41.とりあえず試そう。
「駄目か……」
手の中にある魔石を調べ、ため息を吐く。
魔石に、僅かな力を入れる事には成功した。
イメージした水滴をどんどん小さくしていって、なんとか求めている量を魔石に入れられた。
ただ、求めていた結果にはならなかった。
空の魔石に、僅かな力を入れても魔石は強化されなかったのだ。
駄目なら他の方法をと思い、色々と試してみた。
魔石に大量の力を入れて必要な量まで力を無理やり抜いてみたり、魔石に入れた力を魔法の発動で必要な量まで消費してみたり。
とにかく頑張ったが、どれも求めた結果にはならなかった。
そこで強化された魔石について、リーダーに話を聞いてみた。
分かった事は、俺が力を籠めてから1ヵ月は放置されていた魔石だったという事。
また、籠められた力を使いきるまでに4ヵ月はかかったという事だった。
と言うか、籠めた力を使い切った魔石が少なかった。
俺は魔石に、籠められるだけ力を籠めていた。
そのため、使い切るまでにまだまだ時間が掛るそうだ。
リーダーから話を聞いて「魔石に籠めた俺の力が、ある程度魔石に留まっていないと駄目なのではないか」と考えた。
いろいろ試した魔石は、この場で俺が力を籠めた魔石だ。
魔石の中に力が留まっていた時間は短い。
そこで、俺の力を籠めてから6ヵ月の魔石から力を抜いてみたのだが、魔石は強化されなかった。
ただ、魔石の一部分に微かだが俺の力が残っていた。
これが魔石全体を覆っていたら求めた魔石だったのに、残念だ。
「6ヵ月と言う期間は問題ないよな」
リーダーに聞いた話から、5カ月でも魔石は強化されていた。
となると、力の抜き方に問題があるのか?
魔石が強化されていたのは、力を使用し終えた魔石だ。
もしかして、無理矢理抜くのが駄目なのかもしれない。
「実際に試してみるしかないよな」
そのためには力が籠められた魔石が必要だな。
今手元にあるのは、力を籠めてから2ヵ月と4ヵ月放置した魔石か。
この2個の魔石は、籠められている力もそれほど多くないから実験に使うには最適だろう。
まずは、この魔石は優先的に何かに使ってもらおう。
確実に使ってくれるのは、道具を作っているセブンティーンとナインティーンの所だな。
毎日、道具の動作確認を行っている。
あそこの道具は不安定な物もあって、魔石に籠められた力を大量に使う事もある。
とりあえず、全て預けて結果を待つか。
あとは……魔石に籠められた期間がどれくらい必要なのか知りたいよな。
5か月以上は確実に魔石が強化出来るので、それ以下。
2ヵ月、4ヵ月は実験をするからもっと短い期間の物を試したいな。
「10日単位で調べてみるか」
空の魔石を用意して、籠める力の量は……3種類作るか。
必要な魔力量より少し多めと、必要な量の3倍の量。
3種類目は10倍の量。
「それぞれ10日後に使用を始める魔石が3種類。20日後に使用を始める魔石が3種類。30日後に使用を始める魔石が3種類、と。出来た」
全部を棚に置いて、紙でそれぞれの違いを注意書きして、魔石の下に敷いて。
「これで準備は完了」
ただし、この方法が上手くいった場合は、ある問題に悩む事になるだろうな。
魔石を保管する部屋の隅を見る。
そこには、大量の魔石が置いてある。
全ての魔石に、俺の力を籠める事は簡単だ。
ただ、籠めた力を消費する方法を考えなければならない。
今回は、数がそれほど多くないので何とか使いきる事は出来ると思うけど、この世界に必要な数を考えると……無理だ。
「まぁ、これが成功するとは限らないからな」
あとの事を考えると、成功して欲しいのか失敗したいのか分からないな。
いや、魔石の強化方法を見つけないと駄目だから成功して欲しい。
ただ、先を思うとな……。
「主。ただいま戻りました!」
んっ?
この力は、サブリーダーか?
魔石の保管場所となっている地下の空間。
そこに、魔界に行ってなかなか帰ってこなかったサブリーダーの姿があった。
「お帰り。魔界での生活に問題は無いか?」
そういえば、2個目の魔珠宝を試してもらっていたんだった。
結果は出たかな?
