124.カシュリア神の力
神国からフィオ神と第2位のカシュリア神。
それとカシュリア神の補佐をしているアリフィルが来た。
アリフィルの姿を見た時に「あっ」と言いそうになったが、きっとお茶会に来ている事は内緒なのでぐっと我慢。
そう、俺は我慢したんだけど、なぜかアリフィルがいつものように挨拶をしてきた。
「呪界王、お久しぶりです。ちょっと忙しくて顔を出せなかったので、今日は会えて嬉しいです」
「お、おう」
えっ、いいの?
内緒ではなかったのか?
ちょっと混乱するが、アリフィルから声を掛けてきたのだから、大丈夫なんだろう。
いや、本当に大丈夫なのか?
というか、カシュリア神が俺を見た瞬間に小さな悲鳴を上げて顔色を悪くしたんだけど。
何故だ?
「どうしました?」
カシュリア神の様子を気にしていると、傍に来たアリフィルが不思議そうに聞いてくる。
「カシュリア神なんだけど、俺を見て顔色を悪くしたんだよな。どうしてだと思う?」
「あぁ。カシュリア神は相手を見て自分との力の差を自然と測ってしまうんです。おそらく呪界王との力の差を知って、恐怖を感じたんだと思いますよ」
なるほど。
確かに、俺とカシュリア神の力を比べたらかなり差があるな。
でも、俺は呪界の王だから。
これぐらいは普通だろう。
「すぐに落ち着くから気にしなくていいですよ」
「……なんだか冷たい反応だな」
アリフィルの反応に少し違和感を覚える。
お茶会での彼女は、周りにいる神族達を気遣える優しい性格なのに。
「神と何かあったのか?」
俺の言葉に、ふっと笑うアリフィル。
その顔を見て、神が何かした事が分かった。
それが何かは分からないが、かなり怒っているようだ。
「大丈夫か?」
神は、自分勝手に神族達を使う。
アリフィルの態度に気分を害したら、傷つくのはアリフィルだ。
「大丈夫です。カシュリア神は、神族に興味は無いですが、とりあえず助けてはくれるので」
ん~、それはどうなんだ?
アリフィルは、彼女の補佐だよな?
「興味が無いのは、上司として駄目だろう」
自分の仕事を手伝って貰っているのに。
「神国では神と神族の関係は、それが普通なんです。横暴な命令や無駄な暴力が無いだけ、マシなんです」
「最悪な仕事環境だな」
お茶会での神族達の話は、無茶な命令や暴力の話が多かった。
そういえば、普通にどんな感じなのかは、聞いた事が無かったな。
話をしないから神との関係はそこそこ良いのかと思っていたけど、違ったみたいだな。
「アイオン神とフィオ神は、補佐達に無関心ではないけどな」
あれが、普通だと思っていた。
「あのお二人と、そして彼等と長く付き合っている神達は、神族達から人気です。補佐の神族を大切にしてくれるので」
「そうなんだ」
呪界で見るアイオン神と彼女の補佐達の関係は、確かに良いな。
時々、本気で切れたマッシュにアイオン神が追い掛け回されているけど。
まぁあれも、いい関係が築けていないと出来ないよな。
あっ、カシュリア神が動き出した。
呪界に来て俺を見てから、固まっていたからな。
「こんにちは」
怖がっているから、軽い感じで言ってみたけど……駄目だな。
なんだろう。
ビクビクしているのが、小動物みたいだ。
「こんにちは。あっいえ、初めてお会いします。神国で第2位のカシュリアです」
硬いな。
「呪界王をしている翔だ。気軽に話してくれていいぞ」
チラッと俺を見てスッと視線を逸らすカシュリア神。
ん~、そんなに怖い気配を纏っているつもりは無いんだけどな。
「カシュリア神、どうしたんだ?」
フィオ神が俺の傍に来ると、カシュリア神を見て首を傾げた。
そして俺を見る。
「えっと……」
「俺が怖いみたい」と、言うのか?
