56 決別
俺はついに決心した。
橘のこれまでの不振な行動を問いただすと。
橘はどんな反応をするだろうか。
なにか俺たちの関係が壊れそうな気がした。
でも、このまま見て見ぬふりをするのは耐えられなかった。
たとえこれがきっかけで俺と橘の関係が壊れても、またやり直せばいい。
うん、きっとやり直せる。
そして翌日の朝、
教室に入ると既に橘は席に座っていた。
「一馬くん、おはようー」
「うん、おはよう」
いつもとなんら変わらない日常。
「あー、今日の放課後なんだけどちょっと話があるんだ」
「え?部室で話せばいいんじゃない?」
「いや、部活じゃダメだ」
真剣な、決意をもった眼差しで橘を見つめた。
「・・・わかった」
橘が俺の気持ちをわかってくれたのか放課後に話すことを了承してくれた。
俺が席に座った後、橘は俺のことを怪訝そうな顔で見つめていた。
そして放課後、俺は橘と屋上で話すことにした。
屋上は色々と思い出深い。
橘に絵を破られた後もここで話した、国崎さんとの事件も最後はここだった。
「それで話ってなに?」
橘がそう聞いてくる。
屋上の柵にもたれかかった橘は俺をしっかり見つめている。
わかってるんだろう、なにか普通じゃないってことが。
さあ橘に聞くぞ。
「昨日の放課後ってどこ行ってたの?」
「え?・・・別にちょっと出かけてただけだよ?」
橘が聞かれたくないことを聞かれたようにオドオドしている。
「出かけてたってどこに?」
「・・・どこでもいいじゃん」
橘の冷たい態度が心に刺さる。
「なんで教えてくれないの?」
「・・・別に教えるほどのことじゃないから」
悲しい。
橘は昨日、俺が全て見ていたことを知らないんだろうな。
「・・・俺に言えないような場所なの?」
「何言ってるの?別にやましいことなんてないから」
「やましいことがないなら教えてくれてもいいじゃん」
橘は口を閉ざして何も答えない。
屋上に冷たい空気が流れる。
なんで、なんで本当のことを言ってくれないんだ。
「とにかく!もうちょっとだけ待って欲しいの!」
橘が謎に待って欲しいと言いだす。
「いや、意味がわからないんだけど。待つって何を?」
「それはまだ言えない・・・」
もうちょっとだけ待ってって、何を待つんだよ!
今ここで本当のことを言えばいいじゃないか!
もういい、昨日のことを言ってやる。
「昨日、一人で出かけたの?」
「どうでもいいじゃん!とにかく」
「実は昨日の放課後、橘のことつけてたんだ」
橘の言葉を遮って食い気味に答えた。
「え?」
橘が驚いた顔をしている。
「なんだか気になって後をつけたんだ」
「なんでそんなことするの・・・」
「駅を降りて男女2人組みと合流して車に乗ってどっか行ってたよね?」
全部言ってやった。
橘はその場に立ち尽くしている。
「別にやましいことがないならどこに行ってたか教えてくれればいいじゃん」
「でも・・・」
橘の口がうまく回っていない。
「あの後、車に乗ってどこに行ったの?あの男の人は誰なの?」
「・・・今はまだ言えない。お願いだからわかって?」
それを聞いた時、俺の中で何かが吹っ切れた。
「もういい」
一方的に屋上を出て行く。
「一馬くん!ちょっと待って!」
その言葉とは裏腹に、
俺を追いかけてくる足音は聞こえない。
これはそういうことだろ。
屋上から出て、ドアを勢いよく閉める。
まるで俺と橘の間に大きな壁ができたように感じた。
大きな足音を立てて階段を降りる。
行き場のない思いが足音に現れている。
あーあ、最悪のパターンだ。




