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40 秋の肝試し


始まりはこの一言だった。



「ねぇ!お化け屋敷デートしよ!」


「お化け屋敷デート?なにその怖いデートは」



 夜、家で橘と電話している。

明日のデートの行き先を考えていた。



「お化け屋敷ができたんだって!昨日テレビでやってたの!」



どうやら橘と付き合う前にデートした終点駅の近くにお化け屋敷ができたらしい。



「嫌だって!怖いじゃん!」


「大丈夫だって!男の子でしょ!?決定ね!」



 結局橘に押し切られてデートはお化け屋敷に決定した。

これが後に恐ろしい恐怖体験になるとは思ってもいなかった。





 翌日、お昼過ぎに終点駅で待ち合わせすることに。

俺は先に待ち合わせ場所に到着した。

もう11月に入ってパーカーやジャケットを着ている人も増えてきたな。

俺は黒のスキニーに白のパーカーという、

なんともシンプルなファッション。

でも動きやすいし、カチッともしてなくて気楽で一番いい。



だが、今日この服にしたのには理由がある。



「お待たせ!じゃーん!」



 現れた橘も黒のスキニーに白のパーカーを着ている。

そう、ペアルックだ。

橘は少し大きめのサイズのパーカーを着ている。

萌え袖で、ぶかぶか感が可愛い。

っていうか橘、足なっが!



「なんか実際こうして会うと恥ずかしいね」


「う、うん」



 昨日の夜に電話してる時に橘がペアルックしたいって熱烈にお願いしてきた。

昔から憧れてたらしい。

まあ、俺もちょっとはやってみたかったしOKした。



「じゃあ出発〜!」



 橘が俺の手を繋いで歩き出す。

少し歩いてわかったが、

ペアルックしてると周りの人からジロジロみられる。

まあペアルック+こんな美少女と普通の男がペアルックしてるからだろうな。

そりゃそうだ、橘ぐらいの美少女ならもっとイケメンと付き合ってるだろうからな。

俺は背もそんなに高くないし顔も普通だしな。

・・・言うなら美女と野獣?

