86 真の友達
男の子と話してから数日、俺はいつもと変わらない生活を送っていた。
あれから学校で男の子の姿は見ていない。
男の子はいじめに立ち向かったのだろうか。
それとも変化を嫌って現状を受け入れたのか。
俺には知る方法がない。
今思えば、男の子の名前でも聞いておけばよかったな。
橘からも聞かれた、
「ねぇ、あの男の子はどうなったの?」
「あー、わかんない。でも俺の思いはちゃんと伝えたから」
そう言うしかなかった。
俺たちのやれることはやったと思ってる。
あとは男の子が決めることだ。
これ以上首を突っ込むのは男の子も嫌がるかもしれない。
そう思って学校生活を送っていたが、ふとした時に男の子のことを思い出してしまう。
どうしても男の子のことが気になって仕方ない。
できれば結果だけでも知りたい。
俺はそんなどこか心残りな日々を送っていた。
ある日の部活帰り、
昇降口までの道を橘と歩いていた。
「一馬くん、もう春だねー」
「だな、俺たちももう高校2年生か」
そんな会話をしながら廊下を歩いていると、
前から楽しそうな男の子3人組が歩いてくる。
あまり気にしていなかったがすれ違う瞬間にふと顔を見ると、
楽しそうな3人の真ん中の男の子、それはいじめられていた男の子だった。
俺は驚いて振り返る。
3人の楽しそうな後ろ姿を見つめる。
男の子が真ん中で両隣の2人と楽しそうに会話している。
俺が見たことない、とても楽しそうな表情をしている。
ずっと下を向いて暗い顔をしていたあの時とは大違いだ。
男の子は俺たちに気づいていない。
声をかけたかった。
もうあいつらにはいじめられていないのか聞こうと思ったが、
男の子の楽しそうな、幸せそうな表情が全てを物語っていた。
男の子は変化に立ち向かったんだ。
多分だけど、もういじめられてないのかな。
結果だけしか分からないが、俺と話した後も色んなことがあったんだろう。
「ねぇ!早く行こうよ!」
橘が立ち止まる俺に声をかける。
「うん!今行く!」
向き直った後ろからは楽しそうな声が聞こえてきた。
本当の友達同士の、幸せな空間だ。




