45.予定通り?
―サブリーダー視点―
予定外の事が起こりましたね。
まさかボルナック魔神を招く事になるとは、想像すらしていなかったです。
地下牢で助けたシルシファリアが導いてくれた縁ですね。
この縁を、無駄にしないようにしなければなりません。
なぜなら、彼の力は見逃せないですから。
オウ魔神が魔界の王になった時に、彼の力は必ず役立ってくれるでしょう。
彼にはそれだけの力があります。
それにしても、ドルハ魔神は愚かな判断をしたものです。
まぁ、所詮その程度の存在だったという事でしょう。
力だけでは、魔界を治める事は出来ない事を知らないんでしょうね。
しかし、主の目指した通りになっていますね。
魔珠宝で恩を売る。
シルシファリアを助けた事で、ある程度の恩は売れたでしょう。
彼女が亡くなったと知ったら、自らの死を望むほど彼女を愛しているようですから。
でも、それだけでは不十分だったでしょう。
オウ魔神の為に働いて貰うためには、彼自ら膝を折るような恩を売っておくのがいいでしょう。
そう例えば、諦めていたシルシファリアと共に生きる人生とか、ね。
きっとこれ以上の恩は、今の彼には無いでしょう。
それにしても、この魔界の感情と言う物は不思議です。
魔界の魔神力は、負の感情を揺さぶる力を持っています。
と言うか、その力しかありません。
なので、誰かを愛するという感情は生まれないはずなんです。
それなのに、魔界に住む者達は、誰かを深く愛する傾向にあります。
その傾向が強く表れるのが、力の強い者達。
つまり魔神達なんです。
まぁ長い人生なので、途中でその愛する人が変わる事はありますが。
魔界を調べていて、これが一番不思議なんですよね。
何処から愛情が生まれるのか。
しかもその愛する者の力など全く気にしません。
この力こそが全ての魔界なのに。
そのせいで、ボルナック魔神達のように触れ合えない者達もいるようですが。
「サブリーダー? もしかして、彼等を住処に連れて行くのは反対だった?」
えっ?
親アリさんに視線を向けると、少し不安そうにしています。
なぜそんな、不安な面持ちなのでしょう?
……あっ、俺がずっと考えこんでいたせいですか?
「そんな事は全くありません。彼等に魔珠宝を使ってもらうのですから、絶対にありえないと思いますが、もしもの事を考えて住処に来てもらうのは当然の事です。経過報告の為に、近くで様子を観察する必要もありますからね」
「良かった」
親アリさんを無駄に不安にさせてしまいましたね。
「そろそろ着きますね」
地下道には色々な魔法が、壁や地面、天井に組み込まれています。
敵が地下道に入った時の為の対策です。
その1つが、視覚に対する阻害魔法。
この魔法のお陰で、地下道に続く広い空間を隠す事が出来ています。
まぁ地下道に入り込んだ者がまだいないので、本当に大丈夫なのかはちょっと分かりませんが。
……ちょっと不安ですね。
住処になっている場所に入り込まれるのは駄目ですが、どこか別の場所で実験するのはいいかもしれません。
魔神に追随している魔族たちが、力の強化に利用できる魔族たちを探し回っています。
彼等を地下道に誘導して、阻害魔法がしっかりと機能するか試してみましょうか?
「実験は重要ですよね?」
「サブリーダー、どうしたの?」
「地下道の阻害魔法が、しっかりと機能するのか確かめたいと思いまして」
「あぁなるほど、阻害魔法の実験か。それなら阻害魔法だけじゃなくて、地下道に組み込んだ全ての魔法を試したいな。あ、それなら実験用の地下道を新たに作って、そこで試すのはどう?」
新たに、実験するための地下道を作るのですか?
しかも阻害魔法以外の魔法も?
「新たに作るのは、手間になるのではありませんか? それに、他の魔法の実験は必要ですか?」
俺の言葉に、首を横に振る親アリさん。
「手間と感じる仲間はいないよ。今まで楽しんでいた遊びが終ってしまって、悲しいぐらいだから。それと面白半分で組み込んだ魔法があるから、実際にどんな動きをするのか見てみたいんだよね」
確かに、アリ達は本当に楽しそうに掘ってましたね。
しかし、面白半分で組み込んだ魔法?
それについては、報告されていませんね。
「確かに実験が必要そうですね」
数種類の魔法を同時発動するようにして、大爆発を起こした事がありますからね。
確かにあの時、面白半分で挑戦したと言っていた気がします。
早急に実験が必要かもしれません。
「はははっ、それほど無謀な魔法は組み込んでないよ………………たぶん?」
なるべく早く、実験を行いましょう。
「新たに作る地下道の場所ですが、候補はありますか?」
「ん~場所かぁ。必要な場所とその周辺には、既に地下道があるから。あとは……実験するなら、ある程度の広さがないと駄目だよね? どこかに残っていたかな?」
かなり広範囲で地下道を作りましたから、広さがある場所を探すのは難しいかもしれませんね。
どうしましょうか。
「俺の管理している城の地下はどうだ?」
ボルナック魔神の言葉に、親アリが少し困った雰囲気になりましたね。
もしかして。
「あぁ、無断でごめん。あの場所には既に地下道が作られているんだよね」
やっぱり、既にありましたか。
「えっ!」
親アリの言葉にボルナック魔神がかなり驚いた声をあげましたが、何故でしょうか?
そんなに予想外の事だったでしょうか?
「城の地下には、かなり高度な魔法が掛かっていたはずだが」
そうだったんですね。
だから地下道があると聞いて、あれほど驚いたのですか。
「あぁ、確かに少し面倒な魔法が掛かっていたかな」
少し面倒?
アリ達がそう評価する魔法は珍しいですね。
いったいどんな魔法が掛けられていたんでしょうか?
「少しだけ?」
ボルナック魔神が唖然としていますね。
地下に掛けた魔法に、かなり自信があったという事でしょうね。
これは、気になる。
あとで親アリ達に確かめてみましょう。
「そうか」
ん~、親アリの対応に衝撃を受けたみたいですね。
少しフォローが必要でしょうか?
「そんなに落ち込むことはないよ。ギュア魔神とドルハ魔神、それにゴルア魔神が掛けた魔法よりかなり手間取った魔法だったから。まあ、オウ魔神の魔法よりは、ちょっと簡単だったけど」
これは、フォローなんでしょうか?
でもフォローなら、最後のオウ魔神についての情報は必要無いですよね?
ボルナック魔神をそっと窺います。
オウ魔神より簡単だと言われましたが、ショックを受けている様子は無いですね。
かなり複雑そうな表情ではありますが。
「ここですね」
俺の言葉に、ボルナック魔神が首を傾げていますね。
という事は、この場所の阻害魔法が上手く機能しているという事ですね。
壁に手を付き、魔力を流す。
「あっ」
スッと、現れる大きな扉にボルナック魔神が、数歩後ずさる。
別に、怖くないと思いますが、どうしたんでしょう?
原因は扉ですよね?
扉には蜘蛛達が描かれていますが、それぐらいです。
問題ありませんよね?
「ただいま戻りました」
仲間達を見るとホッとしますね。
あっ、魔族たちがボルナック魔神を見て震えていますね。
「ボルナック魔神、魔族を虐めていましたか?」
「えっ? いや」
慌てて首を振るボルナック魔神を見る。
嘘をついているようには、見えないですね。
「あの、彼は魔族を無暗に殺したりはしません。もちろん虐める事も」
シルシファリアの言葉に、頷く。
「分かりました」
とりあえず、今は様子見ですね。
ただ力の差で、震えているのかもしれませんし。




