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成れ果ての不死鳥の成り上がり・苦難の道を歩み最強になるまでの物語  作者: ネクロマンシー
第1章 壊れ続ける日常
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第25話 白虎

 屋敷中の命を一瞬で消し去った少女は自分の手にこびりついた家族だったもの、その残骸を見つめて血を吐くような絶叫を上げた。呪いと言われる力は、異変に気づき駆けつけた騎士や憲兵、近くものを一瞬で肉塊へと変えてみせた。


 生命をもつもの全てを死者へと変えた少女、それがテトだった。テトは自分の力に恐れ、屋敷から死に物狂いで逃げた。裸足で走り続け鋭く尖った石が突き刺さろうとその痛みは感じないほどに心は痛く、胸を握りしめて涙をこぼしながらひたすら足を動かした。

 その後屋敷中を調べ上げた憲兵達は調べた結果、死体がなく姿も見当たらないテトを犯人と判断し上界でテトは指名手配された。


 身体中に付着している赤い粘液は自分の血か家族の血か。駆ける少女の暖かい暮らしは一変し、血と泥に濡れた逃亡の生活が始まったのだった。



 幼いテトは壁を通り抜ける手段がなく、逃げききることはできずに最終的には憲兵達に囲まれた。そんな時に助けてくれたのがバッカスだった。ユグドラの命令でバッカスはテトを助けてタルタロスに連れていったのだ。

その後ユグドラと話してテトは力と引き換えにここに置いてもらった。





 だがそれからユグドラがテトに何かを命令することはなかった。おそらく期待されていないのだろう。食べ物も寝床もあるが安全な場所だというだけでここは居場所ではない、テトの心は未だに彷徨い、ただただ周りの時が流れていくのを感じるだけ。自分の力に怯えて生きていく生活が続くばかりの人生だった。











「……真っ暗」


 テトは一人膝を抱えてそう呟いた。暗い、ここにはキラキラとしたシャンデリアの輝く光もなければ夜眠るベッドの横に灯してある明かりもない。ここはジメジメとしてしんみりとした苔が生えているただの廃墟だ。そして何より暗いのは自分の心の中だ。ずっと暗闇の中手探りで進んでいるようだ。

 生きる理由も目的もない、テトはこうやって膝を抱えて俯くしかなかった。




「大丈夫?」


 顔を上げるとそこにいたのはノアだった。



「その傷……」


 テトは目を見開き息を詰まらせた。ノアが突然現れたこともそうだが何より驚いたのはノアの状態だった。服は真っ赤に染まり肩からは骨が見えるほどバッサリと斬られている。他にもいくつか深い傷ができていた。


「ああ、これ?またちょっとドジしちゃって見つかっちゃったんだ。でも今度はちゃんと仕事はこなしてきたから心配ないよ」


 ノアはそう言って軽く笑った。それほどの傷を負って、発した言葉は気遣うように優しい。正気の沙汰ではないだろう。



「……なんで」


 テトは立ち上がりノアから一歩下がって問いかけた。テトにはノアという存在が信じられない。



 なんで何もしていないパートナーを許せるのか。自分が他の誰か、例えばロイならばノアが怪我することなんてなかっただろう。

自分はそんな深手を負った死にそうな状態で、その原因である役立たずを罵倒するどころか、ノアは自分を心配するかのような態度をとっている。ノアがどれだけ必死に進もうとしているかは周りから見ていてもわかるだろう。それなのに自分は邪魔していると言っても過言ではないのだ。それなのに。


「……なんでそんなに、私にかまうの?」


 テトは答えを欲した。ノアがその問いに答えてくれたら自分もその考えを、生き方を真似したら彼のように前へ進めると思えたから。






「君が助けを求めてる顔をしてたから、かな」


「え?」



 ノアのそのどこか懐かしそうに言い切る言葉を受け止めてテトは足に力が入らず尻餅をつく。

 そんなお人好しのような考えなんて真似できるわけない。自分と彼では最初からなにもかもが違う。心の有り様が気高さが違いすぎる。テトは圧倒的な劣等感を感じた。







「まったく、何してるんだよ。何かあるなら話くらい聞くよ?」


 座り込んだまま動かなくなったテトに呆れたように軽く肩をすくめ、手を差し伸べた。


「触らないで!」


 だがテトはその手を避けて自分の身体を抱き寄せた。他人に触れるということに極端に恐れている様子で何かに怯えて震えていた。


「……ごめん、大丈夫だから」


 テトは少し落ち着いた様子を見繕うと下を向いたままか細い声で謝る。

 ノアはそんなテトを見て口を開くが何かに気づき、急いでテトのほうへ翼を広げた。



「危ない!」



 テトは、ノアの翼で身体を持ち上げられ壁の穴から外へと投げ出された。その瞬間テト達のいた建物が光に包まれ轟音をたてながら崩れ落ちた。










 


 ――――――

「お前が八咫烏(ヤタガラス)か。どんなやつかと思えば随分と手負いの小鳥だな」


 崩れた瓦礫と立ち上がる煙の中から姿を現したのは、白色の髪を逆立たせ鋭い眼光を放ち、白と黒の縞模様の丸まった獣の耳と長くしなやかな尻尾を生やした獣族だった。オーラが違う、ノアはこの男は強いと本能が訴えかけた。その周りには仮面をつけた部下も多数構えている。ノアは冷や汗を流し思考を巡らせ始める。



「俺様は白虎(びゃっこ)のティグリス。下界の西区、アヴァロンのボスだ」


「ゲホッ、ゲホッ。 アヴァロン? そのボスがタルタロスに何の用だ」


 白虎、白い虎と名乗ったが男の毛並みは白色からどんどん金色へと変わり輝きだす。

 男の姿は白の虎から金の虎へと変わり鋭い歯を剥き出しにして豪快に笑った。


「お前を捕まえに来てやったぞ」



 ティグリスは凄まじい脚力でノアに向かって跳んだ。その速さに、怪我をしているノアの身体が反応できず容赦なくティグリスの振り下ろした金色に輝く太い拳をくらった。


「ごぁっ、」


 ノアは拳が腹にめり込み吹き飛ばされるがなんとか踏ん張り立ち止まる。何が目的かはわからないがそんなことを聞いても結果は変わらない。ノアは残っている力を振り絞り立ち向かった。

 翼を羽ばたかせ身体を捻り、速度に全体重を乗せて強烈な蹴りをティグリスの腹にお見舞いした。



「ハハッ!やるじゃねぇか!」


 だがティグリスはノアの蹴りを腹にくらっても平然と笑ったまま仁王立ちしている。そして太くしなる尻尾をノアの身体に巻きつけて勢いよく振り回し地面にノアの頭を叩きつけその上から拳を振り下ろした。


「くっ....そ」


 ノアは頭から血を流して意識を手放した。


「こいつで5000ジェムか、簡単な仕事だな」




 金虎はまた白虎へと戻ると影から見ていることしか出来なかったテトを鋭い目で睨んだ。だがそれに肩を跳ねさせて怯えているのを見て興味を失いノアを掴んで連れ去った。




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