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5 雪解け

 夜中、俺は真っ暗な自分の部屋のベッドの上で今日の出来事を思い出していた。

破られた絵、あいつらの笑い声、橘の悲しそうな顔。

勘違いだった。いくら優しくされても橘は俺をいじめている一人だ。

橘はあいつらと何か違うと思ったが結局同じだった。

優しくしたり好意があるフリをして俺で遊んでいたんだろう。


 自然とため息が漏れる。

自分の部屋がいつもよりも暗く、広く感じる。


「お前ら狂ってるよ」


 あの時梅澤に思わず反抗してしまった。

次会ったら何されるか分からない。

でももう決めた。

あいつらとは関わらないようにすると。





 あの日から俺は露骨に橘を避けるようにした。

隣の席の橘に話しかけられても全て無視した。

橘は話しかけたそうにしていたがそんなのどうでもよかった。

休み時間や昼休みはできるだけ教室にいないようにした。

放課後、いつもあいつらに呼ばれていた体育倉庫にも行かなくなった。

最後の授業終了のチャイムが鳴れば逃げるように美術部の部室に向かった。




そんな生活が1週間は続いた。




 いつものようにチャイムがなると放課後すぐに美術部に駆け込み、絵の準備をしていた。

すると突然、教室のドアが勢いよく開いた。

びっくりして振り返ると、橘だった。


 こっちをジーッと見つめてくる。

まずい、無視しすぎてとうとうブチギレたか!?

ジリジリと橘が近づいてくる。

思わず後ずさりしてしまう。

橘が俺の正面まで迫り、口を開く。


「ちょっと話があるんだけど」


 あー殺される。

人目に付かないところに連れてかれてボコボコにされるんだ。

そう思ったが、俺はもう関わらないと決めたことを思い出した。


「・・・忙しいから無理・・・です」


「はぁ!?どうみても暇でしょ!?」


「いや・・・忙しくて・・・」


「嘘つけ!」


 そんな押し問答を続けていると、部室に部員たちが集まってきた。

美術部に変な噂が立つとまずいと思い、話を聞くことにした。

「わ、わかったから場所を変えよう」



 俺と橘は屋上に移動した。

屋上は俺たち2人以外誰もいなかった。

グラウンドでは野球部やサッカー部が練習しており、吹奏楽部の演奏が響いていた。


「話って・・・なに?」


「私のこと避けてるでしょ」


橘が問い詰めるように俺を見つめる。


「・・・うん」


橘があの日と同じように悲しそうな顔をした。


おもむろに橘が鞄から何か取り出そうとしている。


「これ・・・」


 鞄から出したのは、あの日、橘が破った絵だった。

橘が半分に破き、それを梅澤がもっと細かく破いたあの絵。

ところどころ欠けてはいるが、テープで貼って元の形になっている。


「それ・・・」


橘が申し訳無さそうに絵を手渡す。


「ごめん・・・ボロボロだけど。他の絵は全部里奈が捨てちゃって・・・」


「あの時はホントにごめん」


橘が頭を下げる。


「みんなが見てたからやるしかなくて・・・」


絵が戻ってきたことよりも橘の本当の気持ちを知れたことの方が嬉しかった。


「全然いいよ、それよりこの絵一人で集めて繋ぎ直したの?」


「うん・・・」


 絵のつぎはぎから想いが伝わってくる。

俺の中の橘への想いが急上昇するのがわかった。


「その絵・・・私だよね?」


 黒髪ロングに切れ長な目、耳にイヤリング。

橘をモチーフに描いた人物画。

あの時は嘘をついたが、今回は違った。


「うん」


「なんで私を描いたの?」


橘が見惚れるほど綺麗だったから描いたとは言えなかった。


「いや・・・」


戸惑ってしまい、慌てて話題を変える。


「橘も最初は俺をいじめてたのになんで急に優しくなったの?」


「えっと・・・」


橘も俺と同じように戸惑っていた。


「いじめてたこと、ホントにごめん」


「大丈夫だよ」


何度も謝る橘の姿を見て、いつもの強気な橘とのギャップから笑ってしまう。


「なんで笑ってんの?」


 俺の笑いにつられて橘も笑顔になる。

雰囲気が一気に変わった。

二人の笑い声が誰もいない屋上に響く。


「もう無視しないでよ?」


「わかった」


 二人とも照れが混じったぎこちない笑顔。

二人っきりの屋上で、橘との距離がグッと縮まった気がした。



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