101.初めまして。
子供達が、恐ろしい挑戦をしていたので止めた。
何故、神国に遊びに行こうと思ったんだ?
いや、既に行ってしまっていた子もいたな。
全く。
ただ、子供達の挑戦のお陰で、結界が消えている今はかなり簡単に神国に侵入できる事が分かった。
しかも、通常の結界だけで、神達にバレずに神国を満喫できたらしい。
満喫……いったい神国で子供達は何をしてきたのか、知りたいような知りたくないような。
まぁ、今はそれが問題ではない。
俺にとって今の問題は、ロープからのお願いだ。
「会って、話をして下さいと言われてもなぁ」
どうやら隠れている神達の代表シーバー神と俺で、会う事になったらしい。
ロープの説明では、隠れていた神達と神族達は、今の神国の状況を知りたいそうだ。
「隠れている神達の代表と接触を試みてくれ」とお願いしたのは数日前。
それなのに、もうここまで進めたロープは、本当にさすがだ。
ただ、興味は湧いたが、あと1歩が踏み出せない状態らしい。
今までの事が頭をよぎるのか、信じたいけど怖い。
そのため、興味が湧いたのに外に出られない。
で、現状を打開するために俺が呼ばれたみたいだ。
何をするのかとロープに問えば、代表のシーバー神と会って話をして欲しいと言われた。
もしかして、説得しろという事だろうか?
「無理。絶対に無理」
どうしようか。
まぁ、既に会う準備がされているので、会う事は決定だ。
シーバー神という者が、どういう性格なのかは不明だけど、これまで神達や神族達を守って来た者だ。
かなり貫禄がありそうだよな。
「主」
「……はい」
精神体のロープから、声が掛かる。
逃げるわけにもいかないので、空中に視線を向ける。
「準備が出来たから、パネルを起動してね」
準備も早い、本当に優秀だ。
「分かった」
ナインティーンが作ったパネルを起動させる。
しばらく待つと、俺の子供時代の姿が映し出された。
ロープのこの姿は、まだ慣れないな。
「良かった。ちゃんと繋がった」
うん。
このパネルや通信装置を作ったナインティーンも優秀だからな。
それにしてもロープの後ろに映った場所が気になる。
どう見ても畑だよな。
収穫の途中だったのか、畑のあちこちにカゴが置かれている。
「では主、紹介するね」
はぁ、大丈夫。
「あぁ、よろしく」
俺の返事を聞くと、パネルからロープが消えて男性が映し出された。
それに首を傾げると、隣にロープが映った。
「彼がシーバー神だよ」
彼が、シーバー神?
ロープから高齢の為、神力が弱まってきている事。
そのせいで、星を守っている結界が弱まっている事を聞いている。
だから、前魔界王ボルチャスリのように白髪をイメージしていたけど……若い。
見た目では20代後半ぐらいだ。
アイオン神も見た目を自由に変えられると言っていたし、見た目で神は判断できないな。
「初めまして、今日は……お会いできて光栄です」
緊張した面持ちのシーバー神に、ほんの少し親近感がわく。
これでどんと構えられていたら、凄く緊張しただろうな。
「こちらこそ、お会いできて光栄です」
いや、これも緊張する。
「ありがたきお言葉に、感謝します」
んっ?
シーバー神を見ると、顔色が悪い。
これは、緊張で顔色が悪いのか?
「そんなに緊張する必要は無いので、気軽に」
「いえ。あなた様は、呪界王であらせられるので」
硬い。
うん、これは駄目だ。
「シーバー神」
「ひあ」
ひあ?
まぁ、気にしない方がいいな。
「大丈夫です。シーバー神が俺に何を言っても、それをとがめる事も、そのせいでその星を攻撃する事もありません」
落ち神や仲間の神達に、シーバー神は狙われていた。
そのせいで、その星に隠れる事になった。
そして今も、落ち神達に恐怖を抱いているんだったよな。
それならまずは、俺がシーバー神を害する考えがない事を分かってもらわないと。
「それは、本当ですか?」
まぁ、最初は信じられないよな。
「えぇ、本当です」
シーバー神の表情を見て苦笑してしまう。
これは、信じていないな。
でも、伝え続けたらいつか伝わるだろう。
……あぁ、違う。
信じてもらうように説得しないと駄目なんだったっけ?
「あのっ!」
急にシーバー神の隣に神? 神族? が映り込む。
「あっ、こら! 何をしているんだ。申し訳ありません」
「だって」
なんだろう?
随分と行動が若いような気がする。
「あの、本当に」
困った表情のシーバー神に、笑みを向ける。
「大丈夫。それより今の彼は俺に用事があったみたいだけど――」
「いえ、呪界王様が気にする事ではありません」
シーバー神が焦った表情で何度も頭を下げる。
でも気になるんだよな。
だって、騒いでいる声が聞こえているから。
「大丈夫だから、そんなに頭を下げる必要など無いし。それより、今の彼をこちらに」
正直、シーバー神と何を話していいのか全く思い付かない。
説得?
はははっ、出来る気がしない。
だから、時間を稼ごう。
「本当に宜しいのですか?」
「あぁ。大丈夫だ」
パネルに映った者を見る。
何処か、シーバー神に似ているような気がするな。
「初めまして! 俺はサービーと言います。神族です」
「初めまして。呪界王の翔です」
そう言えば、シーバー神とは自己紹介をしていないな。
お互いに緊張し過ぎて忘れていたみたいだな。
あっ、シーバー神も気付いたみたいで、唖然としている。
「シーバー神。自己紹介が遅くなったが、呪界王の翔だ。宜しく」
「えっ、あっはい。シーバー神と言います。一応この星を守っていまぅ」
ちょこちょこ緊張で言葉がおかしいな。
気付いていないふりを。
「まぅって」
あっ、こらサービー!
笑って指摘をしない。
「あっ。すみません」
「大丈夫だ」
サービーの態度に首を傾げる。
シーバー神の守る星では神と神族の間が随分と親しいんだな。
神国でこれまで感じたのは、神と神族の間にある明らかな壁。
神族は神に対して尊敬と畏怖。
そして、恐れが窺えた。
そのせいなのか、本当に親しくなければ、神族達は神に顔を見せる事も無い。
出会うと、ずっと頭を下げているそうだ。
神族達とのお茶会で聞いたけど、意地の悪い神だとずっと頭を下げさせているのだとか。
性格が悪過ぎる。
神族達も下手に顔を覚えられると面倒だからと意地でも顔はあげないそうだ。
お茶会ではどんどん赤裸々に話をするようになって、暴露される話も過激になっているんだよな。
「あの、この星を守ってくれるというのは本当ですか?」
不安そうなサービーに、頷く。
「あぁ、出来る限り守るつもりだ」




