79.魔界用?
「「「「「ただいま~」」」」」
ウッドデッキでお茶をしていると、ケルベロスのテフォルテと子供達が魔界から帰って来た。
両手に色々な物を持って。
「皆、おかえり。テフォルテは、ありがとう。それで、それは何だろう?」
特に気になったのは、雷が持っている岩。
もしかして何か力が籠められているのかと調べてみたけれど、脅威を感じる力は無かった。
ただ魔神力と闇の魔力は感じたので、魔界の岩なんだろう。
「面白い物を持って帰ってきたね」
戸惑った表情でヒカルが言うと、雷が嬉しそうに笑う。
「良い岩でしょ」
岩の良し悪しは分からないけど、雷が楽しそうならいいか。
ただ魔界の岩が、この呪界でどれだけ保つかが分からない。
いずれ、岩の中にある力は変わっていく。
そうなってくると、形が崩れてしまうかもしれない。
「雷。呪界に置いておくと、形が崩れてしまうかもしれない。だから、結界で覆うか状態をキープする魔法を掛けた方がいいぞ」
「ん~、でもこの子は後で魔界に帰るから」
雷の言葉に首を傾げる。
この子?
帰る?
この岩、どう見ても普通の岩にしか見えないけど動くのか?
いや、調べても生きている物では無かった。
と言う事は……雷がおかしくなった?
魔界に行った影響か?
「こっちにもあるよ」
桜がバッグから、雷が持っている物と同じ大きさの岩を出す。
どうしよう、子供達が魔界の影響を受けたのかおかしくなってる。
「雷、桜。ちゃんと説明しないと、伝わっていないよ。主、この岩でゴーレムを作って欲しいの。魔界で魔族達をフォローする、サブリーダーみたいなゴーレム」
あっ、そういう事か。
今は岩だけど、ゴーレムになる予定だから「この子」で「帰る」のか。
良かった。
魔界は大丈夫と思って送りだしたのに違ったら大変だった。
「分かった。形はどんなのが良い?」
雷から岩を受け取る。
あれ?
この岩、ただの茶色かと思っていたら、緑や黒が混ざり込んでいるんだな。
これでゴーレムとか作ったら、ちょっと不思議な見た目のゴーレムにならないかな?
……まぁ、面白そうだから良いか。
「特に希望は無かったよ。でも魔族達は、サブリーダーを凄く慕っていたから、サブリーダーと同じ形でいいと思う」
へぇ、サブリーダーは魔界で慕われているんだ。
それはちょっと嬉しいな。
「分かった」
サブリーダーと同じか。
岩に力を……駄目だ。
俺の力で岩の形を変えると、呪界の力が岩に混ざってしまう。
岩の中にある力だけで、岩を加工できるかな?
岩の中にある力に、闇の魔力を使って少し刺激を与えてみる。
あまり力を使い過ぎないように、気を付けて。
少しだけ、少しだけ……おっ、力が反応した。
これを繰り返していけば……よかった岩が柔らかくなってきた。
これで自由に形が作れるな。
「出来た」
傍にいるサブリーダーを見ながら、岩の形を変え完成させる。
「うわ~、こんな色の出方になるんだ」
太陽の言葉に、確かにと頷いてしまう。
まさか、茶色の岩に黒と緑の紐が絡んでいるように見えてしまうとは。
これでいいのかな?
作り変える?
「この色の出方でいいのかな?」
「「「「「いいと思う」」」」」
子供達はどうやら気にいったみたいだ。
それならいいか。
「あとは、サブリーダーのように考えて動くゴーレムをイメージして……ゴーレム作製」
手の中の岩が一瞬光に包まれ、すぐに消える。
「出来たかな?」
完成したゴーレムを、テーブルに置く。
「おはよう……」
動かない、失敗したのかな?
