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成れ果ての不死鳥の成り上がり・苦難の道を歩み最強になるまでの物語  作者: ネクロマンシー
第2章 変わり続ける感情
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第36話 彩る感情

 妖精族でギルドの受付嬢をしている女性、ソフィは軽く欠伸をする。ここのギルドは広くて中にはいろんな店や賑やか酒場があってとても好き。中には困ったハンターの人達もいるけどこの仕事にはやりがいを感じてる。だいたいは依頼の受付などを担当しているが今は暇な時間帯でただ時が流れるのを感じるだけだ。


 そんな時だった。いつも酒場で騒いでいる人達がざわめき始め、賑やかな酒場が更に活気が増し始めて中には立ち上がる者もいるほどだ。

 その理由は1人の少女が迷宮から帰還したことである。


「おい!剣姫が帰ってきたぞ!」

「うわぁ、マジ可愛いじゃん」

「なあ。今度一緒に俺たちと迷宮に行かない?」


 その少女の美しさときたら衆目を集めすぐさま人だかりができるほどだ。声をかけてくる人に愛想よく手を振っている少女を見ると確かにここまで人気があるのも頷ける。

 その少女は真っ白な髪を腰まで伸ばし真珠のように輝く瑠璃色の瞳、どことなく品の良さを感じさせる美しい顔立ちをしている。

 その美少女は髪と同じ白の綺麗な服に最低限の軽装な防具を身につけている。そして腰には紫紺の揺らめく鋭い剣が収められていることからハンターということがわかるだろう。そして彼女はソロでハンターをしているためパーティーの誘いなど日常茶飯事だ。


 その少女の名前は「アテナ」


 その少女は美しいだけでなく、並ならぬの孤高の実力者であるため周りの人達は彼女を『宝石の剣姫』と呼んでいた。


 そしてそんな彼女は私の親友でもあった。









「ソフィ、ただいま。引き受けた依頼はひと通り終わったわ」


 大勢に囲まれて疲れたのか先ほどより少しぐったりとした様子でアテナはカウンターへと顔を出してきた。

 私よりアテナは少し年下だが周りからはよく姉妹のようだと言われるほどアテナとは仲が良く、剣姫なんて呼ばれてはいるが私には普通の女の子にしか見えなかった。


「お疲れ様、本当に助かったわ。今回の依頼には前から困ってたから。それにしても人気者は大変ね」


「もー、茶化さないで」


 アテナは顔を少し赤くしながら恥ずかしそうに笑う。



「それでその、例の人見なかった?」


 アテナは周りを少し気にして私に顔を近づけ小声で言った。

 なにやら人探しているようで数週間前、いきなり夜中に私のところへ来て「見つけて欲しい人がいる」と言って駆け込んできたのだ。


「う〜ん、見てないわね。もう少し情報があればいいんだけど」



「え〜っと、私が話しかけようとしたらすぐにどっか行っちゃったから私もよく見てなかったんだけど、私と同じくらいの男の人で確か白髪に赤くて綺麗な目、あ!あと白い羽が生えてた」


「確かに特徴的だけど見たことないわね」


「そっか〜。格好からしてハンターだと思ったんだけど」


 アテナは少し残念そうにはかない溜息を吐いたがすぐに気を引き締めたように笑った。


「わざわざごめんね。また何か依頼があったら言ってね」


「はーい。気をつけてね」


 アテナと明るく手を振って別れる。するとまたアテナがテーブルの間を通り抜けるだけで歓声に近い騒ぎ声が上がる。また酒場の人達に絡まれているのだろう。まぁあれだけ可愛ければそれも仕方のないことだろう。




