67 採用
学校が終わった放課後、
夕日に照らされた中、橘と2人で駄菓子屋へ向かう。
「駄菓子屋のバイトなんて楽しそう!」
意気揚々と嬉しそうな声をあげて俺の隣を橘がルンルンで歩いている。
夕日に照らされた影が橘の動きに合わせて動いている。
影も楽しそうだ。
「一馬くん!お菓子とかもらえるのかな?」
「えー、それならめっちゃ嬉しいけど」
「絶対もらえるよ!食べ放題だよ!」
ウキウキの橘につられてか、
俺も初めてのアルバイトということもあって気分が上がっていた。
駄菓子屋は駅の近くの公園の前にあるらしい。
あんなところに駄菓子屋があったなんて知らなかったな。
賑やかな駅前から少し横の道に入ると、
一気に閑静な裏道に来た。
奥の方に公園が見える。
閑静な雰囲気に子供達の声が響いている。
公園には砂場とブランコにベンチに滑り台など、
公園の遊具が一通り揃っていた。
子連れの母親が砂場に広がったおもちゃを集めて帰り支度をしている。
「あった!」
橘が公園の横を指差す。
そこには「山内商店」と書いてある大きな看板があった。
店前には自販機やアイスの冷凍ショーケースに古いガチャガチャが設置してあった。
すごいな、まるでジオラマみたいだ。
本当にこんな駄菓子屋が現代にあるなんて。
駄菓子屋の前まで行ってみる。
店内の右には一段上がった畳のスペースがある。
そこにはストーブとテーブルがあり、漫画が並べられていた。
そして左側には色とりどりの駄菓子が一面に広がっている。
透明の入り口をガラガラと開けると、
中にいたおばあちゃんが奥の古びたレジに座りながらゆっくりとした口調で
「いらっしゃい」
と言って俺たちを迎え入れてくれた。
おばあちゃんはショートカットの白髪で目が開いているのか分からないぐらい細い。
この方が山内さんだろうか。
「あの・・・」
アルバイトについて話そうとすると橘が、
「ここで働かせてください!」
先に大きく言い放った。
順序をぶっ飛ばしていきなり言いやがった。
「あら、元気な子だねぇ〜」
おばあちゃんは驚きもせず、
ただニコニコと橘を見つめている。
「いや、えっと、アルバイトを募集してると聞いたのですが」
すぐに補足説明をいれる。
「そうなのよ〜」
「駄菓子屋のバイトなんて楽しそうですよね!ぜひやってみたいと思ってます!」
「これ懐かしい!」
橘は話など聞かずに駄菓子屋の中を歩き回って駄菓子を物色している。
「本当にお店を手伝ってくれるの?」
「はい!ちょうどアルバイト先を探していたんです!」
「それは嬉しいわ!こんな美男美女がいてくれればお店も繁盛するわ!」
駄菓子を見ていた橘が急におばあちゃんにずんずんと近づいていく。
そしておばあちゃんの手を握る。
「私が必ずこのお店を日本一の駄菓子屋にしてみせます!」
「いや、そこまでしなくてもいいんだけどね・・・」
ということで俺たちは即採用された。
早速、次の土日に橘と体験としてお手伝いをすることに。




