131.正体不明。
ロープから魔石を受け取る。
これで黒い影の力を調べる事が出来る。
正体まで分かればいいけど、分からなかったとしても問題は無い。
力を詳しく知る事が出来れば、その力を探せばいいのだから。
まぁ、探す場所が問題だけど。
それは、探すとなった時に考えよう。
「まずは魔石から力を取り出して、どんな力なのか調べないとな」
神国で問題を起こしている黒い影。
黒は呪いに関係している事が多い色だ。
だから、黒い影の力には少なからず呪いが関係していると思う。
でも、呪いだったら呪界が出来た時に、全て引き受けた。
だから、おかしいんだよな。
黒い影が神国に出現する事が。
「まぁ今は、考えるより調べる事が優先だな」
魔石の周りを結界でしっかりと覆い、その中に少しだけ魔石から力を取り出す。
そして、結界内にそっと指を入れる。
何かあっても指だけなので、すぐに対処が出来るだろう。
指から感じるのは……アイオン神から感じる力と似ているな。
「神力なのか? あれ? でも、神力だと違和感があるな」
アイオン神やフィオ神から感じる神力にかなり似ているが、どうも変だ。
これは、見て確かめた方がよさそうだな。
呪神になってしばらくすると、力を可視化出来るようになった。
今までは、俺の中にある力と比べたり、知っている者達の力と比べて判断していたけど、これからは見て確認が出来るので、調べやすくなるはずだ。
可視化のイメージを作ると、結界内に少しだけ俺の力を送り込む。
するとすぐに、結界内に白く光る球体が転がった。
「主、これは何?」
そういえばロープには、可視化出来る事は言っていなかったな。
「魔石の中にあった力を可視化したんだ」
「そんな事が出来るんだ」
「あぁ。こっちが俺の神力だ」
反対の掌に、可視化した自分の神力を作りだす。
「やっぱり」
俺の神力は、透明感のある白く光る球体。
でも魔石から取り出した力は、白く光る球体だが濁っている。
アイオン神が来た時に、彼女の力を可視化させてもらったけど透明感のある白く光る球体だった。
おそらく、神が持つ神力を可視化すると透明感のある白く光る球体になるのだろう。
ちなみにオアジュ魔神が持つ魔神力を可視化させてもらったが、透明感のある銀色の球体になった。
そして俺が持つ呪力。
これを可視化すると、黒い球体になった。
光る事も無い真っ黒な球体。
神力や魔神力と比べると、ちょっと残念な気持ちになってしまった。
魔石から出た力で作った球体を、掌に載せる。
微かに力を感じるが、特に掌を傷つけるような事はない。
「神力に似ているが、少し違う力か。この力が黒い影を生み出しているのか?」
魔石の中にある力を調べて分かった事なのだから、正しいはずなのに……納得できないな。
黒は、呪いに関係している色だ。
神力に似ている力が、どうやって黒い影を生み出すんだ?
ロープに意見を聞いてみようと視線を向けると、眉間に皺をよせ可視化した球体を見ていた。
「どうした?」
「その力を魔石に入れた時に、微かに魔神力も感じた気がしたんだ」
「えっ?」
魔神力?
でも、そんな形跡はどこにも……いや、もう少し力を調べてみないと分からないな。
結界を広げ、魔石から力を取り出し可視化する。
結界内に、白く光る球体と黒い球体が転がった。
「えっ? 呪力?」
いや、黒だけど白い靄みたいな濁りがある。
呪力に似た力という事か?
