36 魅了
梅澤の綺麗な金髪がパレードの光で照らされている。
青や黄色などカラフルなパレードの色が梅澤の横顔に映っている。
顔が赤く染まっているように見えるのはパレードの光だろうか。
梅澤はパレードなんて見てなかった。
ただ、蓮のことを澄んだ目で見つめていた。
誰かを想ってる女の子はなんでこんなに綺麗なんだ。
でも梅澤が蓮に釘付けなのに気づいているのは俺だけだ。
俺も同じようなことを経験したからわかる。
こういう非日常は気持ちを大きくさせる。
いつもはバレないように心の内に隠している想いも、
自然と外に溢れ出てしまう。
そしてその想いを伝えてしまおうかとも考えてしまう。
ただ口に出せば、手を握れば、体を寄せればいいだけなのに、
そんな簡単なことがなぜかできない。
頭の中の悪い結果の想像がどうしても邪魔をする。
でも何かきっかけがあれば、些細なきっかけがあれば、
その邪魔を押しのけることができる。
俺はそれを知っている。
でも俺たちとは少し違うのかもしれない。
俺と橘は両思いだった。
それと比べて蓮に梅澤の想いは届いていないように感じた。
それは梅澤も気づいているんだろう。
その瞳に愛しさと哀しさが映っている。
また、俺と橘の場合は2人きりだった。
地元の人間しか知らない、花火が綺麗に見える場所。
それと違ってここは周りに人が大勢いる。
蓮と梅澤が2人きりならまた違ったかもしれない。
梅澤は蓮に見惚れていた。
その姿に付き合う前の俺と橘を重ね合わせてしまった。
ふと横の橘を見てみる。
無垢な笑顔でパレードに夢中だ。
「ねぇ橘」
俺の声に反応してこっちを向く。
「好きだよ」
「えっ?・・・私も好きだよ」
急にこんなこと言って困らせてしまったかな。
俺も目の前の非日常に気持ちが大きくなってしまったのかな。
橘の手を蓮と梅澤にバレないようにそっと握る。
2人は夢中で気づかないだろう。
橘も握り返してきた。
自然と恋人つなぎになる。
花火大会で初めて手を繋いだ時の胸が焼かれるようなドキドキを思い出す。
この瞬間を橘と共有したい。
握った手から俺の想いが伝わるだろう。
俺から告白したし、守るって決めたんだ。
途中で手放すなんてそんな無責任なことはできない。
橘はまだパレードに夢中だった。
綺麗な笑顔だ。
俺がこの笑顔を絶やさないようにしよう。
楽しい時間は短く、閉園時間が近づく。
名残惜しい気持ちを胸に出口へ向かう。
これが終われば普通の日常に戻るのか。
でもたまにこういう非日常を味わえるから、
普段の日常を頑張れるんだろうな。
「ちょっとトイレ行ってくるわ」
「あ、私も」
そう言って橘と蓮がトイレに向かう。
梅澤と2人きりになってしまった。
・・・せっかくだし話してみるか。
「今日、楽しかったな」
梅澤に話しかけてみる。
「・・・うん」
「今日一緒にいて思ったけど梅澤って見た目に反して案外優しいんだな」
いじめられてた俺が言うのもおかしいが、本当にそう思った。
「なにそれ?私のこと口説いてんの?」
「違うわ」
今日でこうやって冗談を言える関係になれた。
「・・・私のこと本当はどう思ってんの?」
本当はどう思ってる・・・
「別に・・・友達だと思ってるよ」
梅澤がこっちを向いて驚いた顔をする。
それからすぐに笑い始めた。
「ははっ、加藤、マジでおかしいよ。私はお前をいじめてたんだよ?それでも友達だって言うの?」
「もちろん。今日で梅澤のことなんとなくわかったから」
「ふんっ、今日だけで私の何がわかったのよ。
・・・まあそうだね、私でよければこれからも仲良くしてよ。いじめのことは本当に悪かったって思ってるから」
「ああ、これからもよろしくな」
今日でわかった。
梅澤だって他と変わらない普通の女の子だってことを。
ならきっと仲良くなれるはず。
俺はそう感じた。
「今日で気になったことがあるんだけど、聞いてもいい?」
「なに?」
「梅澤って蓮のこと好きだろ」
「はぁ!?」
梅澤が飛び跳ねたように驚く。
一気に顔が紅潮するのがわかった。
「べ、別に好きじゃないから!勘違いすんな!」
わかりやすいな。
本当に好きじゃないやつはそんな反応しないぞ。
「お前ら仲よさそうじゃん、なんの話ししてたんだ?」
蓮が戻ってきた。
「な、なんも話してねーよ!」
梅澤がビクッ!として振り向いて言い返す。
「なになに?里奈、一馬くんと話してたの?」
橘も戻ってきた。
「は、話してないって!京子も戻ってきたし早く帰るぞ!」
梅澤がそう言って一人でずんずん出口に進んでいく。
そんな梅澤の姿を見て3人で顔を合わせて笑う。
この4人なら仲良く出来そうだ。
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