83.協力しよう。
―カルアタ神視点―
アイオン神から連絡が来た。
まさか、命花の話をしてから僅か5日。
これほど早く連絡が貰えるとは思わなかった。
いや、もしかしたら呪界王に協力を断られたのかもしれない。
「どうぞ」
アイオン神の執務室の扉を叩くと、すぐに返事が返って来た。
……はぁ、答えを聞くだけなのに緊張してどうする。
断られたなら、他の方法で協力を求めればいい。
呪界王が求める物が用意出来れば、きっと協力してくれるはずだ。
出来たばかりの世界だから、色々な助言や必要な物があるはずだから。
「あれっ? どうぞ?」
あっ、しまった。
「失礼する」
落ち神になった元第1位の神が言っていたように「神は偉大」だと思っていた。
だが神達の現実を知り、そして罪に問われた神達の様子を見て「違う」のだと理解した。
罪が明るみになった時に見せた神達の行動は、本当にみっともなかったからな。
神は偉大でも何でもない。
長い間、ただ自分達の作った世界で愚かな行動を繰り返している存在。
「早かったな。こんなにすぐ、連絡が貰えるとは思わなかったよ」
アイオン神に薦められるままに椅子に座る。
そして彼女の隣に座っている存在に視線を向ける。
岩で出来た独特の形。
呪界王が作ったとされるゴーレムだろう。
……肩にゴーレムそっくりの人形?
かなり優秀だと聞いているけど、違うのかも。
あれ?
ここは神国だよな?
どうして呪界王の作ったゴーレムが、この世界にいるんだ?
「アイオン神が招いたのか?」
「いや、勝手に来た」
それは、非難してもいい事だよな?
でも、これから呪界王に協力を求める俺がそんな事をしていいのか?
……昔は自分の行動に自信があったんだが、現実を色々と知った今では難しいな。
「そうか。それで、話と言うのは命花の事で良いのか?」
「あぁ。翔に話をした。それで協力もしてくれる事になった。ただ、彼がこの世界に来ることは出来ないので、このリーダーが命花の状態を見に来てくれたんだ」
なるほど。
馬鹿な行動をとらなくて良かった。
「……」
「なんだ?」
アイオン神の視線に首を傾げる。
「いや、前も思ったけど……カルアタ神、良い方に変わったな」
そう、しみじみ言われると恥ずかしいんだが。
でも、その通りだろうな。
認めるのは、嫌だが。
「それより、今から命花を見に行くのか?」
アイオン神からゴーレム。
確か今、リーダーと言われていたな。
リーダーを見ると、こちらを観察するように見ている事に気付き少し居心地が悪くなる。
「あっ、失礼しました」
リーダーが少し頭を下げる。
「いや」
何だろう。
不思議な雰囲気を持つゴーレムだな。
「命花を見に行く前に、こちらからもお願いがあります」
お願い?
「神国の不利になるような事以外なら」
俺が最優先するのは、神国だ。
「分かっています。見て欲しい物があるだけです」
そう言うと、ゴーレムのリーダーが2つの石をテーブルに出した。
あれ?
いま、この石をどこから出したんだ?
バッグは持っていないよな?
「何か?」
「いや、なんでもない」
テーブルに置いてある2つから、右にある石を手に取る。
「ヒビが入っているんだな」
魔石か。
んっ?
魔石だと思ったけど、何か違うような気がするな。
「これが何か分かりますか?」
リーダーの言葉に、ヒビの入った石に神力を流してみる。
神力は石の中を流れ、ヒビから外に漏れた。
これは、魔石と同じ反応だ。
でも、どうしてだろう?
魔石だと思うのに、何か違和感を覚える。
「この石はどうしたんですか?」
「魔界で暴れている魔族と魔神達の体内から見つかった物です」
「魔族と魔神達の中から?」
「はい」
魔族も魔神も元は神と神族。
魔石が出て来るわけがない。
という事は、誰かに埋め込まれた?
もしくは、何か事情があって自分で埋め込んだ?
でも、どうして魔族や魔神の体内に魔石なんて埋め込んだんだ?
