代、そろそろご飯が……」
「……何でノックをせずに入って来るかなあ」
息子が息子を慰める姿を見て詠美は溜息を吐く。
「あんた毎日毎日そんなことしていると本番で使い物にならないわよ? あんたの息子」
「息子の息子にまでケチをつけないでくれませんか?」
呆れる母親に代は本気で迷惑そうにした。
そして、詠美は呆れながらも
「さっさと降りてらっしゃい、ご飯出来ているから」
そう言って部屋から出た。
さすがにご飯が出来たのに降りて来なかったらまた開けられると思い
「仕方ない」
と言いながら息子を仕舞い、下へと降りた。
そして、テレビを付けながら食事をしている詠美に向き合う様に座ると出されている食事に手を付けた。
「いただきますわ?」
「イタダキマス」
そして、再び代は食事を始める。
するとテレビから
『今日の午後、K市のマンションで火事が発生しました、火は先程鎮火され、負傷者はいませんでした』
「火事かあ……大変だなあ」
代はいつもの様に他人事感覚でニュースを見ていると
「あら、この住所ってさっき渡されたので見たような……」
そう言って先程渡されたメモを見ると
「あ! 寧ろあの現場のマンションだ!」
それを聞いて代はキョトンとしながら
「マジで? ヤバイじゃん」
「ヤバいわね、住む家燃えたじゃない」
そして、詠美は携帯を取り出して
「……繋がらないわねえ……心配だしお母さんとちょっと様子見に行きましょう」
と言ってコートを取り出して代の分も渡した。
代は唖然としながら
「え……俺も?」
「当たり前じゃない、二人で探すわよ、その方が効率いいわ」
と言って首根っこを引っ張った。
代は鬱陶しそうに
「ええええ! マジでええ! 何でえええ! 良い大人なんだし一人で何とかなるんじゃないの? もしかしたら救急車に運ばれているかもしれないでしょ! わざわざ野次馬にならなくても……」
「ダメ、例え野次馬になったとしても知った人がいるならば助けに行こうと思えるようになりなさい、あんたの人を助けようって思いにならないのはあまり良くないわよ! それにここで会ったのも何かの縁だし運命だと思ってお母さんの言う通りにしなさい!」
と真剣な目で言った。
それを聞いて代は
「え……何でそんな名言みたいなことを言い出すの……寒いなあ……そして、怖い」
と完全にドン引いていた。
「それに運命って……何? 俺あの人と性行為するの? 結婚するの?」
「貴方は何で運命を欲望的にしか見れないの? お母さん悲しいなあ、あんた少しは欲望以外の理由で動いて見なさいよ、義理とか人情とか……」
と頭を抱えるが、すぐに代の手を引っ張って
「いいから行くわよ、あなたが今までどんな目に合って来たのは分かるけど、だからこそお母さんはあんたを引っ張って行くわよ、このままじゃあんたの将来が心配なんだし」
「ええええ」
「一人より二人で探した方が効率も良いし!
そのまま代は連れて行かれた。
そんな中、代は思った。
(これ絶対にご飯冷めてカピカピになるやつだああ)
そして、無理矢理車に乗せられた。
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詠美は車を発進させた。
代美は困っていた。
(どうしよう、なんてことだ……まさか引っ越すはずのマンションが燃えている……)
代美は住居を失って今日住む場所に困っていた。
「この辺りに漫喫かホテルがあれば良いんだけど……」
そう考えてスマホを使って漫喫とホテルの場所を地図で検索した。
しかし、
「うわああ……かなり遠いなあ……スマホの充電もヤバいし、お金もあまりないし……ガソリンも……うわああああ! めちゃくちゃヤバい! 取り敢えずスマホの電源を一旦切ろう……今付けているといざっておきに……」
スマホの電源をすぐに切り、車を駐車している場所へと向かった。
頭を抱えながらナビを付ける。
そして、一番近くのホテルを見ると
「そうだ! 電話で空いているかを確認しないと!」
と思って再びスマホに電源を入れた。
代美自身もいきなりの事で頭が混乱していた。
とにかく何かしないと思い行動してしまっていた。
そして、近くにあるホテルの電話番号を調べるとすぐに電話を入れた。
そして、事情を話すと
『申し訳ございません、あいにく本日は満室になっておりまして』
その言葉を聞いて謝罪をし再び近くのホテルと漫喫に電話を入れた。
しかし、
『申し訳ございません、あいにく本日は満室になっておりまして』
同じような内容で断られてしまった。
そして、冷静になって考えてみるとその通りだ。
今マンションが燃えており、住まいを失った人間が多い。
そして、住まいを失った人が何処に向かうか。
知り合いの家か親族の家かだと思うが、ホテルに向かう人も漫喫に向かう人もいる。
しかも、代美と違い土地勘のある人は火事の存在を知った時に行動する。
代美は今家に到着して気付いた。
その頃にはすでに遅かったのであった。
そして、運転席でうつ伏せながら
「もうここで寝ようかなあ……でもガソリンも少ないしい……ガソリンスタンドだけ行ってその後コンビニでお金を降ろして……」
と考えていると
トントン
と窓から音が鳴った。
何事だと思って音の方面を見るとそこには誰かが立っていた。
そして、不審に思って外に出ると
「良かった、見つかった!」
と安心したような表情の詠美がいた。