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絶望の賢者とタイタンの幼女  作者: 椿四十郎
『脅威と言う名の少女』
22/111

22 〜試練の洞窟〜

──────前回までのあらすじ─────


冒険者志願のユリウス、メナス、フィオナたち一行は、ギルドの試験官ルシオラと共にいよいよ最終試験現場となる『試練の洞窟』に到着した。


──────────

※主人公ユリウスは、故あって偽名シンを名乗っております。 地の文がユリウス、会話がシンなどという状況が頻繁に現れます。 混乱させて恐縮ですが【ユリウス=(イコール)シン】という事でよろしくお願いします。


 そこは一見、行商人のコーレに教わった湧水泉とよく似た林だった。


 やはり岩山から染み出した湧水をたたえた泉があり、その周りを大きな葉の植物が覆っていた。 眼鏡の美人試験官が言うには、その奥に【洞窟(ダンジョン)】の入り口があるのだと言う。


挿絵(By みてみん)


「わぁ〜 これなら帰りに水浴びとか出来るね〜♪」


 全く懲りてないのか、フィオナが上機嫌ではしゃいでいる。 などと思っていたら──


「一応その目的もあって、ギルドが管理している泉でもあるのよ」


 ──と、意外な返答が帰ってきた。


「この周りに生えてる大きな葉の植物はハスイモの一種なんだけどね、水の浄化のためにギルドが植えているの」

「へぇ〜 そうなんですか〜」

「お陰でイモ自体は食べない方がいいけどね」


 そのまま泉の脇を抜けて広葉樹の林を奥に進むと、岩山の麓に高さ4m、幅3mほどの横穴の入り口が現れた。


「それではこれより実技試験を開始します。【洞窟】に入る前に注意点をお伝えしますね」

「は〜い、お願いしま〜す」


「先ず洞窟内では、試験官である私は最後尾につき必要最小限の会話しか参加しません」

「ふむふむ」

「しかし命に関わると判断した場合は、呪文でサポートしたり、アドバイスをしたり積極的に介入するよう取り決められています」

「そぉなんだ〜」

「みすみす若い命を失わせるコトが目的ではありませんからね」


「ですので質問にはなるべく答えますが、あまり多いと冒険者としての適正に疑問が持たれる可能性がありますのでそのつもりで」

「まぁ、妥当だな」


「次にこの【洞窟】についての説明をします。 実際のクエストでもなるべく事前調査で予備知識を集めるコトが重要な攻略法となりますので」

「なるほど〜」


「この【洞窟】は、遥か昔の放棄された炭鉱が長い時間をかけて魔物の巣窟と化した物だと言われています」

「しかし王都から近く比較的狭いというコトもあり、すでに未知の領域や危険な魔物は駆逐され尽くしたとされています」

「それで実技試験用の【洞窟】になったんだね〜」

「そう言うコトです」


「街や街道に近いコトもあり、かつては山賊が根城にしていた時代もあったようで、その時の罠なども存在しますが、致命的なモノは全てギルドの方で作動を停止してあります」

「へぇ〜 長い歴史があるんだ。 あれ? でも作動を停止していない罠もあるってコト?」

「ご想像にお任せしますわ」


「中は基本的に縦長の一本道で多少の脇道がいくつか分岐しています。 奥までたどり着く前に何箇所か下へ降りる縦穴があり、同じような規模の【第二層】に繋がっています」

「2階建てなんだね」

「中にいるのは基本巨大な昆虫類やコウモリ、野犬、狼と言った小・中動物の類です」

「うへぇ〜 おっきな虫がいるのかぁ〜」


 フィオナが露骨に嫌な顔をする。 まぁ無理もないだろう。


「昆虫類は生理的嫌悪感を差し引けばそれほど脅威ではありません。 もちろん中にはとても危険な虫もいますが、ここにいるのは腐肉喰らい(スカベンジャー)やムカデ、大ミミズなどの類です」

「とくに甲虫類は剣や刺突武器にはそこそこ耐性があります。 火や冷気に弱いですが光に集まる習性から松明の炎などには寄ってきますのでご注意を」

「そうそう、窓辺のランプとかに蛾が突っ込んできて勝手に死んだりするよね? あれなんでだろ?」


 それを今説明したんだが…… ユリウスが心の中でツッコミを入れる。


「あとひとつだけ── 実はこの【洞窟】には【アシッド・スライム】がごく稀に出現するコトが確認されています」

「スライム!」

「ご存知の通りスライムは厄介なモンスターです。 強酸性の粘液は冒険者の装備を溶かし、獲物の身体を溶かして捕食します」

「それは出会いたくないなぁ」

「スライムに遭遇した場合は、この【巻物(スクロール)】を唱える事が許可されています」


 そう言いながら、ルシオラは腰のポーチから一本の【巻物】を取り出した。


「この【巻物】には【強酸耐性(レジスト・アシッド)】の呪文が封じられています」


【巻物】とは呪文が封じ込まれた魔法のアイテムである。 使用すると誰でもその呪文が唱えられるが、一度使うと消滅してしまう。


「へぇ〜 至れり尽くせりだね〜」

「でもこの呪文、身体には効きますが装備しているモノには効果が出ないんです」

「あらら〜」

「ですので、スライムに遭遇した際は撤退を含め慎重な判断をお願いいたします」


「それでは最後にひとつだけ…… この試験に達成目標はありません。 自由に行動してみなさんの可能性を感じさせて下さい。 それでは出発しましょう!」

「はぁ〜い!」


(どうだ、メナス?)


ユリウスが【念話(テレパシー)】で問いかける。


(いますね。 ヤツら、いま泉の茂みに隠れてこちらの様子を伺っています。 それと待ち伏せかな?【洞窟】の中にも一人いるみたいです)

(そうか。 挟み討ちにする気かな?)

(マスター、念のため確認なんですが)

(分かってる、なるべく殺すな。 奴らには法の裁きを受けさせるべきだ。 彼女たち(・・)のためにも)

(それじゃあ、この試験でも?)

(あぁ、あの判定結果ででた数値を上回らないよう出力にリミッターをかけろ。 出来るな?)

(もちろんカンタンですが)


 四人は【洞窟】の入り口に立った。 ひんやりとした冷気を感じる。 それにカビ臭い匂いと湿気。 獣臭や死臭の類は今のところ感じない。


 まず先頭に盗賊(シーフ)のユリウスが立って中の様子を伺う。


「本当は有毒ガスとかを警戒すべきなんですよね?」

「もう数百年そう言った報告はないですから、今回はいいでしょう」


 ルシオラが答えた。

洞窟内に明かりは無い。 炭鉱時代の数百年前の燭台があるようだが、そんな物はとっくに機能していない。 こんな時は松明かランタンか悩むところだが、どうせ昆虫を引き寄せるなら落としてもいい松明にするか。


 ユリウスは昨日市場で仕入れた松明に火を点けると、それを左手に掲げる。


「あ〜 緊張してきた〜」

「ここから先は、必要最低限の会話しかしないコト」

「りょ〜かい」

「同じく」


最後尾のルシオラも黙って頷いた。


 ユリウスを先頭に三人とひとりは、冒険者として最初の【洞窟】に、記念すべき第一歩を踏み入れた。


いよいよ冒険者になるための最終試験現場『試練の洞窟』に足を踏み入れた一行。 彼らを待ち受けるものとは……


あらすじと予告が間違い探しレベル…⁈


今回『INKARNATE』で簡単にですが周辺地図を作ってみました。 だいたいの参考までに。


─────次回予告─────


第23話 〜闇を這い寄るもの〜


 乞う御期待!

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