表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
成れ果ての不死鳥の成り上がり・苦難の道を歩み最強になるまでの物語  作者: ネクロマンシー
第1章 壊れ続ける日常
4/142

第4話 夢物語

 カナリアが住んでいたのは森の中にぽつんと佇んでいる小さな古びた塔だった。小さいと言っても子供2人からするととても大きい物ではあったし、木で作られている入り口のドアも重くて開けるのは大変なほどだった。しかし入ってみると内側は綺麗で机や椅子、本やベッドがあり生活感溢れる部屋になっていた。

 奇妙な家だがノアは、普通の家の中に入ったこともなかったので何の違和感もなく言われるがままに家に入り椅子に座る。

 カナリアは少し待っててとノアに伝えると部屋の奥へ消えた。ノアは言われた通り周りをキョロキョロと見回しながら待つ。部屋中カナリアと同じ花のようないい匂いに鼻をくすぐられ、自然と足を上下に揺らしてしまう。構築上この塔には上に部屋があるだろうと思っていたがそれらしい階段も入り口も確認できず探すのを諦める。浮かれている自分に気づくが悪い気分ではなくこの時間すら楽しかった。


そのまま待ち続けると、机の上にはカナリアが並べた色んな料理で埋め尽くされた。


 温かくて柔らかい白いパン、湯気を立ち上げ肉汁が溢れ出している肉が入ったスープ、様々な鮮やかな色をしている果実。ノアにとっては食べたことも見たこともない様々か温かい料理。それを見た途端に喉が唸り涎が垂れ、食欲を抑えきれない。ノアがそわそわと待っていた様子を、楽しそうに見ていたカナリアにどうぞと言われ料理に飛びつく。熱い肉もスープもパンも関係なく手で掴み口に頬張り咀嚼して流し込む。もったりとした柔らかい肉、ピリッとする程よい辛さの肉を飲み込み残りのスープを飲み干んでいく。自然とほぅっと息づいてしまい体の芯から温まっていく。もちっとしたパンを噛みちぎり感触を味わいながら次はどれから食べるか迷う。今まで食べ物など空腹の痛みを和らげる固形物としか考えていなかったノアにはまるで宝石箱の中を探るような感覚になった。皿に顔ごと突っ込みそうな勢いで食べるノアを見てカナリアはクスクスと笑っていた。


 側から見ると手ごと皿に入れてせっかく洗った顔を汚しながらがっついて食べるノアは意地汚いだろう。ノアは手や口の周りなど気になんかしてられなかった。それでもカナリアに貰った服だけは汚さないように、真っ白のままだった。

カナリアは一生懸命食べ物を口に頬張る様子が微笑ましく目を細めながら自分もスープを口にする。

 余るつもりで大量に用意した料理だがノアは10分そこらで綺麗に食べ尽くした。たらふく美味しいものを食べた途端眠くなり、目を一生懸命開けようととはするが瞼が閉じていく。力が抜けていき頭を支えれずにかくんと落ちる。カナリアは倒れそうになったノアを慌てて受け止めてどうにか立たせた。


「ふふ、赤ちゃんみたい。ノア、ここで寝たら風邪ひいちゃうから。ベッドまで頑張って」


 ノアはカナリアに抱えられてどうにかベッドまで移動する。カナリアに顔や手を拭いてもらうと力が入らずにベッドに倒れこんだ。お腹が満たされて眠くなっている時に、いい匂いがこもっている柔らかいベッドに顔を埋めて意識を保つことなど出来るはずもなく、心地よい波に意識を沈めた。いつもは空腹と寒さで苦しんでいたノアは始めてうなされずに眠った。





 ノアは目覚めると身体を伸ばして意識を覚醒させた。前に疲労に疲労を重ねた身体を数週間引きずって歩いていたとは思えないほど、体の調子はよくなっており起き上がろうとするとあることに気づく。隣に無防備に投げ出されている艶やかな裸体があったのだ。いろんな意味で衝撃的な光景に驚きベッドから転がり落ちる。なんとか立ち上がって昨日の寝る前の記憶を探り出しているとカナリアが目を覚ましたのか、目をこすりながら身体を起こした。


