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38 部活への来訪者 


 放課後、美術部で絵を描く。

うまく絵が描けない。

思ったように筆が進まない。

筆に心が現れているみたいだ。


 俺の前にいる蓮を見る。

スラスラと筆を動かしていて、

相変わらずキャンパスに個性的な絵を描いている。

最近は絵を描くのに真剣で、

毎日サボらずに部室に来ている。


 隣の橘を見る。

足を組んで顎に手をあてて綺麗な横顔で、うーん、と唸っている。

どんな絵を描くか悩んでるんだろう。

ふとこの前の国崎さんの言葉を思い出す。




「もし、橘さんにまだいじめられてたらどうする?」




 ・・・そんなことないってわかってるのに。

なんでこんなにモヤモヤするんだ。

なんで橘のことを信じられないんだろう。



「・・・どんな絵描くか悩んでるの?」



橘に問いかける。



「うん、なかなか思い浮かばなくてね。絵って難しいよね」



 ニコッと笑顔で返してくる。

ほら、この笑顔が俺には嘘だと思えない。



「そうだね〜、絵って難しいんだね〜」



俺の前に座っている蓮の横に長い金髪の女が座っている。



「・・・なんでお前もいるんだ?」


「え?別にいいじゃん」


「いや・・・いいんだけどさ」



 今日は梅澤が美術部に遊びに来た。

蓮の横に座って絵を眺めている。



「部長さんも遊びに来ていいよって言ってくれたし」



 マジか。

どんだけ緩いんだ、うちの美術部は。



「いつでも遊びに来ていいよー、いっそのこと入部しちゃう?」



部長が近づいてくる。



「え〜、いいんですか?」



 それを聞いて他の美術部のみんなが怯えている。

そりゃそうだ、橘はギャルだけど黒髪で清楚だからすぐに受け入れられたけど、

梅澤は金髪だしな。



「だ、大丈夫だよみんな!里奈は見た目は派手だけど優しいとこもあるから!」



 それに合わせて梅澤がニコッと作り笑いを部員たちに見せる。

なんてやつだ。

だが、まんまとその笑顔に騙され、

部員たちが梅澤に集まっていく。

チョロいな。

優しくされたらすぐに心を開いてしまう。



「き、綺麗な金髪だね!」


「ありがとー」


「橘さんたちとは仲いいの?」


「めっちゃ仲いいよー」



 もう梅澤の周りには部員達に囲まれて質問責めに合っている。

こんな金髪ギャルと話す機会なんてないもんな。



「部活は入ってないの?」


「うん、モデルやってるから忙しくて無理」


「えっ!モデルやってるの!?」



 マジで!?

梅澤ってモデルやってんの!?

俺も同じように驚いてしまう。



「た、橘は知ってたの?」


「もちろん知ってたよ?」



橘は知ってたのかよ。



「京子もやればいいのに〜」


「私はいいよ〜」



 モデルになれる前提で話してるのがすごいな。

なりたくてもなれないだろ普通。

でも橘もスカウトとかよくされるって言ってたしな。



「モデルってどんなことするの?」


「雑誌に載ったことある?」



梅澤がモデルをやってると聞いてさらに部員たちが質問責めにする。



「撮影とかだよー、雑誌ももちろん載ったことあるよ。この前もハロウィンの格好で撮影したし」


「すごーい!」



部室に歓声があがる。



「っていうか明日じゃん、ハロウィン!」



梅澤が思い出したように言う。



「そうじゃん!部長!なんかするんですよね?」



橘が部長に聞く。



「うん!今年は美術部でハロウィンパーティーだよ!よかったら梅澤さんも来る?」


「え!いいんですか!?」


「もちろん!遊びにおいで!みんな仮装する予定なんだけど梅澤さんはどうする?」



 そう、美術部でハロウィンパーティーをするから何か仮装を用意しとけって部員は言われてる。

俺ももちろん用意してる。

結構自信ある仮装だ。



「私も仮装します!家にコスプレめっちゃあるんで」



なんであるんだよ。



「じゃあ決まりね!じゃあ明日の放課後に部室に集合!」



部長が高らかと言い放つ。


今年のハロウィンは楽しくなりそうだ。


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