74.一緒に。
「どうして子供達を、魔界に行かせる気になったのだ?」
親玉さんの言葉に、少し考える。
子供達を預かった当初は、俺が守らなければと思うほど幼く見えた。
実際に、行動や考え方に幼さが窺えた。
でもそれは、本当に一瞬だった。
正直、こんなに早く成長するとは思わなかった。
まぁ、子供に見えるけど、実際は逆行しただけで違うからな。
「皆が、しっかりしているからだよ」
それに、周りの仲間達がしっかりとフォローしてくれている。
バッチュを始め、コアや飛びトカゲ達。
それに蜘蛛達やアリ達も。
「親玉さんを含め、仲間達のフォローもあるしな」
「そうか」
どこか嬉しそうな返事をする親玉さんに笑みが浮かぶ。
まぁ、フォローだけでなく、煽ったりもするからそれだけは気を付ける必要があるけど。
「魔界には、まだ敵が潜んでいるらしいな」
水龍のふわふわが、スッと俺の前に顔を出す。
それにちょっとビックリするが、頷く。
「そうみたいだな。なんでも、反発している魔族や魔神の大半が、異常な力を持っているそうだ」
「異常な力ね」
ふわふわの何かを含んだ言い方に、親玉さんと一緒に首を傾げる。
「どうしたんだ?」
「いや、異常な力を与えるのが得意な屑がいたと思って」
異常な力を与えるのが得意な屑?
ふわふわが屑というのは神達だよな。
でも力を与えるって……。
「あっ。ギフトの力も、魔法が無い世界からしたら異常な力と言えるのか」
俺の言葉に、親玉さんの気配が鋭い物に変わる。
いや、ここで怒ってもしょうがないから。
「落ち着け。もう過去の事だし、俺は勇者ギフトで随分と助けられたから」
「それならいいが」
納得していないと分かる雰囲気にちょっと笑ってしまう。
あっ、睨まれた。
「心配してくれて、ありがとう。ふわふわの言う通り、神なら異常な力を与えられるな」
でも神国と魔界では、世界が違う。
魔界で誕生した者に、神国から力を与えられるのか?
ん~……この答えは、呪界にいる俺では出ないな。
「ふわふわ。今の意見を、ドルハ魔神に伝えても良いか?」
彼に伝えておけば、オウ魔神が研究……するはず。
時間さえあれば。
丸投げになるけど、しょうがない。
「もちろん」
「ありがとう」
ふわふわの頭を撫でる。
寒くなり始めたから、鱗がちょっと冷たい。
「主~!」
翼の言葉に、視線を向ける。
そろそろ魔界から迎えが来るのだろう。
「どうした?」
翼に手を振ると、子供達の下へ向かう。
魔界に行くのが嬉しいのか、朝から皆のテンションが高い。
「あと10分で迎えが来るって」
「そうか。気をつけてな。それと、魔界はまだ復興している状況だと思うから、邪魔をしない事」
「「「「「はい」」」」」
いい返事。
「魔界でアリ達や蜘蛛達の活躍も聞いて来てくれ。あとはサブリーダー達の事も」
「調査だよね?」
月の言葉に苦笑してしまう。
鋭いな。
「そう。あの子達の事を信頼はしているんだけど、ちょっと暴走するからさ」
「分かった。しっかり見てくるから安心してね」
桜の言葉に、ちょっと心配になった。
桜も暴走する方だからな。
「うん。ありがとう」
でも、俺のために頑張ってくれているのは嬉しい……あれ?
「桜、その肩にいるのは……」
桜の肩に座っている、桜のミニチュア版を見る。
まさか一緒に?