「おはよう、疲れは取れた?」


「え?ああ、うん。すごく、気分はいい」


「それはよかったわ、朝ごはんにしましょうか」


 ノアが動揺していたことなんて知るわけもなくカナリアはベッドから白い脚を下ろして立ち上がり服を着て食卓に向かう。ノアは自分の頰を手で挟みご飯のことを思い浮かべて雑念を消して立ち上がる。またあの幸せな味を堪能できる、そう思うと頰が緩む。しかし幸せを感じるとそれが壊れることを恐れてしまう。


「あ、あのさ」


「なに?」


「こんなにしてもらっていいのか。なんていうか不安だ。こんなことしてもらったことねぇし。俺、ここに居ていいのか?」


「んー、それならちょっと髪を持っててくれない?」


「え?あ、ああ」


 戸惑いながらカナリアの真っ白な綺麗で長い髪に手を添えて、二人はベッドに座りカナリアはゆっくりと櫛で髪をといていく。時間の流れがゆっくりに感じる。


「いいのよ、居て欲しいの。あなたがいるだけですごく楽しいわ、私もここではずっと1人だったし。ノアはかわいいしね」


 不安を素直にカナリアにぶつけると彼女は優しく頭を撫でて不安を安心に変えてくれる。また彼女の優しさに甘えてしまう。自分のことでいっぱいで考えてなかったがこの静寂に包まれた森で彼女もずっと1人だったのだ。ノアは自分勝手に孤独を嘆き、喚き散らした自分を恥ずかしいとは思わなかった。ただ彼女に憧れる。彼女のように優しく広い心を持ちたいと。

 ノアはここに居ていいと言われて、自分の居場所を作ってくれてカナリアにさっそく一つの目標、生きる理由を見つけさせてくれた。


「こういう時は、なんて言えばいんだ」


「ふふっ、ありがとうでいいのよ」


「ありがとう、何か出来るなら頑張るよ」


「ええ、それなら今日からやらないといけない事が沢山あるんだから早く朝ごはんにしましょ?」


 初めて感謝の気持ちを伝えれることができた。感謝を言われた訳でもないのにじんわりと心が温まった。

 朝ごはんは軽めのパンやスープだったが彼女の作る料理はどれも一級品ですぐに平らげる。お腹をさすって幸せの余韻に浸っているとカナリアは手をパンパンと叩いてにこやかに笑うと奥から持ってきたであろう大量の本を机の上に積み上げた。


「今日からノアにはいろんなことを勉強してもらいます。まずは常識的なことから、覚えることは沢山よ?まずは手や口を汚さない食事のマナーからね?」


 こうしてノアはカナリアにいろんなことを教えてもらった。

 箸やスプーンの使い方から挨拶、様々な言葉を覚える。文字の読み書きや料理まで。文字を覚えると次はこの大陸の歴史や仕組みなど数ヶ月に及んで学んでいく。勉強なんてした事がないノアにとって文字を覚えることは大変だったが辛いことなんて一つもなかった。こうして月日は流れてった。


 目が覚めると隣に彼女がいて、空腹になれば料理をし、川や森で遊び合い疲れきったら泥のように眠る。たまには喧嘩をし、その後の仲直り。

 楽しい時は笑い、悲しい時は泣き、辛い時は歌った。


 ノアは甘いミルクのようなぬるま湯に浸かる日々を過ごし、順調にじゅくじゅくと幸せで腐っていった。

 




 ーーーー700年前に6つの国が六花の戦火がおこしほとんどの生物が滅んだが争いをやめて一つの大きな国を作りその中で平和を築きあげた。そして緑や生物は戻りつつあった。6つの国の人達はそれぞれ昔の実験により身体に他の生物の力を宿しているため〈魔族〉〈天空族〉〈獣族〉〈龍族〉〈鬼族〉〈妖精族〉と分けられているが平等に生活している。


 普段は隠せるが興奮したり臨戦態勢に入ると独自の特殊器官が開花する。一般的には

 魔族は鋭い牙や悪魔のような赤い爪

 天空族は透明な瞳で鳥のような羽

 獣族は獣のような耳や尻尾

 龍族は紅く輝く二本の角

 鬼族は蒼く灯る一本の角

 妖精族は蝶のような羽

 がそれぞれ亜人の特徴である。

 そして亜人は体の中のマナというエネルギーを使うことにより異能という力を扱えた。異能は火・水・雷・土・風・光この6つの属性に分けられ、その属性の中でも性格によって少しづつ種類が変化するらしい。


「俺はどんな異能が使えるんだ?」

 

