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47 犯人


 橘は今日も学校に来なかった。

2日も学校に来ないなんて、さすがに非常事態だ。

このまま学校に来なくなるなんてないよな。

俺が思っていた以上に橘の心の傷は深いみたいだ。



部活が終わり、蓮と昇降口に向かう。



「今日も橘休みだったな。風邪なんて1日で治るもんじゃないのか?」



 蓮には橘が学校を休んでいる理由を風邪だからと言っている。



「ちょっと様子でも見に行ってやれば?」


「うん、そうだね」



 見に行ってやりたい気持ちもあるが、

変に俺が橘を慰めても、

俺のいじめについてのことだから余計状況がこんがらがる可能性もある。





 昇降口で靴を履き替える。

橘の下駄箱を見ると、上履きが寂しそうに置いてあった。

今の俺の気持ちと同じだ。

2日会ってないだけでこんなに寂しいなんて。


 ふと橘の下駄箱の奥を見ると何か紙が入っていた。

なんだこれ。

ルーズリーフぐらいの紙が折り畳まれて入っている。

今日の朝、こんなのあったっけ。

下駄箱の奥にある紙を手に取る。

紙はまだ新しく、埃も被っていない。



「一馬、どうした?」


「いや、橘の下駄箱になんか紙が入ってて」


「紙?」


「うん」



2人で手に取った紙を見る。



「ただのゴミじゃねーの?」


「いや・・・」



 紙は綺麗に折り畳まれており、

ゴミのようには見えない。

意図的に、読んでもらうために畳んで置いてある。


 ゆっくりと折り畳まれた紙を開いていく。

何か書いてあるな。

紙を開いていくと、何やら黒いサインペンか何かで書かれたような文字が、

紙の裏に染みているのがうっすら見える。



「何か書いてあるな」


「うん、配られたプリントとかじゃなさそう」



 紙を全て開くとそこには、

黒くて太いサインペンに走り書きのような文字で、





「二度と学校に来るな!!」





と書いてあった。



「おい、なんだよこれ」



 目を背けてしまいそうな程、

その紙には黒い気持ちが込められていた。



「橘、なんでこんなことされるんだ?風邪で休んでるだけだろ?」



・・・蓮にも本当のことを話すか。



「いや、実は・・・」



 蓮に本当のことを話した。

あの日、いじめ啓発ポスターを貼りに行って国崎さんと会ったこと。

そこで橘が国崎さんにいじめのことについて言われたこと。

橘が偽善者だと言われたこと。



「なんだそれ!じゃあこの紙書いたの国崎さんじゃねーか!」



 俺もそう思う。

でもちょっとおかしい。



「いや、この紙を見て」



 蓮を制止して、

2人で「二度と学校に来るな!!」と書かれた紙を見る。



「これ男の字っぽくない?」


「そうだけど、男の字っぽく書いたんじゃねーの?」


「そうかな・・・」



 俺にはそう思えなかった。

国崎さんじゃない誰かが憎しみを持って書いたように感じた。



「じゃあ誰が書いたんだ?」


「・・・わからない。でも、もう1日だけ待ってみない?」


「いいのか?」


「これ、今日の朝はなかった気がするんだ。もしかして放課後に入れたのかも」


「そうか」


「明日の放課後、ここで待ち伏せしない?捕まえてどういうことか問い正そうよ」


「いいけど一馬、明日も紙を入れに来るとは限らないぞ?」


「いや、入れに来るよ、多分」



 勘だけどそう思った。

こういうやつは1回ぐらいじゃ満足しない。

そんな気がした。




 そして翌日。

橘は学校に来なかった。

これで3日目だ。

心配になってきた。

やっぱり連絡を取った方がよかったのだろうか。

自分の判断が本当に正しかったのかわからない。

でも、橘が今学校に来ると余計ショックを受けるだけだ。


 大丈夫、俺が犯人を捕まえてこんなことやめさせるから。

それで橘が落ち着いたら学校に来ればいい。

焦らなくていい、ゆっくりでいい。

ゆっくり、ゆっくり心の氷が解ければいいい。





 そして放課後、

蓮と2人で昇降口で待ち伏せする。

現時点で橘の下駄箱には何も入っていなかった。


しかし何分待っても、橘の下駄箱に何かするようなやつは現れなかった。



「おい一馬、やっぱ思い違いじゃないか?」



 確かにそうかも。

やっぱりこの紙を入れた犯人は1回で満足したのかも。

俺の思い違いかな。



「そうだな、帰ろうか」



 そうして昇降口から出ようとした時、

橘の下駄箱の前に誰かが立っていた。

明らかに様子がおかしい。


男子生徒が何か紙を橘の下駄箱に入れている。



「おいあいつって!」



 蓮が小さい声で言う。

その男子生徒の顔を見る。

そいつは前に橘にフラれて、その腹いせで俺に喧嘩をふかっけてきた、

男子バスケ部のキャプテンだった。



「あいつ、橘のこと好きだったんじゃないのか?」


「う、うん」



 俺と橘が付き合っていることの腹いせだろうか。

とにかく捕まえて話を聞こう!