「のろくろちゃんだよ」
そうだな、のろくろちゃんだ。
「もしかして、魔界に一緒に行くのか?」
俺の言葉に、子供達が頷く。
そして、子供達の後ろからこっそり顔を出すのろくろちゃん達。
可愛いな。
では無くて。
「のろくろちゃん達が、魔界に行って問題は無いのか?」
「大丈夫だと思うよ。サブリーダーと一緒にいる子が、魔界に行ってるから」
「えっ?」
紅葉の言葉に、驚く。
それは初めて聞いたんだけど。
「そうなのか?」
「最初は置いて行っていたんだけど、サブリーダーと一緒にいる子が、こっそり付いて行ったみたい。で、『一緒にいる~』て、魔界で大騒ぎしたらしいよ」
サブリーダーののろくろちゃんは、飛びトカゲの昔の姿なんだよな。
なぜあの姿なのかは不明。
ただ、完成品を渡したら、両手で上に持ち上げて感動していた。
もの凄く不思議な光景だったので、よく覚えている。
あの子が、魔界で大騒ぎ?
「知らなかったの?」
ヒカルの声に頷く。
ヒカルを見ると、ヒカルののろくろちゃんも肩に座っている。
ヒカルののろくろちゃんは、なぜか2頭身のヒカル。
可愛いけど、頭が重いのか時々おかしな動きをしている。
ヒカルも、一緒にいるのろくろちゃんも満足しているので変更はないらしい。
「魔界に行ったのろくろちゃんに、異変は起こってないのか?」
「大丈夫です」
この声はリーダーだな。
「そうか」
「はい。話すのが遅くなってすみません」
リーダーの言葉に首を横に振る。
問題が起きそうならすぐに報告するように言ったが、問題が無い場合はリーダーとサブリーダーの判断で好きにしていいと言ったからな。
「問題ないならいいんだ。サブリーダーののろくろちゃんは、魔界を楽しんでいるのか? というか、魔族達や魔神達の反応はどうなんだ?」
「サブリーダーののろくろちゃんは、魔界を楽しんでいます。そして魔族や魔神達は、そんなのろくろちゃんを、喜んで迎えてくれています」
リーダーの言葉にホッとする。
のろくろちゃん達は、今までつらい事が多かった。
だから、今からは楽しい事を思う存分経験して欲しい。
それにしても、魔族や魔神達が喜んで迎えてくれるのが不思議だ。
のろくろちゃんに触れてしまうと、呪われてしまうのに。
それなのに喜んで?
まあ、嫌われているよりはいいか。
「分かった。ありがとう」
「来た!」
太陽の言葉に、皆の視線が上空に向く。
「待たせたな」
「「「「「待ってました!」」」」」
ケルベロスのテフォルテと子供達の会話に、笑みが浮かぶ。
そこは「待ってないよ」だと思う。
ほらテフォルテが驚いているから。
「4日ぶりだな」
「そうだな。いらっしゃい」
目の前に来たテフォルテの頭を順番に撫でる。
皆、同じ回数撫でないと後で喧嘩になるんだよな。
「今日は、子供達をお願いするな」
「任せてくれ。あと、紹介したい者達がいるんだ」
紹介したい者達?
上空の空間が歪み、2柱の魔神……違う、魔族だな。
2人の魔族が、降り立った。
テフォルテの紹介だし、この世界に入れたので害は無い存在だろう。
「初めまして」
2人の魔族に声を掛けると、なぜか跪かれた。
「えっ、何?」
急な事だったので止める暇も無かった。
というか、何が始まったんだ?
「呪界の王。この度は我々を救ってくださりありがとうございます。魔族を代表して、お礼を申し上げます。これからは我々2人が、呪界王に仕えさせていただきます」
…………んっ?
今、もの凄く不思議な言葉を聞いたような気がする。
魔族を救った結界の事があるから、お礼を言われたのは分かった。
その後、「仕えさせて」とはなんだ?
とりあえず、
「お礼は嬉しいけど、仕える必要なんて無いよ」
すぐに、断ろう。
これは早い方がいい。
「それにしても、どうして仕えるなんて話になったんだ?」
魔神の指示?
でも、俺に仕えても得な事は無いよな。