 ノアはその話を聞いた時、自分が異能を使いこなして火や雷を放つ姿を想像して目を輝かせたものだ。


 さっそくカナリアに教えてもらったノアは自分の中に眠る異能を解き放った。


「……こ、これだけ?俺がまだ子供だからか?」


 ノアの手に出来上がったものは本当に小さいろうそくの灯火のような火、そして少ししたらすぐに消えてしまう。これだと夜に辺りを照らすことさえ苦労するだろう。


「体内のマナの量は人によって大きく差があるから、使える異能の大きさもすごく変わるのよ、こればっかりは仕方ないわ。残念だけど体が成長してもあんまり変わらないし、あんまりマナが多くない人も稀ではないの。わたしも実際にまったく使えないしね」


「才能か〜」


 その話を聞いて、たいして気にしていないと言えば嘘になった。しかしノアは異能なんてなくとも不便に思ったこともない、死ぬわけでもない。そう考えるとちっぽけなことでしかなかった。


 そして知識を蓄えるにつれて知らない事を知りたくなる欲求は誰にでもありノアも例外ではなかった。カナリアとの生活は決して嫌な日々ではない、そう断言できる。しかしこの森に入ってから一度も出ていなかった。いろんな事を知ったからこそ、ノアはもっと世界を見てみたくなり外の世界に興味を持ってしまうのも仕方がないことだった。


「その国ってどんなところなんだ?」


「いろんな種族の人達が沢山いて不思議な物や美味しい食べ物も沢山あるわ、楽しい事だっていっぱいあるのよ」


「へぇ〜行ってみたいな、カナリアは行ったことがあるのか?」


「ないわ。私はこの森から出られないから...」


 森から出られない理由は教えてもらえなかった。なんとなく、と誤魔化してカナリアは笑っていたがノアにはその笑みが無理をしているように見えノアは深く聞けなかった。カナリアもノアも互いに深いところまでは触れ合わずにいた。お互いが自分の中の暗いものを抱えていることがなんとなくわかっており自然と一番いい付き合い方を選んだ結果なのだろう。

 ノアはそれでも今が一番楽しくて幸せだということを伝えるとカナリアはくすぐったそうに笑った。


「昔の6つ国があったところはどうなったんだ?もう残ってないのか?」


「今は遺跡と呼ばれてるわね、しかもその周りはまだ六花の戦火の影響が残っていているからハンター以外は入れないわ。」


「ハンター?」


 遺跡の周りはまだ大地や空気の再生が行われていないためまだ猛毒を含んでいた。その他にも未だに再生されていない地はあり、この森の外の荒地も毒に犯されて草木も枯れていた。そのためハンターは毒に対応した様々な道具をつかい遺跡を探索して国に役立つ物を再利用するために取ってきたり、貴族や王族の護衛、様々な活動を行なっているギルドという組織に属している者である。ハンターは強靭な肉体や賢い判断力をもつ者が多く存在している。そのため国で一番大きい役割を待たされている。それは古代兵器の破壊だ。戦争中に作られた兵器はまだ国の外に数多く存在しており、国の近くに来ることもある。古代兵器は現在では作れない物質で構成されているうえに亜人を発見すると自動的に攻撃を行うようプログラムされているため非常に危険なのだ。


「まぁ簡単に言うと発見した遺跡が再構築できるか調査したり、古代兵器の始末を行ってる集団、それがハンターよ」


「危ないな...」


「でも嫌なことばかりじゃないのよ?遺跡で新しい宝を発見した時の喜びとか名声や名誉も貰えるかもしれないし、1番の目的は夢ね」


「夢?」


「ええ、遺跡のどこかにある聖杯を見つけ出すことよ」


 6つの国は国宝を隠し持っていたが、戦争により国は滅び遺跡となり国宝は埋もれてしまった。しかしあるハンターが一つの国宝を見つけ出したことから始まった。その宝は科学の結晶であり、莫大な力や無尽蔵な金、望んだものを何でも叶えてくれる物だったという。それをハンター達は聖杯と呼んだ。


「聖杯...ハンターか、」


 ノアもその話に年相応な夢を持ってしまった。何でも叶う、その言葉は充分に魅力的でそれを使ったらハンターになって聖杯を見つければカナリアの森を出られない事情も消せるかもしれないとも思った。異能が使えなくたって自分がハンターになって見つけられると信じて疑わないほどにノアは聖杯の話に毒されていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