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48 2つの想い


 屋上に向かって階段を駆け上がる。

国崎さんに命令された、バスケ部のキャプテンはそう言っていた。

なにか今まであった点と点が線に繋がった気がした。


 階段を上がる足は止まりそうにない。

どんどんとスピードが上がっている。


 屋上の扉が見えてきた。

さあ行くぞ。


 ノブを力強く握って回す。

ガチャ、そう聞こえてドアを開けると、

冷たい風が勢いよく体に吹き当たる。


 夕日に照らされた屋上の奥にはグラウンドの方を眺めている国崎さんがいる。

一歩ずつ力強く進んで近づいて行く。



「国崎さん!」



その後ろ姿に大きな声で呼びかける。



「・・・加藤くん」



そう言って国崎さんが振り返る。



「国崎さん、橘の下駄箱にこんな紙が入ってたんです」



国崎さんに橘への罵詈雑言が書かれている紙を見せる。



「へー、それがどうしたの?」



国崎さんは紙を見せても動揺する素振りも見せない。



「これを下駄箱に入れたのは男子バスケ部のキャプテンなんです」


「へー、悪いことするね」


「・・・国崎さんが入れろって命令したんですよね?」



 言った。

心臓がバクバクしているのがわかる。



「違うけど?やめてよそんな言いがかりは」



ここにきてまだ知らないふりをするのか?



「嘘をつかないでください。バスケ部のキャプテンが国崎さんに命令されたって言っているんです」


「そんなのそいつが適当言ってるだけだよー」


「でも・・・」



 くそ!うまく言いくるめられてる。

言い返せる言葉が思いつかない。

国崎さんが裏で操ってることは確実なのに!


 国崎さんは俺を見て笑っている。

全てを見透かされているみたいに感じる。



その時、屋上のドアが開いた。



「お待たせー」



蓮と梅澤がバスケ部のキャプテンを引き連れてきた。



「こいつも話に入れてあげて」



そう言って梅澤がバスケ部のキャプテンを俺の前に押し出す。



「なんで俺がこんな目に!」



バスケ部のキャプテンはそう言っている。



「国崎さんに命令されたんですよね?」


「ああ!こいつにやれって言われたんだ!」



指を指して国崎さんを睨んでいる。



「あなたに命令なんてしてないけど」


「何言ってるんだ!お前が命令したんだろ!」



ダメだ、このままじゃ泥沼になる。



「でも国崎さんは橘といじめ啓発ポスターのことで因縁があるじゃないですか」


「あんなの因縁じゃないよ?だって私は正しいことを言っただけだもん」



正しいって・・・



「国崎さんは自分が正しいと思ってるんですか?」


「そうだよ」


「国崎さんは表面的なものしか見てないから、橘と関わってないからそんなことが言えるんです。俺は橘の味方です。それに・・・」



もう全部言ってやる。



「国崎さんもいじめみたいなことしてるじゃないですか。命令したのも国崎さんだとわかってるんです。嘘をついても無駄です。こんなことしてる人が橘を否定できるんですか?」



 国崎さんは下を向いている。

さすがに響いたんじゃないか?



「・・・そう、命令したのは私だよ」



 ついに白状した。

国崎さんはまだ俯いたままだ。



「・・・文化祭の時に俺たちのクラスのメイド服を切ったのも国崎さんの仕業ですか?」


「・・・そうだよ」




国崎さんは顔をあげて俺をまっすぐ見つめている。



「でも当然の報いでしょ?橘さんも加藤くんをいじめてたんだもん」


「だからってやっていいわけないです。橘の気持ちも考えてください」



国崎さんが悲しそうな顔をする。



「・・・橘、橘ってそんなにあの女がいいの?いい加減あんな女とは別れたら?」


「別れないです。橘は俺にとって大事な存在ですから」



それを聞いた国崎さんの表情が一変する。

・・・え?



「・・・な、なんで泣いてるんですか」



涙が国崎さんの頬を通って下に落ちる。



「橘さんはいいね、加藤くんにそんなに愛されて」


「いいねって・・・」


「でもこれでいじめをした同士、私と橘さんは一緒だよね?・・・私じゃダメなの?」



 ダメなのって言われても・・・

でも国崎さんが本心で語っているのが表情からわかった。



「・・・橘の代わりはいません。ごめんなさい」


「・・・そっか」



国崎さんはまるでそう言われるのがわかっていたかのように笑った。



「加藤くんにはわからないんだね、私の気持ちが。・・・もうこんなことはやめるよ、ごめんね」



 国崎さんがそう言って屋上のドアに向かって歩き出す。

俺の隣に立って、





「私が橘さんより先に加藤くんに出会ってればな・・・」





そう俺だけに聞こえるように言った。



ガチャ、と国崎さんが出て行った音が聞こえた。



「これで解決だな」



蓮が話しかけてくる。



「・・・うん」



 なんでこんなにモヤモヤするんだ。

本当に国崎さんが全て悪かったのか?

自問自答しても答えは出なかった。



その日の夜、眠ろうと目を瞑る。





「私が橘さんより先に加藤くんに出会ってればな・・・」





 この言葉が頭から離れなかった。

もし橘と国崎さんの立場が逆だったら、橘も同じことをしただろうか。





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