106.俺らしい。
―創造神視点―
呪界王と魔界王との顔合わせ。
フィオ神は、気軽に参加すればいいと言っていた。
でも、それは出来ない。
神国は、魔界にも呪界にも迷惑を掛けた。
まずは謝り、許してもらわなければ。
そう意気込んで来た。
だが、パネルに映る2柱は、私が思っていたような感じではなかった。
なんというか、2柱とも雰囲気が凄く柔らかい。
なぜ2柱は、私に憎しみをぶつけてこないのだろう?
私は、魔界王にはかなり憎まれていると思っていた。
ずっと理不尽な攻撃を受けていたのだから、それが当然だと。
そして呪界王にも、魔界王ほどではないとしても憎まれていると。
だからこの顔合わせは、緊張感漂う場になるだろうと想像した。
それなのに、そんな雰囲気が全く無い。
どちらかと言うと、穏やかな雰囲気だ。
もしかしたら、神族から意見を聞いている時より雰囲気がいいかもしれない。
それでも、神国のしたことは許される事ではない。
だから、しっかり謝罪をしようと思って2柱に頭を下げた。
覚悟を決めた謝罪は、呆気ないほど簡単に許された。
まぁ、オウ魔界王には「どうでもいい」とも言われたが。
いや、これからに期待すると言われたんだった。
つまり、これからも関係を続けてくれるという事だ。
こんな簡単に神国のしてきた事を許せるのだろうか?
分からない。
でも、魔界王も呪界王も私に対して負の感情を向ける事が一切無い。
覚悟してきたが、本当は怖かった。
だから、ホッとした。
それにしてもオウ魔界王も翔呪界王も仲が良い。
2柱の間に、気軽な雰囲気が漂っている。
それが少し羨ましい。
私には、こんな風に話が出来る存在がいない。
フィオ神は、2柱に色々聞けばいいと言っていたけれど。
翔呪界王の言葉に、緊張すると笑われてしまった。
「我々は同じ立場なので、そんな風にかしこまる必要は無いと思う。もっと気軽に話をしよう」
えっ?
翔呪界王の言葉に、困惑した気持ちが湧き上がる。
どう考えても、同じ立場だとは思えない。
2柱は、しっかりと世界を導いている。
それに比べて私は?
今や神国の制御が全く出来ていない。
結界1つ修復できないのだ。
だからその思いを伝えた。
本当に情けない。
だが、そこから始まった2柱の会話に首を傾げる。
「導いていない」? 「流れ」?
どういう事だ?
魔界も呪界も、今目の前にいる王達によって、いい方向に流れている。
なのに、導いていないというのか?
呪界王の部下に誘導?
それで魔界王になったと?
そんな事があるのか?
信じられないが、オウ魔界王が嘘をついているようには見えない。
呪界王も成り行き?
確か、呪界王は元人間だとフィオ神に聞いた。
ただ仲間を、世界を守りたいという思いから神にまで上り詰めたと。
つまり、力を求めて神になったという事だ。
あれ?
違うのか?
オウ魔界王も翔呪界王も、世界の王のイメージとは違う。
でも、王になった以上は何か目的があったのでは?
「無い! 全く無い!」
オウ魔界王の力強い拒絶に、唖然としてしまう。
研究が好き?
魔界が大きく変わっていくため忙しく研究が出来ない、か。
えっ、この地位を譲りたい?
オウ魔界王は本気でそんな事を思っているのか?
あぁ、あれは本気の目だ。
しかも翔呪界王が、簡単に次を探せと言っている。
そんな簡単に、王と言う地位には就けないのに。
導く?
つまり次の魔界王を、オウ魔界王が育てるという事か。
確かに、自らの手で育てれば早く代替わりが出来るだろう。
でも、王とは特別な存在だ。
そんな簡単に次が育つはずが無い。
……「世界の王」は特別な存在ではないのか?
それなら創造神も、特別な存在ではない?
やはり王は特別な存在か。
もし違うなら、もっと気軽に……気軽に何だろう?
「大丈夫か?」
オウ魔界王の言葉に頷く。
別に創造神と言う地位を重く思った事はない。
この地位に就くことは、とても名誉な事なんだ。
そう、周りの者が言っていた。
創造神に選ばれた私は特別だから、他の神とは違う。
孤高で高潔。
そうだ、世界の王は高潔でなければならない。
だから、「私欲のために動いては駄目だ」と、教えられた。
そのためには、神国で起こっている事も我々が選別してから教えると。
「王とはいえ、欲望はある。だから高潔に生きるのは無理だろう」
えっ?
