活動記録 ① 「アフタースクール・ゴーストバスターズ!」
(初回は例外)一人称新作です。
実はこの作品、一年半前にボツになって消してしまった作品なんです。
なんですが、今もう一つ執筆している作品が色々な意味でドロドロしていて、サッパリしたのを書きたいな! と思い立ち、復活することになりました。
更新頻度は、まぁ、察してください……
「……もう、かくれんぼは終わりにしましょう?」
午後11時を過ぎた夜の学校で、一人の女が廊下の向こうの闇に、静かに、語りかける。
「…………」
だが、返事は無い。
ぴりり、ぴりりと外の草むらから寂しく2匹の名前の分からない虫の声が響くのみ。
女は、幼い頃から気配を感じ取る訓練をさせられている。
だから、まだそこに気配があることは分かっていた。
もう一度、その闇に向かって女が言う。
「もう、いいでしょう?」
「…………!」
廊下の向こうの闇で一瞬、気配が動いたのを女は見逃さず、影から飛び出して闇に向かって走る。
--女が、廊下に横から差す月の光に照らされた。
光を吸い取る黒く長い髪に、雪のように白く透き通る肌。
右手には、傷だらけの木刀。
女は気配がある教室に飛び込み、再び静かに闇に向かって話しかける。
「楽しかった? この時代は」
女は背中にすぅっと心地良いものではない寒気を感じた。
足音すら無いが、近くにいると確信し、ゆっくりと椅子の一つをひいて座った。
それに向かい合わせになるように、椅子が動いた。
「……楽しくなかったと言えば嘘になるかなぁ」
誰も座っていないはずの女の目の前の椅子から無邪気な子供の声が響く。
「僕の時代は、戦いばっかりで何も楽しい事なんて無かったよ」
「そうなのね……」
「母さんも妹も死んじゃったし、僕だけここにいても変だよね……僕、迷惑だった?」
「そんなことない。あなたは私の友達よ」
素っ気ない彼女の言い方だったが、目の前の子供には真意は伝わっている。
「ありがとう」
女は右手の蛍光色ピンクの腕時計を一瞥して、呟くように言った。
「……そろそろ時間よ」
えっ、と目の前の椅子から声が漏れた。
「わ、分かったよ……僕は……ここから消えたらどうなるの?」
何かを完全に諦めたその声は、不安や恐怖が混じっていた。
女は締め付けられる胸の痛みを堪えて、怯える動物を宥めるように優しく答える。
「……分からない。けど、あなたがこれから行く場所には、あなたの大切な人達が待っているわよ。絶対に」
女は目の前の相手を安心させようと、頬の肉を吊り上げ、無理やり作り笑いを見せた。
笑いたくなかったのではない。笑うのが苦手だった。
「……そうかな……そうだよね。おっ母達を待たせたくないし……行くよ、僕」
「分かった……最後まで、側にいるからね」
木刀を持った女は立ち上がり、木刀を静かに机に置いた。
目を瞑ると、目尻に涙が溜まっていることに気が付き、指で拭った。
「迷惑かけてごめんなさい。短い間だったけど、楽しい未来をありが……と……う……」
一瞬で子供の声は煙のように闇の中に溶けていった。
前の椅子の気配が完全に消え、その教室には外で鳴く3匹の名前の分からない虫の声が、どこか嬉しそうに響いていた。
--これが、彼女らの部活「お祓い部」の活動。