46 許し
橘は翌日、学校に来なかった。
橘はだいぶメンタルがブレイクしてるようだからまあしかたないか。
あんなに国崎さんに言われたんだ。
でも国崎さんはなんであんなに俺たちに突っかかるんだろう。
昨日国崎さんが言っていたことを思い出す。
「いじめをしてた人がいじめ啓発ポスターを作るんだー、笑えるね」
そんなにおかしいことなのか?
俺からしたらしっかり自分の罪と向き合って偉いと思うんだが。
じゃあいじめてた奴は何もできないじゃないか。
いじめられてた俺が庇うのも変だが。
どうやったら許されるんだ?
「・・・加藤くんのことが心配だから」
なんで心配なんてするんだよ。
なんだかモヤモヤする。
・・・まあいい。
今は橘が心配だ。
「おい一馬、橘は今日休みだな。風邪か?」
蓮が話しかけてきた。
蓮は昨日のことを知らない。
昨日のことはできるだけ大ごとにしたくない。
これは俺と橘の問題だからな。
ここは黙っておこう。
「うん、昨日雨降ってたしね」
ちょっと蓮に聞いてみるか。
「なあ蓮、いじめてた奴ってどうしたら許されると思う?」
「え?」
うーん、と蓮が顎に手をおいて考えている。
「いじめられてた奴が許したら、かな?」
「だよな」
俺もそう思う。
本人が許してるんだからそれでいいんじゃ・・・
「でも第三者から見たらいじめてた奴ってイメージ悪いよな」
蓮が言う。
確かに。
いくらいじめてた本人がいじめのことを後悔していても、
他人から見たらこの人はいじめをするような人って思われるか。
「でも難しいよな。いじめって明確な犯罪じゃないし。逮捕もされないし」
確かにそうだ。
いじめは犯罪じゃない。
もし見つかっても警察が動くようなことはない。
「ふわっとしてるんだろうな。いじめの定義が」
蓮が言う。
「蓮って結構ちゃんとしてるんだな」
「え?バカにしてる?俺って結構賢いんだぞ?」
いや、賢くはないけど。
「あれ、京子は?」
梅澤が入ってきた。
「橘は今日、休みなんだよ」
「まじ?サボり?」
梅澤にも聞いてみるか。
「なあ、いじめてた奴ってどうしたら許されると思う?」
「え、それを私に聞くわけ?」
確かに。
でも梅澤はいじめてた張本人だし、
貴重な意見が聞けるかも。
「まあ、態度じゃない?反省してるかどうか」
「だよな」
「一馬、どうしたんだ?そんなこと聞いて、何かあった?」
「いや、別に」
人それぞれ違うが、
いじめてた奴が許されることについてだいたい思っていることは同じだ。
その日の夜。
自分の部屋でスマホの画面とにらめっこする。
・・・橘に電話をかけようか。
いや、今はそっとしておいた方が・・・
わからん!こういう時はどうすればいいんだ!
これじゃあ彼氏失格だな。
昨日の橘を追いかけられなかったことを思い出す。
結局その日は橘に電話をかけれなかった。




