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絶望の賢者とタイタンの幼女  作者: 椿四十郎
『脅威と言う名の少女』
18/111

18 〜装備を揃えよう!~

──────前回までのあらすじ─────


冒険者を夢見る元賢者のユリウスと、人間の幼女にしか見えないチタニウム・ゴーレムのメナス、道中知り合った冒険者志願の家出娘フィオナの一行。 冒険者ギルドで適性検査を受けそれぞれの職業の研修を受けた三人は、いよいよ最終実技試験へと向け装備を整えるべく買い物に繰り出す……


相変わらず、あらすじがほとんど進まない…⁈


──────────

※主人公ユリウスは、故あって偽名シンを名乗っております。 地の文がユリウス、会話がシンなどという状況が頻繁に現れます。 混乱させて恐縮ですが【ユリウス=(イコール)シン】という事でよろしくお願いします。


 三日間の職業研修が終わり四日目の朝。 

明日はいよいよ実技試験の日だ。

 今日は一日めいいっぱい使って明日の準備の買い物をする事にした。


「なんかデートみたいだね♪」


 フィオナは相変わらず陽気で前向きだ。 その姿はユリウスには眩しくすらあった。


「ひょっとして、ボクがいない方がいいのかな?」


 メナスがいつもの調子で冗談を言う。


「そんなのいいから! 今日は大事な買い物なんだぞ」

「はいはいわかってますって」


 三人は先ず、ギルドで紹介された防具屋に向かう事にした。

 武器か防具、限られた資金でどちらを優先させるかは熟練の冒険者たちの間でも未だに議論の分かれるところだ。 今回はユリウスもフィオナも幸い剣はあったし、僧兵(モンク)のメナスはグローブ程度で事足りる筈だった。


 驚いた事に防具屋の店主はドワーフだった。

 ブライと言う名の初老の男性で、身長はメナス程しかないのに身体は樽のようにずんぐりむっくりで腕はメナスの胴体より太く白い髭を胸元まで伸ばしていた。


 ヴェルトラウム大陸は基本的に人間の支配圏である。 エルフやドワーフなどのいわゆる亜人はほとんどその姿を見ない。 かつては隆盛を極めていた両種族も長い年月をかけて流入してきた人間たちに次第に勢力圏を押しやられた。 エルフは北方と南方の森林部に、ドワーフはザントシュタイン山脈の何処かに僅かに集落が残っているのみとされているが、正確な数や位置までは知られていなかった。


 普通街中で亜人を見る事はまずないが、彼もまた若い頃は、冒険者ギルドに所属する冒険者だったのだと言う。 彼は優れた鍛治の技術ゆえ、差別を受ける事なく重用されているらしい。 本人(いわ)く、ドワーフの中でも自分は変わり者なのだと言う。


 一瞬フィオナですらも身構えたが、いかつい見た目に反して店主はとても愛想が良かった。


「なに? 新人冒険者の実技試験だって? それならムリに金をかけるこたぁねぇ! 必要最低限はギルドが貸してくれんだろ?」

「それよりたっぷり金をかけて試験に落ちて後悔した阿保(あほう)を、ワシは何人も知っとるからなぁ…… ガハハハハ!」


 どこかギルドマスターを彷彿(ほうふつ)とさせる、豪快な笑い方の男だ。


 取り敢えず三人は、基本となる革の服を見繕ってもらう事にした。 ユリウスは革の鎧(レザーアーマー)にするか迷ったが、敏速性を重視して革の服に革の胸当て(レザー・ブレスト)革手袋(レザー・グローブ)だけ用意してもらった。


 フィオナは少々問題だった。

もともと女性用の装備が少ないと言うこともあるが、背が低く胸の豊かな彼女に合うモノが、革の服も革の鎧も革の胸当ても見つからないのだ。 結局服は大きめの半袖の革のシャツにズボンの裾を少しを詰めてもらい、革の胸当ては明日の朝までにしつらえてもらう事になった。


