6回目のはじめまして
その日世界に音が響いた。
魔剣が空に飛び散り、小さな星となって人々の元へと戻っていったのだ。
でも、それだけじゃなかった。
誰も聞こえない、でも、砕け散るような。
猛スピードで飛ぶ二つの黒い影、その一つは、宙舞う青いるか。
剣を振りかざし、叫んだ。
「まて! 今度こそ追い詰めたぞ、この世界は僕が壊させやしない!」
余裕の表情で攻撃をかわしながら黒いローブの男が答える。
「ははっ! もう遅いよ! 既に楔は打たせてもらったからね、時間の問題さ。俺の方は今度こそ退散させてもらうよ、精々頑張るといい。」
ローブの男はそう言い残すと開いたゲートに飛び込んだ。
「ま、まて!逃がすか!」
閉まりかけたゲートに青いるかが飛び込む。
そして夜は何時もの静けさを取り戻した…
誰もいない真っ暗な街路。
この時間に外を出歩いているのは私くらいでしょ? とメイド服を着た女は思った。
カチャカチャ
真っ暗闇に響く、小さな金属パーツが擦れる音。
誰にも見つかる訳にはいかない。だから、急いで作業を終えなくては。
これで6度目……既にあの時から10年は経とうとしている。独りでいることに慣れてしまいそうになっているのが辛かった。
次に狙うのはその辺の魔物とは違う。紛れもなく人族だ。
「マイマスター……」
胸にぶら下げたペンダントをぎゅっと握りしめる。
もし、この場にご主人様がいらしたら……いったい何度そんなことを考えただろうか。まだ、傍らにいるべき人は、ここにはいない。
(私はシーフじゃないもん、人を拐う術なんてわかりません!)
心の中では、上手く行くかどうか考えないようにするのが精一杯で、それでも不安を振り払って作業を進めた。
「これでいいよー、誰も引っ掻からないなら他を当たればいいもん」
誰も聞こえないよう呟く、これは単なる独り言。
街路にはあからさまに怪しげな輝きを放つ宝石が取り付けられる。
きっとかかるとしたら、相当な守銭奴か、あるいは途方もない間抜けか、どちらにせよ期待はできない。むしろ、世界にとって不要な人族を間引くのにちょうどいいかもしれない。
(そうに違いありません! だったら、私は良いことしてるってことですね! 俄然、自信沸いて来ましたよー!)
未だに姿の見えない自分のご主人様に思いを馳せて、女はこの罠にかかる愚か者のことを期待する決心を済ませる。
「よし、これで終わり! 待っていて下さいねマイマスター! この私、ちょっとお家に帰ります!」
そう言うと、女は背中の翼を広げ夜空に飛び出した。