そうならないために、世界で起こっている事を見ては駄目なのでは?
翔呪界王は、世界で起こっている事を全て確かめているのか?
でもそうなったら、いつか自分のために動いてしまう。
「神国で求められるのは、高潔で無敵な創造神です」
そう、創造神になってから何度も言われた言葉だ。
だから、そうあろうと思ったんだけど。
「神だけの利益を追い求めて魔神を虐げてきた創造神達が、高潔なわけが無いだろう」
でもこれまでの創造神は、高潔で無敵だったと言っていた。
私の周りにいた神族と相談に乗ってくれた神が。
「それに、呪いを生んだのは神が起した行動の結果だ。そしてその行動を許したのは創造神だろう? どこが高潔で無敵なんだ。いや、これまでは無敵だったか?」
創造神が許した?
前の創造神は、呪いが生まれるような問題が起こっていた事を知っていたのか?
「どんな創造神になりたいんだ?」
私が求める創造神?
「頼れる存在に」
「『頼る』は、別の言い方をすると『面倒事を押し付ける』だよな」
オウ魔神王の言葉にカッとする。
「そんな!」
周りに言われたんだ。
頼られる創造神こそが今、求められている創造神だと。
確かに、神国は大きな問題を抱えている。
だから神達に頼られる存在になろうと。
私はフィオ神に「創造神になって欲しい」と請われ、この地位に就いた。
最初は、戸惑った。
でもフィオ神が、助けてくれると思った。
だから、大丈夫と。
でも、創造神になったら私の意見は誰にも届かなかった。
それは私を創造神と認めていないからだと思った。
聞いても答えてくれなかったが、彼等の雰囲気で分かった。
だから彼等の求める創造神になろうと思った。
自分勝手の正義?
「創造神は、頼られるまで神国にどんな被害が出たとしても放置した」
違う!
創造神には、世界で起こっていた事を全て知る事は出来なかった。
だって、周りが……あれ?
歴代の創造神は、俺と同じ環境だったのだろうか?
フィオ神が、今の俺の状態を知って周りにいた神族を排除した。
俺を守るために。
でもフィオ神は、一度俺を裏切った。
「好き勝手に暴れていい。ミルフィース神がなりたい創造神になれ」とフィオ神に言われた。
手助けするからと。
だから俺は創造神になったんだ。
でも実際に創造神になったら、フィオ神は……俺を助けてくれなかった?
違う。
俺が、周りにいる神族の排除に躊躇したんだ。
今までの創造神とかけ離れた存在になったら、認められないのではないかと不安に思ってしまったから。
そうだ。
この地位に就いたら、一気に不安に襲われたんだ。
今までの創造神の方がいいと言われたらどうしようかと。
「どうした?」
「えっ?」
心配そうな表情のオウ魔界王と翔呪界王。
「怖かったんです。今までの創造神と違うと言われるのが」
だから、俺の傍にいる神族の言う創造神になろうと思った。
それがきっと間違いだったんだ。
「まぁ、いきなり世界を動かす力を手に入れて、周りから特別な存在として扱われるんだ。怖くなって当然だろう。俺も、この地位を受け入れるのに少し時間が掛ったよ」
翔呪界王の言葉に、ふっと笑みが浮かぶ。
そうか、こんなに凄い神も怖いと思うのか。
なんだ、そうか。
「俺は怖いとは思わなかったな」
オウ魔界王を見ると、なぜか翔呪界王を睨んでいた。
それに首を傾げる。
「どうしてですか?」
「ふふっ、絶対に仕返しすると決意したから」
仕返し?
「マジか」
そう言えば、翔呪界王の部下に誘導されて魔界王になったと言っていたな。
「知らない間に周りを固められて気付いたら魔界王だ。仕返しぐらい可愛いもんだろう」
「ん~、お手柔らかに」
えっ、仕返しを認めた?
ははッ、本当に仲が良いな。
「あの、俺は……、俺らしい創造神になろうと思います」
正解ではないかもしれない。
でも、それでもいいや。
あれ?
オウ魔界王も翔呪界王も笑っている。
「『俺』が本来の創造神か?」
オウ魔界王の言葉に、少し前の自分を思い出す。
「……あっ」
神族の言う通り、話し方も変えていた。
でも、少し元に戻ってしまったみたいだ。
……まぁ、いいか。
「はい」
すみません、次回更新をお休みします。
次は6月9日です。
どうぞ、よろしくお願いいたします。
ほのぼのる500




