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55 尾行


 駅の改札を出てすぐ近くの柱に身を隠す。

奥には橘が歩いていて、その後ろ姿をじっと見つめる。

まるで探偵になった気分だ。

なーんで俺はこんなことをしてるんだ。


 それは少し前のことだった。

橘のスマホに届いた謎のメッセージ。



「京子、昨日はありがとう!ごめんね!遅くまで付き合わせちゃって」


「まさか京子があんなに積極的だとは思わなかったよ〜!」



 俺は橘の浮気を疑ってしまった。

そして昨日の夜、

俺は橘と電話していた。



「最近寒くない?私もうマフラー無いと生きていけないよー!」


「寒いよねー。そういえば明日の放課後とか空いてる?」



 橘との仲を深めたかった。

橘の浮気疑惑があってからそういう思いが強くなった。



「あー、明日はちょっと無理かなー」


「え、なんで?」


「・・・ちょっとね」



 ドキンッ!と心臓が跳ねる。

また俺の中で疑惑が浮かぶ。



「え、ち、ちょっとってなに?」


「まあまあ、とにかく明日はダメなの!」



 橘に無理矢理、話を強制終了させられた。

明日の放課後、何があるんだよ!

最近の橘は不審な行動が多すぎる!


 とても気になる。

俺って重いですか?


 ・・・尾行してやる。

明日の放課後、橘が何してるのか突き止めてやる!


 そして現在に至る。

バレないように電信棒に隠れて移動する。

もうあたりは暗いのでバレはしないだろう。


 橘が立ち止まってスマホを確認している。

道に迷ってるのか?

しばらくスマホの画面を確認すると、すぐにまた歩き出す。


 バレないように後をつける。

どこまで行くんだ?


 また橘が立ち止まってスマホの画面を確認する。

迷ってるのか?


 すると橘が踵を返してこちらへ向かってくる。

まずい!

咄嗟に細い路地に入り、じっとする。

橘が俺の横を素通りしていく。


 よかった、バレてない。

それにしても橘はどこに向かっているんだ?

迷ってるってことは普段行かない場所なのか?


 路地を出て橘の尾行を再開する。

橘はさっきとは逆方向にどんどん進んでいく。

ちょっと待てよ、この先って・・・


 するとすぐにネオンライトが光る、豪華な建物が並んだ場所に出てくる。

おいおい嘘だろ!

この先はホテル街だぞ?

目の前から大人の雰囲気が漂ってくる。


 ホテル街はまっすぐ奥まで続いているが、

入り口に曲がり角がある。

この曲がり角を曲がらないと橘はホテル街に行くことになる。


 頼む!曲がってくれ!

もう電信棒に隠れることなど忘れ、道の真ん中で手を合わせて願う。


 橘は・・・曲がった!

あー!よかった!

マジでドキドキしたわ!


 ホテル街を横目に、橘を追いかける。

橘は大通りに出て、道のそばで待っている。

何してるんだ?

橘の目の前には車がビュンビュン走っている。

タクシーでも捕まえるのか?


 すると1台の車がハザードを出して橘の前に停車した。

え?


 車の中から男女2人が出てきた。

2人も若い。

車と道の間に立って橘を含めた3人は楽しそうに話している。


 おい!これはどっちだ!

白か?黒か?

わからん!

女性もいるから一概に黒とはいえない。

それに橘の男友達という可能性も十分ある。


 先ほど車から出てきた男性が車のドアを開けて橘を車の中へ案内する。

おい!どこに行くんだ!


 3人が乗り込むとすぐに車は行ってしまった。

俺はポツンと置いていかれる。

ただ離れていく車を見つめるしかなかった。




 俺は何をやってるんだ?

浮気を疑って後をつけて。

なんだか自分をすごく惨めに思ってしまった。


 もうこんなことはやめよう。

明日、学校に行ったら問いただしてやる。


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