それは、なんとなく嫌だな。
よしっ、違う話で誤魔化そう。
「それより、リーダーと何を話していたんだ?」
フィオ神は、呪界に来てからリーダーに何か話していた。
その表情が真剣なものだったから、ちょっと気になったんだよな。
「神国に広がっている闇について、気付いている神がいるか調査をしたんだよ。その結果報告だ」
「んっ? それはリーダーでなくロープに報告するべきでは?」
神国の調査をしているのはロープだ。
「ロープから、リーダーにも話しておいてほしいと言われたんだよ」
「そうなんだ」
リーダーは呪界、神国、魔界の情報を全て集めているのかな?
前にサブリーダーからも魔界の事について、詳しく話を聞いていたよな。
「それで、闇に気付いた神はいたのか? 神族でもいいけど」
「今わかっているのは神だけなんだが、全くいなかった。これからは神族に調査をしていく予定だ」
フィオ神の言葉に頷く。
「神が気付かない呪いの力で作られた闇」か。
神が気付かない。
この部分が気になるんだよな。
なんでだろう?
「カシュリア神は、報告はしたのか?」
「あっ、いや」
「報告ならゆっくり聞くよ。とりあえず、ウッドデッキに行こう」
フィオ神の言葉に、悪かった顔色をもっと悪くするカシュリア神。
報告は、声と声に関する力についてだよな。
何か、不安に思う事でも分かったのだろうか?
カシュリア神を見ると、視線が逸れた事にホッとしている様子。
本当にどうしてそんなにビビっているの。
「どうぞ、座ってくれ」
美味しいお菓子でも食べれば、気持ちも落ち着くだろう。
ウッドデッキに来ると、寝そべっていた飛びトカゲと水色が顔を上げる。
そしてカシュリア神を見ると、どちらも首を傾げた。
その様子に、カシュリア神を見る。
特に、気になる事は無いよな?
「どうした?」
そっと飛びトカゲと水色に声を掛ける。
2体は、お互いに顔を見合わせると首を横に振った。
「あの神、力の中に力でいいのかな。とにかく力が変」
……んっ?
力の中に力?
水色の言った言葉の意味がさっぱり分からない。
もう一度、カシュリア神を見る。
その視線に気付いたのか、慌てた様子で椅子に座るカシュリア神。
別に、焦らせたかったわけでは無いんだけど。
「あとで詳しく聞かせてくれ」
「分かった。ただ、俺も飛びトカゲもよく分かっていない」
水色が話しながら飛びトカゲを見る。
飛びトカゲも同じなのか、頷いた。
「分かった。分かる範囲でいいから」
俺の言葉に頷く2体の頭を撫でると、椅子に座った。
「リーダー、ありがとう」
リーダーが持って来てくれたお菓子を食べながら、正面に座ったカシュリア神を見る。
力の中の力とはどういう意味だろう?
カシュリア神の力は、神力だ。
それに間違いはない。
カシュリア神からは、神力は溢れているからな。
神力の中の神力?
駄目だ、全く分からない。
これは、水色と飛びトカゲに話を聞くまで忘れよう。
「翔。声についてだけど」
フィオ神の言葉に、視線を向ける。
「神と神族は誰も声を聞いていなかった。それどころか、声を作っている力を感じた者もいなかった」
「いない」
ロープが感じた力は、創造神が住んでいる建物から出ていた。
俺はロープの実力を知っているから、これに間違いは無いと思っている。
でも、そこにいた神や神族は気付かなかった。
闇と同じだな。
そこにあるのに、感じない。
いや、感じられない。
闇と声。
呪いと声は、呪詛なのかな?
「役に立てず、申し訳ありません」
急にカシュリア神が、俺に向かって頭を下げる。
「いやいや、謝る必要は無いから」
ビックリした。
まさか、何もわからなかったから怒られるとでも思ったのか?
いや、それは無いか。