「蓮!捕まえよう!」


「おう!」



バスケ部のキャプテンのところへ走っていく。



「おい!お前そこで何してんだ!」



蓮がバスケ部のキャプテンに叫ぶ。



「な、なんだよお前ら!」


「今、橘の下駄箱に何かしようとしてましたよね?」



俺もすかさず問いただす。



「してない!変な言いがかりはやめろ!」



 嘘つくな。

はっきりみてたし、ものすごく動揺してるじゃないか。



「じゃあなんでそんなに動揺してるんですか?」


「してない!もう行くぞ!」



そう言ってバスケ部のキャプテンが歩き出そうとする。



「ちょっと待ってください」


「な、なんだよ」


「その後ろに隠してるのはなんですか?」


「な、なにも隠してない!」


「じゃあ手を前に出してくださいよ」



 バスケ部のキャプテンは何も言わずこちらを睨んでいる。

ジリジリと距離を詰める。


 急にバスケ部のキャプテンが走り出した。

逃げようとする気だ!



「おい待て!」



 2人で後を追おうとすると、

ガンッ!と誰かが下駄箱に足をかけてバスケ部のキャプテンを止める。




「お、お前は!」



バスケ部のキャプテンが驚いて後ろに後ずさる。


 長い金髪に短いスカート。

そう、梅澤がバスケ部のキャプテンを止めていた。



「美術部に遊びに行こうとしたら誰もいなくて、こんなところで何してんのよ」



スラッと伸びた白い太ももでバスケ部のキャプテンの行く道を止めている。



「色々あってね、それよりそいつを捕まえて!」



 バスケ部のキャプテンが無理矢理、

梅澤の止める道を進もうとする。

すると、梅澤がバスケ部のキャプテンの腹に思いっきり前蹴りを入れた。



「ぐっ!」



うめき声を出してバスケ部のキャプテンがその場に倒れこむ。



「だっさ。それでもバスケ部のキャプテンなの?」



 梅澤が冷たい視線で見下す。

いや梅澤さん、強すぎです。


 蓮がすぐにバスケ部のキャプテンを取り押さえ、

隠し持っていた紙を奪い取る。



紙を開くと、そこには橘に向けた罵詈雑言が書いてあった。



「何これ!?」



 梅澤が紙を見て驚く。

ここまできたら梅澤も関係者だ。

そう思って梅澤に全てを話した。



「え!?京子、風邪で休んでるんじゃないの!?なら早く言いなさいよ!」


「ごめん。どうしたらいいかわからなくて・・・なんでこんなことするんですか?」



蓮に取り押さえられているバスケ部のキャプテンに問いただす。



「うざいんだよ!俺のことフリやがって!」


「きっも。そんなんだから京子にフラれたのよ」


「なんだと!」



 バスケ部のキャプテンが蓮に取り押さえられながら梅澤の方を向こうとすると、

向く前に梅澤がバスケ部のキャプテンの頬を踏みつけた。



「スカートの中が見えるからこっち見ないでくれる?」



 腕を組んでいる冷え切った視線の梅澤が言い放つ。

いや容赦ないな。

なんか俺が梅澤にいじめられてた時のこと思い出したわ。



「くそっ!こんなことならあいつに従わなければ!」


「あいつって誰ですか?」


「言わねえよ!」



 梅澤が言え、という風にグリグリ顔を強く踏む。

梅澤さん怖いです!



「く、国崎だよ!あいつが俺にやれって命令したんだ!そうしたら橘に復讐できるって言って!」


「やっぱりあいつじゃねーか!」


「2年の黒髪ボブのあの人ね。前から性格悪そうって思ってたのよ」



 やっぱり国崎さんだったのか。

結局あの人が全ての原因だったんだ。



「今どこにいるんですか?」


「・・・屋上だよ」



それを聞いて俺は飛び出した。



「おい一馬!」



 決着をつけに行こう。

国崎さんが今回の事件の全ての原因だ。

俺は屋上に向かって走った。



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