リカちゃんのリス
リカちゃんのリスは赤い。どうしてかというと、リカちゃんの赤い血から生まれたから。
月がとてもきれいな夜に、リカちゃんは錆ついて汚いカッターナイフで勢いよく、白くてやわらかい自分の手首に傷をつけた。深く深く、傷をつけた。
傷から、とろとろと血があふれた。
深い赤色。
勉強机の上に、あたたかい血だまりができた。
それはどろどろとしたまま丸まって、泥だんごのようになり、手足が生え、尻尾が生え、頭が生えて、リスの形になった。
大きな尻尾。くりりとした目。毛並みもツヤツヤとして可愛らしい。
ただし、一面、深い赤色。
リスはリカちゃんの悲しみから生まれた。リカちゃんが泣くと、つぶれそうなほどリスの胸が痛んだ。
リスはリカちゃんを悲しませた人間を決して許さなかった。
リカちゃんを悲しませた人間はみな不幸になった。
リスに頭をかじられたからだ。頭にポッカリと穴が空いて、バカになった。言葉も忘れた。感情のままにギャンギャンと吠えるようになった。人の姿をした獣になった。家族や友人にはどうすることもできなくなって、ある人は精神病院に送られ、ある人は見捨てられて独りぼっちになった。
あるとき、リカちゃんをいじめた昔の同級生が古びた公園の片隅に、ごみのように寝転がっていた。目は落ちくぼんで、頬も痩せこけていた。あちこち臭くて、周りをハエが何匹も飛んでいた。リカちゃんは惨めになった同級生を見下ろして少し笑った。
リスはリカちゃんのために次々と、人間の頭をかじった。リカちゃんは自分を悲しませた人間の末路を知ると、とても喜んだ。だから、リスはどんどん人間を不幸にした。
それなのに、リカちゃんの悲しみは止まらなかった。リカちゃんは毎晩、自分の手首に傷をつけた。毎晩、血が流れた。リスの胸もまた痛んだ。
ある朝、リカちゃんが倒れた。病院に運ばれて、腕に血の管が通された。傷だらけの手首にはきれいな包帯が巻かれていた。
リカちゃんは青白い顔のまま目を閉じている。リスはリカちゃんのそばでうずくまっていた。
この瞬間も、リスの胸はズキズキと痛んでいた。リスの心臓は鐘のようだった。頭の中まで響いた。その振動が痛みとなってリスを苦しめた。生まれた時からずっと。だから、最初はリカちゃんのことが嫌いだった。でも、リカちゃんを傷つけることはできなかった。同時に愛おしさを感じていたからだ。それは理屈ではなく、本能的なもの。リスはリカちゃんを愛さずにはいられなかった。
リカちゃんの悲しみがリスを生かしていた。けれど、リスはリカちゃんのことをかわいそうだと思った。助けてあげたかった。だけど、リスにはどうしようもできないことだった。リスは人を不幸にすることしかできなかった。
だけど、もし、奇跡が起きて、リカちゃんが幸せになる日が来るとしたら。リスは痛む胸を抱えながら、そんな未来について想像した。それは、たぶん、自分が消滅する日だ。そのことを怖いとは少しも思わない。その日はきっと、何もかもが救われる日だと思った。
リカちゃんが目を覚ましたのは真夜中のことだった。世界のすべてが死んでしまったのかと思った。辺りは寝静まっていた。
リカちゃんは白いシーツの上の、小さな自分の相棒を見下ろした。血の色をした可愛らしい彼女のペットはまっすぐにリカちゃんを見上げていた。
「いつか、死ねたらいいね」
リカちゃんは優しい顔で、そうささやいた。
こんなに未熟な文章を最後まで読んでくださるなんて、集中力が凄まじいですね。あなたは偉大だ。今日も生きていてくれてありがとう。