「はい、全く問題ありません。ようやく、地下が落ち着いたので報告に戻って来ました。あと、魔珠宝ですが、上手く馴染みました」
地下が落ち着いた?
前に会った時に、掌握したと言っていたけどな?
でもまずは、魔珠宝が気になる。
「そうか、上手くいったんだ。良かった。サブリーダーから見て、1個目と2個目の魔珠宝に異なる部分はあったか?」
俺の言葉に首を傾げるサブリーダー。
何かあったのだろうか?
1個目と2個目には、馴染むまでの期間にそれほど違いは無いように感じるけど。
「特に思い当たる事はありません。ただ、異様に元気です」
んっ?
異様に元気?
「それは、俺が作った魔珠宝が原因なのか?」
「どうでしょうか? たぶんですが、魔珠宝の影響もあると思います。ですがそれ以上に、食事が影響している気がします」
食事?
「魔界の食事は、なんというか言葉では言い表せない物でした」
そういえば魔界の食事は、毎日同じ物だと、オアジュ魔神が言っていたな。
それを聞いて、かなりビックリしたのを覚えている。
だってオアジュ魔神は長生きだ。
なのに、ずっと同じ食事だ。
ありえないだろう。
「今回、魔珠宝を試した者達は、私が料理を教えた者達なんです。なので、魔珠宝を試す前から、少し変化が起こっていました。何というか……少しずつ陽気になっていったというか」
陽気?
まぁ、負の感情を揺さぶる魔神力が充満している世界だからな。
そこに住むだけで、憂鬱な気分になるだろう。
それが、この世界で作った野菜や肉で料理をして食べたら、どうなるか。
負の感情を揺さぶる魔神力の影響が、薄れるんじゃないか?
オアジュ魔神も言っていた。
この世界に関わるようになってから、家族を守ろうという気持ちになったと。
それなら陽気になったとしても、おかしくは無い。
「その状態で魔珠宝を取り込んだので……一気に……」
一気に?
えっ、どうしてそこで言葉を止めるんだ?
「ん~、箍が外れた感じでしょうか」
「えっ? その状態で、こっちに来て大丈夫なのか」
凄く不安を感じるんだが。
「それは大丈夫です。凄く主に感謝していましたから。主の為に役立つことをすると叫んでいました」
それは、本当に大丈夫なのか?
不安を感じるんだけど。
「サブリーダーが大丈夫と言うなら信じるよ」
俺の言葉に嬉しそうな雰囲気になるサブリーダー。
「それで、彼等はいつ頃こっちに来るんだ?」
「それについて、彼女からお願いがあるのですがいいでしょうか?」
お願い?
って、オアジュ魔神の次の子供は女性だったのか。
意図的に名前を言わないようにしているみたいだけど、性別は教えて良かったのかな?
「あぁ。どんな願いだ?」
「彼女の知り合いに、魔珠宝を授けて欲しいそうです」
知り合い?
まぁ、問題がない人物だったら特に拒否する必要は無いよな。
「知り合いと言ったけど、どんな人物達なんだ? それにまだオアジュ魔神の子供が残っているよな?」
「魔神ドルハによって地下深くにある牢屋に囚われていた者達です。どうやら魔神ドルハは彼等を使って力の強化をしようとしていたようです。方法は今調査中です。オアジュ魔神殿の子供達には、待ってもらうよう彼女がお願いしていました」
力の強化。
しかも魔人達を使って。
嫌なイメージしか浮かばないな。
「囚われていた者達は、既に助け出したのか?」
「はい。親アリ達が牢から出して連れてきました」
「そうか。親アリ達によくやったと言っておいてくれ」
自分で言いたいけど、あの子達全く帰って来ないんだよな。
ちょっと戻って来る時もあるみたいだけど、すぐに魔界に行ってしまう。
「分かりました。皆喜びますよ」
「そうか」
……あれ?
魔界の地下道ってもしかして、アリ達が作ったのか?
リーダーが「新しいおもちゃ」と言っていたのは、魔界の地下道の事なのか?




