73. 葉っぱだけが凄い。
地下神殿の地下4階。
そこは一面の花畑に、なり損ねた状態にある。
青々とした葉は見事に成長し、今では地面が見えないほどだ。
「見事に葉っぱだけだよな」
ぐんぐんと葉は成長し、今では俺の背丈ほどになっている。
「いや、デカすぎるだろう」
この世界、何でこうデカくなるんだ?
まぁ、そんな事はどうでもいいんだけど。
気になるのは、葉は成長するのに花が咲かないという事だ。
葉がある程度成長すると、茎が伸びた。
茎の先は丸くなっているので、おそらく花になると思う。
だが、花をつけた茎がある程度伸びると、なぜかまた葉が成長を始めた。
正直、次は花が咲くと思っていたので残念な気持ちになった。
で、葉はどんどん成長し、成長を続け、今も成長を続けている。
葉は1株に2枚で、俺の背丈ほどあり幅がものすごく広い。
本当によく育っている。
というか、花が咲いて欲しい。
もう葉っぱは十分だから。
「主、やっぱり花は無いよ~」
妖精に花のチェックを頼んでいるのだが、今日も咲いていない様だ。
本当にいつ頃花が咲くんだろう?
「でも、1個だけ他とは違う物があったよ」
「えっ? どこ?」
「こっち~」
もしかして茎の先端の丸い物に変化があったのだろうか?
妖精の案内で、空中を移動しながら葉っぱの群集の中に丸い物を探す。
……成長した葉っぱのせいで見えない。
「これ!」
妖精が指した方を見る。
……ん~?
あっ、葉っぱの隙間から見えた。
ちょっと葉っぱを除けて……この丸いのだけ見ても違いが分からないな。
「他の物と見比べて見るか」
近くの葉っぱを除けて、茎を探す。
すぐに見つかると、茎の先端が見えるように葉っぱを除ける。
2つを見比べて……。
「確かに違うな」
妖精が教えてくれた方の茎の先のふくらみは、少し大きくなっている。
しかも、微かにだけど青く色づいているようだ。
「どう?」
「うん。成長したみたいだな」
「やっぱり!」
妖精の嬉しそうな声に、笑みが浮かぶ。
とうとう成長してくれた。
これでどんな花が咲くのか分かるな。
そっと、茎の先端にある丸い物に触れてみる。
「んっ?」
何だろう?
何か……花の蕾を両手で優しく包み込む。
やっぱり何か、感じる。
小さい、とても小さく弱い何かを。
「主?」
「んっ? いや、何でもない」
手を離し、蕾の様子を見る。
無造作に触ってしまったけど、特に問題は無いな。
良かった。
それよりも、さっきのあれは何だったんだろう?
花が咲いたら分かるかな。
「これから楽しみだな」
「うん」
地下4階の出入り口まで飛ぶと、地面に足を下ろす。
振り返り、成長した蕾を見つけた場所を見る。
ふわっと風が流れる。
「あっ、またこの香りだ」
花も咲いていないのに、なぜか優しい香りが漂う地下4階。
でもその香りの正体は、いまだに不明。
嫌な感じがしないので、大丈夫だと放置しているけど、調べた方がいいのかな?