俺は野獣でもないか。




 そんなことを考えるとお化け屋敷の近くまできた。

お化け屋敷は駅近くのメインストリートから少し外れたところにある。



「あっ見えてきた!」



 お化け屋敷の前には大きな看板が立ててあり、

日本最恐のお化け屋敷!と、禍々しいフォントで見た人を怖がらせている。

すでにお化け屋敷の前には長い行列ができている。



「やっぱりテレビで紹介されたから人気なんだね!」


「みんなお化け屋敷とか興味あるんだな〜」



 中からはキャー!という声が時々聞こえる。

・・・なんか入るの嫌になってきた。

でも今更帰るなんて言えないしな。

嫌な思いを抱えながら並び始める。


 お化け屋敷の入り口の横に出口があり、

定期的に出口から叫び声とともに人が飛び出してくる。

ガタイがよくてクールそうな男性も大きな叫び声をあげて出口から飛び出してくる。

そんなに怖いのだろうか・・・



ついに俺たちの番が来た。



「いってらっしゃいませ!」



 係員さんのその掛け声とともに禍々しいドアを開けて中へ入っていく。

このお化け屋敷は呪われている屋敷というコンセプトらしい。

あー、やばいかも。

思った以上に中は暗くて、天井に付いている明かりもチカチカ付いたり消えたりしている。



「や、やばいね」


「う、うん、やばいね」



 怖すぎて語彙力がどこかへ飛んで行った。

橘がギューッ、と俺の腕を抱きしめてくる。



「痛いって、折れる折れる!」


「だ、だって怖いから!」



 壁に貼ってある矢印に沿って進んでいく。

入り口から長い廊下を歩いている。

先が暗くて見えなくて恐怖心を煽る。



「ね、ねぇ、奥になんかいない?」



橘が俺の腕にびったり抱きつきながら言う。



「や、やめろって、見間違いだって」



 俺が言い終わると同時に、

奥から謎の音が聞こえてくる。

キシッ、キシッ、と床が軋む音が聞こえる。



「やっぱりいるって!」



 その音は大きくなり、

突然、ドンドンドンドン!とこちらへ向かってきた。

奥から前から血だらけの女が走ってくる。



「キャァァァァァァァ!」


「ウギャァァァァァァ!」



2人で叫んで走る。



 たまにこういうお化け屋敷で俺、全然怖くないですよとかいう余裕かましてる男がいるが、

めちゃくちゃかっこ悪いぞ。

お化け屋敷は全力で怖がらないとな。



廊下の奥まで来る。



「な、なんなの!今の!」


「おい、このお化け屋敷やばいぞ!」



 その後も、押入れから飛び出してきたり、障子から手がたくさん出るなど、

怖がらせる要素がいっぱいだった。

その度に俺と橘の叫び声が響いていた。


 入り口から随分歩いたが、

全然出口にたどり着かない。



「そろそろ出口じゃない?」


「うん、もう叫び疲れたわ」



 歩いていると、浴槽の前に来た。

どうやら風呂場のようだ。

・・・絶対出てくるわ。

浴槽の中から、わー!だろ?

明らかに何かいそうな感じがする。

でもここを通り過ぎないといけない。



「・・・橘、先に行って?」


「なんでよ!一馬くんが先に行ってよ!彼氏でしょ!」



 渋々先に行く。

ジリジリ、すり足で先に進む。

浴槽の前を通り過ぎる。

絶対出る、絶対出る!

・・・あれ?


 風呂場を通り過ぎてもなにも起きなかった。

なんだ、拍子抜けだな。

そう思っていると、



「グゥァァァァァァァァ!」



風呂場の反対側から出てきた。



「あああああああああ!」


「あああああああああ!そっちかぁぁぁぁぁ!」



 俺と橘の叫び声が響く。

橘を引っ張って走り去る。



「ゼェッ、ゼェッ、まさかあっちから出てくるとは」


「ほ、ほんとね、なんて狡猾なお化け屋敷なの!」


「お兄ちゃんたち、誰?」



 急に話しかけられて驚いて、2人同時に顔を上げる。

今まで驚かせられることはあっても話しかけられるのは初めてだった。

目の前には下が畳で障子で囲まれている和室があり、

その真ん中に小学校低学年ぐらいの小さな女の子がポツンと立っていた。

女の子はおかっぱで昔っぽい子供の服を着ていた。



「え、えっと、ただ通りかかっただけだよ?ご、ごめんね!すぐにどっか行くから!」



 お化けの役者さんだってわかってるのになんでこんなに怖いんだろう。

そう言って歩き出す。



「・・・行かないで?一緒に遊ぼ?」



和室に立っている女の子がじっとこっちを見つめている。



「ご、ごめんね!私たち行かないといけないから!」



 橘が俺を引っ張って進む。

二人とも自然と小走りになっている。



「今の子怖すぎでしょ!めっちゃリアルだったし!」


「ああ、マジでびびったわ。すげー凝ってるな、このお化け屋敷」



先に出口の光が見える。



「あっ!出口!」



 橘がそう言って俺を引っ張って走り出した時、

ウォォォォォ、と後ろからたくさんのお化けが追いかけてきた。



「いやあああああああ!」


「あああああああああ!」



 出口に向かって2人で走り出す。

二人で手を繋いで出口に飛び出る。

まるで入る前に見た光景だ。



「なんだよ、最後の!」


「あ〜怖かった!」


「どうでしたか?怖かったですか?」



係員さんがニヤニヤしながら話しかけてくる。

 


「いや〜、めっちゃ怖かったですよ!最後に追いかけてくるなんてずるいですよ!」



アハハッ、と係員さんが笑っている。



「特におかっぱの小さい女の子、あれめっちゃ怖かったです!」



橘がそう言うと係員さんが、不思議な顔をする。



「おかっぱの女の子?そんなのいなかったと思いますが・・・」



・・・え?



「いやいや、いましたよ。和室のとこですよ!」


「あの和室にお化け役の人はセットしてませんよ?それにそんな小さい子をずっと働かせるなんてダメですから」




・・・え?



「じゃ、じゃあ、あの女の子はなんなんですか?」


「見間違いじゃないですか?」



 係員さんが次のお客さんを入り口に案内する。

橘と顔を見合わせる。

血の気が引いているのがわかった。

早歩きで橘とお化け屋敷を後にする。



「お、おい橘、和室の小さい女の子、しっかり見たよな?」


「う、うん!あそぼ?って言ってたし」


「でも係員さんはそんなのいないって言ってたぞ!」


「・・・・」



 背筋が凍る。

二度とお化け屋敷なんていかないと2人で決めた。




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