呪い12-イチャモン
代美は四二杉家の家の近くに車を止めるとすぐにチャイムを鳴らした。
「あら? 帰り早いんですねえ……」
出てきたのは詠美であった。
詠美は代美の表情に神妙な顔立ちになり
「似てる」
「え?」
「いつも息子を助けようとして騙される人に凄く似てる」
その言葉に代美は凍り付いた様に恐怖した。
詠美は再び笑顔になると
「まあいいわ……入って……話はそれから」
そして、代美を出迎えてくれる。
代美は呆然としてしまったが、すぐに冷静になり
「わ……分かりました」
そのまま四二杉家の家に入った。
台所には代が眠そうな表情で転がっている。
「布団で寝なさいよ……」
「家とはどこでもゴロンとして見たいという欲求が人間にはある……」
そう言ってゴロゴロゴロゴロ転がりながらソファーによじ登り再び眠ろうとすると
「代君……その……話が」
「俺を保護する話?」
代美が話を持ち出そうとする前に代がその言葉を遮り質問をする。
「え……どうしてそれを……」
「そんなの今までにもいたからなあ……善意なんだろうけど代美さんみたいな残念な人」
その言葉に詠美も頷く。
「言っておくけど代美さんもこれからそういうの沢山言われると思うけどあまり気にしない方が良いわよ」
宥める様に話をする詠美に代美は少し慌てながら
「いや……その……何と言いますか……その山本議員が……」
と上の者の名前を伝えてしまう。
それを聞いて詠美は溜息を吐きながら
「なるほどねえ……だから代美さんも警戒なくそれを信じちゃうのかあ……今まではそれはなかったし盲点だったなあ……他には何か言われなかった?」
年には念を入れてか、詠美は代美に質問をする。
「えっと……鬼ヶ島組と呼ばれる者が代君を狙っているってことを聞いて……ヤクザが代君を何かに使おうとしているって……」
「あああ……それ突いてくるかあ……面倒くさいなアあ…何だよそういうところだけ国っぽい正義を取り繕いやがって……もういいや……で? 保護は俺が行かなきゃダメなの?」
「そう……言ってました」
説得するつもりだった代美だが、いつの間にか二人から質問され答えるだけになった事に違和感を覚える。
代は手を差し出しながら
「そいつらに連絡したいんだけど? ちょっとお願いできる?」
「え?」
「お願いできる?」
代は2回目の御願いで少し眉間にしわを寄せる。
代美は少しビクッと驚きながらも携帯を貸した。
「どの連絡先? 研究所?」
「はい」
もう簡単な受け答えだけで殆ど代と詠美に任せる形へと成り果てる。
そして、コール音が小さくプルプルと鳴って
『代美君か! そっちはどうか? 保護は出来そうか?」
「チャーーース! どうもおお! 四二杉代っス! そちらが寄越した人なら今ここに居ますがそっちは何で来ないんですかああ!」
その言葉に電話向こうの相手は少し驚きながら
『き! 君が代君か! 話は聞いているか?」
「っるうううせええええ! こっちの質問が先だボケえええ! 最初の質問はあの女だろうが俺が答える義務がねえから無視しただけだろうがあああ! なんでお前等は来ねえんだって聞いてんだよおお!」
突如代は電話越しに怒鳴った。
詠美は何も言わずにただ代に電話を任せていた。
『な! 君の為を思って……』
「何が俺の為? 俺は何かあんたらにお願いしたか? お前等が勝手に必要と思ってやっただけだろ? それを有難迷惑だって言ってんだよ! お前等は来ないのか? こいつの任せたままか? ならば答えはノーだ! 以上!」
『待て! 君は状況を分かっているのか! 自分の身に危険が迫っていることを!』
「危険ならもう呪われた瞬間から襲ってきてるわ! 何年前の話だよ! 取り繕った正義に酔った偽善者共があ! キメえんだよ!」
『なんて態度だ!』
「ならもう保護したくないな! さいなら!」
そう言って代は電話をブチ切りした。
「え! いいの!」
「うん……どうでも良いの」
そう言って代は携帯を代美に返そうとした瞬間
プルルルルルルル!
再び電話のコールが鳴る。