ふわっ。
「まぁ、大丈夫だろう」
本当に優しい香りだよな。
「そうだ。魔石は……」
傍にある魔石に手を伸ばし、様子を見る。
「問題なさそうだな」
目の前で揺れる花には力が必要だと分かった時、魔石の強化を期待して力を籠めた魔石を使用した。
その結果は、見事成功。
強化された魔石を見つけた時は、本当に嬉しかった。
ただ1株1株成長するのに必要な力が異なるのか、魔石の力がなくなる時期が個々で違った。
でも今のところ、力を使い切った全ての魔石が強化されているので、大満足の結果だ。
まぁ、全てと言ってもまだ11個だけど。
でも、希望が持てたからいい。
100個ぐらい成功したら、魔石を使った魔力制御の方法を広めてもいいかな。
「それにしても、上手くいって良かったぁ」
この方法で出来なかったら、魔石を使わない魔力制御の方法を編み出さなければならなかったからな。
うん、本当に良かった。
妖精と別れて、家に戻る。
庭を見ると、魔神であるボルが子供達と一緒にいた。
魔神力と闇の魔力だけを通す結界が上手く出来たので、ボルは自由に出歩く事が出来た。
行動範囲に制限があった時は「大丈夫」と言っていたが、自由に歩き回れると知った時は嬉しそうだった。
「おはよう」
「おはよう。子供達は可愛いな」
「そうだろう?」
可愛いけど強いんだぞ。
もの凄く。
「何をしていたんだ?」
近くにいる紅葉に視線を向ける。
「魔神力と闇の魔力を使った攻撃方法が、どんなものか聞いていたの」
「その2つの力限定の攻撃方法?」
「うん」
紅葉の言葉に首を傾げる。
なぜ2つだけの力を使った攻撃方法を知りたいんだろう?
この世界では、必要ないよな?
「魔界の様子を自分の目で見てみたいの」
俺の様子を見て、紅葉が知りたい理由を教えてくれる。
「そうなん……えっ、魔界に行きたいのか?」
「「「「「うん」」」」」
まさか子供達全員?
ボルを見ると、少し困った表情をしていた。
これは、子供達が困らせてしまったみたいだな。
でも魔界か、問題が……あるのかな?
サブリーダーに聞く限り、魔界は落ち着いている。
ドルハ魔神に聞けば、魔界を包む力も安定したそうだ。
道具が作った結界内なら、敵から攻撃をされる事も無い。
ん~……遊びに行っても、特に問題は無いような気がするな。
「翔、悪い。魔界は見る所も無いし、環境が悪いと言ったのだが」
環境は良くなっているはずだから問題ないと思うが、見る物が無い?
それなら、遊びに行っても楽しくなくはないかな?
「でも、サブリーダーや蜘蛛達やアリ達が色々作っているんだろう? 見る場所は、絶対にあると思う」
雷の言葉に、子供達が頷く。
確かに、あの蜘蛛達やアリ達だ。
絶対に色々やっていると思う。
しかも、元々何もない所らしいから……えっ、もしかしてやりたい放題?
「それは大丈夫なのか?」
「主?」
俺の言葉に、首を傾げる雷。
それを笑って誤魔化す。
そうだ、あの子達はちょっと暴走する癖がある。
そしてそれを纏めるサブリーダーは、止めないよな。
やばい、監視は……俺は無理だな。
この世界の王になったために、他の世界へは行けない。
となると……子供達を見る。
「暴走している蜘蛛達やアリ達を止められる?」
「「「「「無理」」」」」
だよな。
うん、無理だ。
「待て、翔。まさか子供達を魔界に行かせるつもりか?」
「駄目かな? だってオウ魔神も来るしドルハ魔神も来ているから、逆にこっちから……既にこっちからも仲間達がお邪魔していたな。えっと、監視は、無理か。あっ、社会勉強をしに行くのに丁度いいだろう」
「……いや、えっ、社会勉強?」
困惑した表情のボルの隣で、子供達が期待する表情を見せる。
「ドルハ魔神が来た時に、魔界の様子を詳しく聞くよ。それで問題が無さそうなら、サブリーダーの手が空いている時にお願いしようか」
子供達の話から、サブリーダー達が魔界でどれほど暴走しているか分かるだろう。
魔界に住む者達に迷惑を掛けていなければいいけど。
あっ、ドルハ魔神に苦情が出ていないかも聞いておこう。
「分かった、ありがとう。テフォルテからも誘われていたんだ」
ケルベロスのテフォルテから?
そういえば、ここ最近は魔界の仕事が忙しいと、子供達を連れて魔界に戻っていたな。
「そうだったんだ。でも、魔界に問題が起きていたら、無理だからな」
「「「「「分かった」」」」」
「大丈夫なのか? この子達は、まだ子供だろう?」
ボルの不安そうな表情に苦笑する。
「この子達は強いから大丈夫だよ」
サブリーダーも一緒だしな。