「晴れて試験に合格したら、そのでっかい乳の入る金属製の胸当て(ブレストプレート)やら籠手(ガントレット)やらを追加していけばいいさね」


そう言ってまた店主は豪快に笑った。


 フィオナは可愛く舌を出したが、決して機嫌を損ねているようではなかった。


「それにしても珍しいねぇ…… 最初から(サムライ)を選べる新人も珍しいし、女の侍も珍しいやな」

「うん、そうみたいね。 それでかな? わたしお師匠さんに、これもらっちゃった」


 フィオナは店主に、もらった腰の(カタナ)を指して見せた。


「何? その刀を? 見せてもらっていいか?」

「別にいいけど〜」


 初老のドワーフはその刀をうやうやしく受け取ると、ゆっくり鞘から刀身を抜き、真剣な表情で細部を観察した。 そのまま目をそらさずフィオナに尋ねる。


「侍の師匠ってコトは…… ダン……か?」

「うん、確かそんな名前。 ダン・アウゲンなんたらとかなんとか……」

「ダン・アウゲンブリック」

「そうそれ!」

「お前さんよっぽどヤツに気に入られたな。 乳の一つでも揉ませたか?」

「えぇ〜 なによそれぇ〜⁈」

「ワシは専門じゃないがそれでも分かる。 これは相当なワザモノじゃぞ? どこの馬の骨とも分からんような冒険者見習いにくれてやるようなシロモノじゃない」

「そ、そうなんだ……」


「どうもお前さんは人たらし(・・・・)の素質があるようじゃな」

「ま、かく言うワシも、もうお前さんが気に入り出しておるしな」


 そう、冗談めかして言いながら初老のドワーフは片目を瞑って見せた。 彼女はついでに、左上腕に取り付ける【小型盾(バックラー)】をサービスしてもらった。


 最後はメナスだが、これは困った事に完全に合う物がなかった。 着るものに関しては仕方なく子供服の店を紹介してもらった。 グローブだけは、店主が大人用の金属製の籠手に子供用の厚手の手袋を仕込んでメナスの手に合うようにしてくれる事になった。 これも明日の朝までにやってくれると言う。


「どうせ殴るんなら、革手袋よりも金属製の籠手でハンマーみたいにボコった方が効率がいいからな」


 物騒な事を実に楽しそうに言う店主だ。


 それから最後に、ブーツだけは三人とも良い物を揃える事にした。 もし冒険者になれなくても、良い靴はあって困らないと言う安易な考えで。


「そうさなぁ…… 革の服2着に裾の詰め代はオマケして大銀貨4枚、革の胸当ても2枚に1枚分の加工費込みで大銀貨9枚。 小型盾はサービスで、あとは革手袋2組に籠手がひとつ、その加工費込みで大銀貨8枚と…… 革の冒険者用ブーツが三足で大銀貨12枚。 しめて大銀貨33枚。 小金貨ならオマケしてちょうど8枚にしてやる!」


 ちなみに大銀貨4枚で、小金貨1枚分の価値となる。 小金貨8枚は大銀貨32枚分だ。 この値段、どうなの? と言う顔でフィオナが見つめてくる。


「これでも結構オマケしてるんだがな」


 店主の言葉に嘘はないように思えた。 ユリウスは革の小袋から小金貨を8枚出して店主に手渡した。


「毎度あり! 胸当てと籠手は明日の朝までには仕上げておくからな! 試験に合格してお得意さんになってくれるコトを祈ってるぜ! ガハハハハ!」


 三人は陽気なドワーフの店主に礼を言って店を後にした。


「またユリウスへの借金が〜」


 いつも明るいフィオナが流石に少し青ざめている。


「それにしてもフィオナ、ボクたちに会わなかったらどうするつもりだったの?」

「いやぁ〜 お金がかかるとは思ってたけど正直ここまでとは…… 住み込みの仕事でも見つけようかと思ってたけど、そしたら冒険者どころじゃなくなっちゃうかなぁ〜」


 まぁ村から一歩も出た事のない田舎娘の想像力だ。 責める事は出来まい。


「冒険者としての収入が入るようになったら少しずつ返してくれたらいいよ」


 その後は市場の屋台で軽く昼食を取ってから、生活必需品や保存食、冒険に必要な道具なんかを揃えていった。


 フィオナは物珍しい露店なども時間があればゆっくり見て回りたかったようだが、今日は早めに帰ってよく眠る事にした。


「あっ見て! 羊肉の串焼き!」


 宿へ帰る道で、また羊肉の串焼きの屋台を見つけた。


「ここはわたしに出させて!」


 そう言うとフィオナは返事も聞かずに駆け出していった。


「ほんとに楽しい娘だよねぇ」


 メナスが年寄りみたいな表情で目を細める。

(お前はいったい何様目線なんだ……) ユリウスは心の中でツッコミを入れた。


 フィオナが満面の笑みで串焼きを持って帰ってきた。 ユリウスとメナスに一本ずつ渡す。


「いただきまぁ〜す」


三人並んで熱々の串焼きにかぶりつく。


「おいひぃ〜」

「うまいな。 焼きたてだ」

「うん、おいしい」


「ねっ言った通りでしょ?」


フィオナがしたり顔で聞いてくる。


「何がだ?」

「一緒に来たから、焼きたてが美味しいんですよ?」


 フィオナは大輪のヒマワリのような笑みを見せた。


「あぁ、そうだな……」


 明日はいよいよ最終実技試験だ。


三日間の職業研修も終わり、装備の準備も整った。 明日はいよいよ冒険者になるための最終実技試験だ…


やばい、予告の内容がまた大して進んでない…!


─────次回予告─────


第19話 〜冒険者実技試験~


 乞う御期待!

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