5 本当の気持ち
主人公目線の時に橘はどう思ってたのかを書いているので、先に主人公目線の5話 雪解け を読むことをお勧めします。
あの日から加藤は私のことを絶対に避けている。
隣の席の私が話しかけても無視するし。
休み時間とか昼休みもチャイムが鳴るとすぐにどっかに行く。
体育倉庫にも来なくなった。
放課後もすぐにどっかに行ってしまう。
多分部活の美術部に行ってるんだろう。
まるで私が透明人間になったみたい。
放課後、私たちだけで体育倉庫に集まるのは久しぶりだった。
「加藤最近全然こねーじゃん。逃げやがったな」
「最後反抗してきたのがムカつくけどな」
里奈たちが話している。
どうせ里奈たちは加藤がいなくなっても次のいじめの標的を新しく見つけるだけだろう。
あの時、絵を破ったことを後悔している。
あれはきっと大事な絵だったんだ。
私にそっくりな絵。
なんで私の絵なんて描いたんだろう。
嫌いな人の絵なんて描くかな?
もしかしてわたしのこと・・・
そんなことないか。
いじめられてたやつのことなんて好きになるわけないよね。
私が無視され始めてから1週間ぐらい経った。
今日も加藤はチャイムが鳴ったら逃げるように部活に向かった。
このままじゃダメってわかってるけど、どうすればいいかわからない。
話しかけても無視される。
圧をかけてやろうかな。
・・・美術部に突撃してやる。
思い立ってすぐ私は教室を飛び出して美術部の部室に向かった。
ここか。
教室のドアの窓から中の様子を伺う。
加藤がなんか準備してる。
他には誰もいないみたい。
今しかない。
勢いよく教室のドアを開ける。
加藤が驚いてこっちを見ている。
ジーッと見つめながらジリジリ近く。
逃げようとしたらすぐに捕まえてやる。
「ちょっと話があるんだけど」
加藤は怯えきった顔をしている。
「・・・忙しいから無理・・・です」
「はぁ!?どうみても暇でしょ!?」
「いや・・・忙しくて・・・」
「嘘つけ!」
押し問答が続く。
加藤は全然折れようとしない。
しぶといな!黙って私の話を聞け!
加藤の目線がなにやら私の後ろに逸れている。
なに?と思って後ろを振り向くとなんか人が集まっていた。
美術部の部員かな?
そんなこと気にせず加藤に圧をかけていると、
「わ、わかったから場所を変えよう」
やっと加藤が折れた。
屋上に連れて行かれた。
屋上は私たちだけ。
「話って・・・なに?」
加藤が覚悟を決めたような顔をしている。
「私のこと避けてるでしょ」
「・・・うん」
やっぱり。
もう嫌われてるんだ。
そりゃそうだ、大事な絵を破ったんだから。
これを渡してちゃんと謝ろう。
「これ・・・」
鞄から絵を取り出す。
破った絵を必死でかき集めてテープで止めて元の形に戻したもの。
すごい時間がかかったけどできるだけ元の形に戻すことができた。
「それ・・・」
加藤に絵を差し出す。
「ごめん・・・ボロボロだけど。他の絵は全部、里奈が捨てちゃって・・・」
「あの時はホントにごめん」
頭を下げる。
これだけで許してもらえるとは思ってない。
「みんなが見てたからやるしかなくて・・・」
本当のことを言った。
ちゃんと私の思いを伝えたかったから。
「全然いいよ、それよりこの絵一人で集めて繋ぎ直したの?」
「うん・・・」
加藤が絵を見つめている。
この絵は私をモデルに描いてくれたのかな。
「その絵・・・私だよね?」
顔や髪型など特徴がうまく捉えられていて、
どう見てもわたしだった。
でも体育倉庫では違うって言っていた。
「うん」
「なんで私を描いたの?」
嫌いな奴の絵なんて描く?
加藤の本心が知りたかった。
「いや・・・」
加藤が慌てている。
「橘も最初は俺をいじめていたのになんで急に優しくなったの?」
「えっと・・・」
いきなり核心を突かれて戸惑ってしまう。
加藤が気になっているから、なんて言えるわけなかった。
ましてや、いじめてたやつが今更気になってるなんておかしい。
そうだ、加藤に謝ろう。
いじめてたことを謝れるチャンスなんて今しかない。
「いじめてたこと、ホントにごめん」
「大丈夫だよ」
加藤に何度も謝った。
許してもらえるとは思ってなかったけど、
私の本心を伝えたかった。
加藤がなぜか笑っている。
「なんで笑ってんの?」
なぜか笑っている加藤。
嘲笑ではない、愛のある笑い。
私もつられて笑う。
「もう無視しないでよ?」
「わかった」
久しぶりに加藤と会話できて嬉しかった。
前とは違う対等な関係になれた気がした。




