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御主人メイカー

「やっと見つけましたよ! これです、これこそが魔導人形(マドール)ジェネレータ!」


 カリンは嬉しさのあまり飛び上がって喜んだ。

扉を開け、そして閉める、そうやっていくつの部屋を周わっただろうか。彼女はもはや覚えていなかった。


「探し出すのに予想以上に時間がかかりましたが、もーそんなこと関係ありません! さぁやっちゃいますよー」


 目の前にある大型のディスプレイ、知識の無い者であれば何が写し出されているのか理解出来なかっただろうが、彼女は違った。

 そう、カリンは紛れもなく古代兵器(アーキファクト)。そして、なによりこの機械は彼女と同じ時代に作られたものそのものだったのだ。


 近代、機械技術は彼女の作られた時代から一切引き継がれてはいない。それどころか、継承されない技術は、再現不可の超技術としてこの時代に残されてしまっていた。

 当然、この機械も、極一部の人属以外にとってはその超技術の一旦である。そう、極一部の人属以外にとっては……


「ふふん、この位なら楽勝ですね♪ あら? へぇ、こんなところも弄れるのですね……」


 カリンにとって予想外だったのは、その機械がとてつもなく高機能な製造機だということだ。

 この機械を使えば、簡単に肉体を製造することが出来るだろうとカリンは考えていた。しかし、この機械、設定可能な箇所がめちゃくちゃ多かったのだ。


「性別、瞳の色、髪の色、肌の色、髪型、身長……え!? そんな所の長さまで指定していいのー!?」


 カリンの顔がみるみる赤く染まり、頭からプシューと音をたてて排熱する。そして、非常に真剣な顔付きで、画面を見つめ直す。


「うぅー。これは、悩みますね~」


 はたしてどうしたものか?とカリンは自分でも気がつかない内にそれに夢中になって考えた。

 なにしろ、今まで素材の容姿には一切こだわることなく器集めに没頭していたのだから。突然その容姿を決めろと言われても、心構えが出来ていない。しかも、この自由度の高さ。これは、基準を決めていない彼女にとってなによりも難題だった。


「この髪型にはこの目が似合いますね……ちがうこうじゃありません。もっと御主人様ならこう目元がキリッとしてて……」


 何百種類というパーツを合わせては変更し、思い出に似せていく。ただ、問題なのは写真を持ってこなかった事。そう、彼女の思い出の中で美化された虚像は、歪んだ形で画面へと出力されていくことになるわけで。

 そんな状態だから何時までたってもプレビューを見て、なんかちがうな、というループから抜け出せないのだ。


「うーん、カリン、困っちゃいました。何回やっても思い通りの姿になりません……どうすれば……」


 どのくらいの時間、悩み続けていただろうか。 そのせいでカリンは気が付かなかったが、壁の隙間から黒く捻れた木の根が生えてきている。

 その木の根はあっという間にみるみると成長し、壁や柱につたの様に絡みついていった。それによって、柱がメキメキと音をたて始めたところでようやくーー


「な……なによこれ? いったいどうなってるの? もしかして、これ部屋をーー壊しに来てる!? 何て事……って言ってる場合じゃありません! すぐに止めなきゃ!」


 カリンは慌てて木の根をむしり取り始めたが、千切っても、千切っても、木の根の成長は止まることはなかった。

 それどころか、次から次へとひっきりなしに生えてくるので……

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