「すみません」


 そんなことを考えているといつのまにか目の前に1人の少年が立っていた。おそらく何度か声をかけられたのだろうが全く気づかなかった


「あ、ごめんなさい!ぼ〜っとしてました。ご用件は何でしょうか」



 私はアテナと話していたことで緩んでしまっていた気持ちを受付嬢の自分に切り替えて慌てて頭を下げた。


「あはは、いいですよ。ハンターの登録をしに来たんですけど、お願いできますか?」


「えっ、」


 私は目の前で人懐っこそうに笑う少年を改めて見て思わず声を上げてしまった。なぜならその少年の髪の色がさっき話していた人と同じ白色だったからだ。


「どうかしましたか?」


「あ、いえ。すみません。勿論できますよ、登録料金はお持ちでしょうか?」


 そう言うと懐を漁り始めた少年を私はじっと見つめてみた。


(それにしても綺麗な子ね。貴族か王族だったりして)


 その少年は中性的な顔立ちで凛々しくもあり可愛くもある、言うならば魅力的な雰囲気だろうか。貴族や王族にも似た高貴なオーラを感じた。黒のローブに身を包んでいるその体は一見細く見えるが、百を超える人数のハンターを見てきた私にはただ痩せているというだけでは表しきれない何かを感じたさせた。


(最初はアテナの言ってた人かと思って驚いちゃったけどこの人は別人ね。だって目の色が違うものね)


 親友が探していた人の目は赤だと言っていたが目の前にいる少年の目は水晶をはめ込んだような透明な目だった。こんな綺麗な瞳を見間違えるわけもないだろう。
















ーーーーーーーーーーーーーー


 黒い猫耳がついたフードを深く被った華奢な少女が街のはずれ、寂れた屋根の下で少年の帰りを待っていた。少女は長時間待っているのか眠たそうにうつらうつらとしていたが、しばらくして少年の姿が見えると気づかないうちに尻尾を振らしていた。


「おかえり」


「ただいま。これお土産」


「ん、ありがと。…ギルド、どうだった?」


 その少年、ノアは出迎えてくれたテトに笑いかけ壁に寄りかかっていたのかテトの肩についていた汚れを手で払ってあげ、お土産に買ってきたりんごをテトに渡す。


「まぁ前も行ったことあったけど、賑やかなとこだったよ。そういえばあの受付の人、凄く僕のこと見てたけどやっぱり変な人って思われてるよな〜」


 



 前にギルドに行った時ノアは登録料を支払う際にジェムというものを知らず、ギルドの人達に追い出されたことがあった。

 そして今日行ってみると受付の人が同じだったため、また追い出されるかもと思いノアは精一杯愛想笑いを作り礼儀よくした。結局追い出されはしなかったのだが受付の人にずっと探るような視線を向けられていたため受付の間ノアはずっとひやひやしていた。






 だが実際にソフィはノアと一度会ったことなど気づいていなかった。ノアは忘れているが、あの時のノアの格好は泥だらけで髪の毛は土や血などの汚れがこびりつき白というより茶色に近かった。

 そのためソフィもまさかあの時の子供とノアが同一人物だとは微塵も思いもしなかった。




「……次、いつギルドに行くの?」


 テトは手に持っているりんごを指でいじりながらおずおずと聞いてきたため、ノアは少し考えテトの頭を安心させるようにぽんぽんと優しく叩く。


「仕事もあるからまだ数日は行かないかな」


「ほんと?」


「うん」


 ノアの手に触れた瞬間ピクリと耳が反応し、ノアの言葉を聞いてテトは無表情ながらもどこか嬉しそうに、それでいて安心したように息を漏らした。


 ノアは今日、晩御飯の当番だ。そのためノアの手には食材の入った買い物袋が下げられていた。

 皆んなノアの作る料理を楽しみにしておりテトも早く帰りたいと思う。だがそれと同じくらいこの帰り道の時間がもっと続けばいいと思ってしまう。ノアを待っていた時間は一秒が1時間くらいに感じたのに帰るまでの時間はあっという間だ。

 テトは最近そんな不思議な想いに心動かされ、いろんなことを考えるようになった。前まで白黒の世界だった日常が、今やこんな廃墟の帰り道すら色鮮やかに見える日常になっている。

 テトは1人くすりと笑うとそのままノアの隣に並んで一緒にりんごを齧り口の中に広がる甘酸っぱさをゆっくりと舌で転がして味わった。


この感情に名前があるとすればなんて名前なのだろうか。



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