「えっ?」
俺の言葉に驚いた表情のロープ。
「この黒い球体が呪力?」
ロープの言葉に首を横に振る。
「呪力に似ているけど、少し違う。でもまさか、呪力に似た力を持っているなんて」
この力があれば、黒い影は生み出せるな。
「こうなったら、魔石の中の力を全て可視化してみるよ」
20㎝ほどの結界を作り、魔石から全ての力を出すと可視化させる。
結界内に、白く光る球体と、銀色の球体、黒い球体が転がった。
一番大きいのは白い球体、銀色と黒の球体は白の球体に比べると4分の1の大きさだ。
「まさかとは思ったけど、これで分かったな。黒い影を操る者は神力、魔神力、そして呪力に似ている力を持っている」
3つの可視化した力を見ながらため息が出る。
まさか、こんな結果になるとは思わなかったな。
「主の様ですね」
「どういう事だ?」
俺が不思議そうにすると、ロープに苦笑された。
「主も全ての力を持っているので」
あっ、気にした事が無いから忘れがちだけど、そうだった。
俺は全ての力を扱えるんだった。
何処かに俺みたいな奴がいて、神達を狙っているという事か?
「この結果を創造神達に報告するの?」
「もちろん。情報は共有するつもりだ。オウ魔界王とも」
「分かった。創造神達には俺から報告しておくね」
「頼む。はぁでも、力からは正体を掴めなかったな」
神か神族か、魔神かもしくは魔族か。
もしくは呪いの力を使える者など色々考えたけど、全ての似た力を使える者だとは。
「ロープ。全ての力を使える者の情報は……」
ロープが首を横に振るので、「そうだよな」と頷く。
まぁ、分かっていた。
そんな者がいるなら、既に報告してくれているだろうから。
「どうするの?」
「ん~」
黒い影は今の所、誰も傷つけていない。
でもこれからも傷つけないとは限らない。
襲おうとしている事は確かなのだから。
神が襲われても俺には無関係だけど、知り合いの神達も多くなった。
彼等が襲われたり傷つけられたりするのは嫌だ。
それにお隣さんがいつまでも不安定なのは、駄目だ。
いつ呪界に問題が飛び火するか分からない。
つまり、仲間達を守るためにも3つの力を持つ者を捕まえる必要がある。
「探すか」
魔石の力を調べても、正体を掴むことは出来なかった。
でも、力については詳しく知る事が出来た。
それなら、この力を持つ者を探せばいい。
「ただし、探す場所が神国なんだよな」
いや、本当に神国だけだろうか?
一番多く神力に似た力を持ってはいたけど、他の似た力も持っていた。
つまり探している者は、魔界にも呪界にも入り込めるのではないだろうか?
「呪界から探してみるか」
呪神になって、呪界の事を知るために何度も巡回した。
そこで不審な力を感じる事は無かった。
でも、巡回した時はただ見て回っただけだから見落とした可能性がある。
だから今度は、呪力に似た力を探しながら巡回してみよう。
何か分かるかもしれない。
でも俺が探せるのは、呪界だけ……待てよ。
さっきは神国にいたロープの事を見つける事が出来た。
「神国も、俺が調べられるかもしれない」
「えっ? 出来るの?」
「あぁ。さっき、神国にいたロープを映像で見る事が出来たんだ」
ロープは驚いた表情をしたが、すぐに笑顔になった。
「さすがだね。主なら神国だけでなく魔界も自由に調べられそうだよね」
魔界……出来るかな?
「サブリーダーの居場所は?」
サブリーダーを想像すると、スーッと力が抜けていくのが分かった。
ビュイン。
「「えっ?」」
初めて聞く音に驚くと、サブリーダーの姿が目の前に浮かび上がった。
どうやら、大きな木の前で……魔族達に指示を出しているみたいだ。
「……出来たな」
「そうだね。やっぱり主は凄いね」
「はははっ」
出来るかもしれないとは思ったけど、簡単に出来てしまった。
しかも、ロープの映像より鮮明に魔界を見ているみたいだ。
「まぁ、これで3つの力を持つ者を探せるな」
あれ?
指先に何か……気のせいか?
微かに痛みを感じたような気がしたけど。
「どうしたの?」
指先を見ている俺に、首を傾げるロープ。
「いや、なんでもない」
気のせいだったみたいだな。