いや、待て。
魔界に魔石などあったか?
それに魔界で採れた魔石なら、神力を通すわけがない。
……神力を通したという事は、これは神国で採れた魔石だ。
神国にあるはずの魔石が、魔界で見つかった。
しかも魔族と魔神の体内から。
……ははっ。
「どうしましたか?」
「この魔石が、魔界で見つかった原因は神なんだな」
俺の言葉に頷くリーダー。
それに溜め息を吐く。
つまり、神が仲間に魔石を埋め込んで、魔界に落とした。
落とされた者達は魔族と魔神となり、魔界で暴れた。
「はぁ。魔石を埋め込まれた魔族や魔神はいつ頃見つかったんですか?」
これも落ち神が残した問題なのだろうか?
「今ですね」
今?
パッとリーダーに視線を向ける。
まさか。
「神国から、今もそれを埋め込まれた者が落とされて来るようです」
……はぁ。
言葉が出ない。
まさか、今もそんな愚かな事が続いているなんて。
「カルアタ神、大丈夫か?」
アイオン神の言葉に、苦笑する。
「大丈夫。それより魔石と言ったが、これは本当に魔石なのか?」
どこか、違和感を拭えない。
見た目も力を通した時も、魔石と同じ反応なのに。
俺の言葉に、リーダーが首を横に振る。
やっぱり違うのか?
「主に調べてもらったら魔石とはかなり似ているが違う物だと言っていました。でも、正体までは分かりませんでした。ロープも、これについては知らないそうです」
ロープ?
「昔の神々が作った魔幸石だ」
アイオン神の言葉に、そう言えばそんな存在がいた事を思い出した。
神々が、自分達を殺すために作り、実際に完成したら怖くなって封じた存在。
あぁ、昔から神というのは身勝手な存在なんだな。
「分かった」
手の中の物を見る。
呪界王が違うという以上は、違うんだろうな。
でもそれだったら、これは何なんだろう?
「カルアタ神」
アイオン神の言葉に、視線を向ける。
「この『魔石もどき』の調査をお願いしたい。カルアタ神の仲間に魔石に詳しい神がいたよな?」
いたな。
「分かった」
魔石もどきか。
「そういえば、この魔石……でいいか。魔石には、どんな力が籠められていたんだ?」
俺の言葉にアイオン神もリーダーも首を横に振る。
「分からなかったのか?」
「はい。ヒビが入ったため、力が完全に流れ出てしまったので分からなかったんです」
「そうか」
少しでも籠められた力が残っていたら、どの神が関わっていたのか分かったんだけどな。
おそらく、何かあった場合は籠めた力が全て流れるか使い切るように、魔法を付与していたんだろうな。
「では、私からのお願いは聞いていただいたので、命花を見せていただけますか?」
「あぁ、そうだな」
2個の魔石に現状維持の魔法を掛け、ポケットに入れる。
この調査は、あいつに丸投げで良いよな。
「私も行くから。一度自分の目で確かめたい」
アイオン神とリーダーを連れて、命花が咲く地下へと向かう。
「もしかしたら、呪いが発生しているかもしれないので気を付けてくれ」
「分かった」
その言葉にアイオン神が頷く。
リーダーを見ると何か考えている様子。
「リーダー?」
「いえ、呪いが発生しているなら、彼等に話を聞くのもありかと思いまして」
呪いに話を聞く?
えっ、そんな事が出来るのか?
「出来るのか?」
「私は無理ですが、この子なら出来るでしょう」
リーダーの手が、肩に乗っている小ぶりなリーダーに伸ばされる。
「あっ」
実はそれがずっと気になっていたんだよな。
どうして肩に、リーダーにそっくりな小型版が乗っているのか。
ふわっ。
目の前で小型版のリーダーが空中に浮く。
「へっ」
あれ?
今まで感じなかったけど、どうして小ぶりのリーダーから呪いの力を感じるんだ?
いつも読んで頂き、ありがとうございます。
魔神王と魔界王ですが、魔界王でまとめました。
読みにくくて、申し訳ありませんでした。
ほのぼのる500