あっ、起きた。
「おはようございます。これから魔界で頑張ります!」
拳を作ってやる気を見せる魔界用ゴーレムに笑みが浮かぶ。
良かった、成功。
残りの岩もゴーレムに変えると、全部で4体のゴーレムが出来た。
全て、色の入り方が違うので面白い。
1体なんて、頬に緑の渦巻きが出来てしまった。
子供達は「うずうず」と呼んでいるけど、良いのだろうか?
まぁ、ゴーレム達も特に気にしていないみたいなので良いか。
お茶を飲みながら、庭で子供達と遊んでいるゴーレム達を見る。
……遊んでいるというか、戦い方を子供達から学んでいるような気がするんだけど。
「あれは良いのか?」
近くで寝そべっているテフォルテに視線を向ける。
彼女は、ゴーレム達の様子を見て頷く。
「問題ない」
「魔界では、まだ争いが続いているのか?」
だから戦い方を学んでいるのかな?
「ちょっとおかしな事が起こっている」
おかしな事?
「どんな事だ?」
「魔界に現れた新たな仲間が、いきなり攻撃をしてくるんだ」
新たな仲間。
魔界で魔族や魔神が増えるのは、神国から追い出された者がいた場合だよな。
「混乱しているとかでは無くて?」
追い出されたショックで、敵と味方が分からなくなっているとか。
「それは無い。魔界に落とされた瞬間に、自分の身に何が起こったのか理解出来るんだ」
「そうなのか?」
「あぁ。それなのになぜか、新たな仲間の存在に気付いた魔族が迎えにいったら、姿を見せた瞬間に攻撃をしてきたそうだ」
テフォルテの言葉に溜め息が出る。
「神がまた何かしているのでは?」
「ははっ、そうかもしれないな。まぁここ数日は、オウ魔界王や側近の魔神達が、落ちた存在に気付くと、楽しそうに迎えに行っているから、原因はいずれ分かるだろう」
魔界のトップが迎えに行っていいのか?
まぁ、俺が指摘する事では無いか。
「そうなんだ」
「あぁ、実験体が手に入ったとオウ魔界王が一番喜んでいた」
実験が好きだからな。
これは、聞かなかった事にしよう。
「なるべく早く解決するといいな」
「大丈夫だ。最近の魔界はとても良い風が吹いているから」
良い風?
どんな風だろう?
「ただいま戻りました」
ダダビスの声に視線を向けると、魔物を狩りに行っていた獣人の騎士達が森から帰って来た。
いつの間にか、狩りに参加するようになった騎士達。
一段と体つきが良くなっているのが、羨ましい。
「おかえり。今日はどうだった?」
「まだまだですね。でもようやく皆で1匹を狩る事が出来ました」
俺の傍にいたテフォルテにちょっと驚いたけど、さすがに何度も会っているので慣れたみたいだな。
「手助けなしで1匹?」
「はい」
「それはおめでとう。凄いじゃないか」
今まではアリや蜘蛛、時にはダイアウルフ達の手助けが必要だった。
でも今日は、獣人の騎士達だけで狩りが出来るなんて。
「ありがとうございます」
ダダビスだけでなく、他の騎士達も嬉しそうだ。
「リーダー。今日はお祝いだな」
「はい。既に準備をしています」
さすが、抜かりないな。
「主、ゴーレム達が魔界に帰るって」
えっ、もう?
紅葉の言葉に、ゴーレム達を見ると既に準備をしているみたいだ。
「もう少しゆっくりして行けばいいのに」
「魔界ではまだまだやる事が多いからな。ゴーレム達が来てくれるなら魔族達は大喜びだ。主、ありがとう」
テフォルテの頭を撫でると、撫でていない2匹が不満そうな表情になる。
それが面白くて放置すると喧嘩を始めるので、両手で次々と3匹の頭を撫でる。
「また、遊びにおいで」
「ありがとう。また」
テフォルテが、4体のゴーレムと魔界に帰って行くのを見送る。
あれっ?
どうしてゴーレム達は、武器を手に持っているんだ?
「リーダー。あの武器は?」
「必要なので、あげました」
「……そっか」
まぁ、必要ならしょうがない。
たぶん。




