40.ようやく。
「主、遅くなってすみません。呼んでいると聞いたんですが、なんでしょうか?」
「サブリーダー!」
2個目の魔珠宝が出来たので、サブリーダーに魔界に持って行ってもらおうと思って、既に3週間。
その間ずっと、サブリーダーの姿を見かける事は無かった。
リーダーにサブリーダーの事を聞くと、魔界で重要な作業中との事。
邪魔をしてはいけないと帰ってくるのを待つことにしたのだが、まさか3週間も帰ってこないとは思わなかった。
「おかえり。問題は無かったか?」
「ただいま戻りました。はい、大丈夫です」
あれ?
ここで魔珠宝を渡したら、また魔界へ行く事になるのかな?
久々に帰って来たんだったら、少しゆっくりしたいよな?
「えっと、魔界での作業は終わったのか? と言うか、何をしていたんだ?」
リーダーに聞くと、詳しい話はサブリーダーに聞いて欲しいと言われた。
なんでもリーダーも今回の事に、あまり関わっていないそうだ。
「はい。魔界の地下道を開拓してきました。そして2日前に、完璧に地下を掌握できました」
魔界の地下道の開拓か。
そうか。
いや、何のために開拓したんだ?
えっというか……しょうあく?
しょうあくって、まさかあの掌握?
つまり、ここ数週間で地下道を手に入れたのか?
「えっと、大変だったよな。お疲れ様」
地下道を手に入れてどうするんだ?
必要だったんだろうけど……隠れ場所か?
「サブリーダー、怪我はない? 協力してくれた子達も、元気かな?」
「大丈夫です。皆も凄く楽しんでいました」
「そうか。それは……よかったよ。うん」
地下道を掌握するのを楽しんだのか?
いったい、魔界でサブリーダー達は何をしていたんだ?
「それで、主。用事があると聞いたのですが、なんでしょうか?」
「あぁ、それは。また今度でいいよ。戻って来たんだから、少し休憩が必要だろう?」
「えっ? またすぐに魔界に行く予定ですが?」
えっ?
また、すぐに行くの?
「何をしに?」
もう地下道は全て掌握したんだろう?
まさか、他にも掌握する場所があるのか?
と言うか、魔界にこんなに簡単に出入りして問題は無いのか?
「料理を教えに行くんです。既に魔界に持って行った食材は使い切ったので、今日は食材を取りに来ました」
「……料理?」
えっ、魔界で本当に何をしているんだ?
「オアジュ魔神の子供の1人が料理に嵌りまして、教えて欲しいと言われたので教えているところです。ですが野菜も洗った事が無い者に、料理を教えるのは思ったよりも手間がかかるものなんですね。でも、面白いです。次に何を始めるのかワクワクしながら観察しています」
いろいろと、気になるところがあったな。
うん。
とりあえず、分かった事はオアジュ魔神の子供の1人が料理に嵌ってサブリーダーに教わっていると。
サブリーダーは、彼か彼女か知らないが料理をしているところを観察している。
そこは、「見守っている」で、いいんじゃないか?
いや、違う。
気にするとこはそこじゃない。
いや、何を気にすればいいんだ?
……思ってもいなかった話を聞いて、ちょっと困惑しているな。
「主?」
「あぁ。2個目の魔珠宝が出来たんだ。だから持って行ってもらえないかと思ったんだけど」
料理が好きなら習いたくなるものだ。
うん、だから気にしてもしょうがない。
サブリーダーが魔界に戻るなら、持って行ってもらおう。
そろそろ次の魔珠宝が出来そうだからな。
オアジュ魔神に話を聞くと、魔界より早く魔珠宝が出来るそうだ。
これなら、魔界が落ち着くまでにそれなりの数の魔珠宝が出来ているだろう。
それら全てが使える物になるのか、今のところ不明だけど。
「2個目が出来たのですね。首を長くして待っているので良かったです」
「そうなのか?」
「はい」
待ちわびてくれているのは嬉しいが、ちゃんと言っておかないとな。
「サブリーダー。魔珠宝だけど、今回の物が1個目と同じ結果になるかは分からない。もしかしたら最悪な結果になるかもしれない。それをちゃんと説明したうえで、使うかどうか判断して欲しいと伝えて欲しい」
どうして、俺の話を聞いて不思議そうに首を傾げるんだ?
言っておくが、魔珠宝はまだ2個目。
何が起こるかまだまだ未知数なんだぞ。
「きっと大丈夫だと思いますが。だって主の力が詰まっている魔珠宝なのですから」
そう言ってくれるのは嬉しいけどな。
「きっとじゃ駄目なんだ。数を試して、『絶対に大丈夫』に、しないと」
「ん~、分かりました。2個目を試す魔人には、ちゃんと説明します」
「あぁ、頼むな」
持っていた魔珠宝を、サブリーダーに渡す。
どうか、1個目と同じ結果になりますように。
「サブリーダー。これを」
「あっ、リーダー。ありがとうございます。用意してくれたんですね」
サブリーダーが、リーダーの持ってきたバッグを受け取る。
きっと色々な食材が入っているんだろうな。
……野菜か。
あ~、今回の収穫は前回以上に大変だったよな。
まさか家の周辺の収穫が終ったら、新しい大地に作った畑の収穫に向かうとは思わなかった。
しかも、家周辺の畑の倍の広さとか、聞いてない!
いや、上空を飛んでいる時に、異様な広さの畑が見えたので、考えればわかる事だった。
「調味料も全て入れたので、いろいろと挑戦できるはずです」
「ありがとうございます。では、行ってきます!」
あ~、声が弾んでる。
魔界に行く事を楽しんでいるみたいだな。
「行ってらっしゃい」
「気を付けて下さいね。魔珠宝の結果は、出たらすぐに教えて下さい」
リーダーの言葉に、力強く頷くサブリーダー。
「分かりました。では」
サブリーダーの体が、ふっと目の前から消える。
魔界に行ったようだ。
「主」
消えた場所を見ていると、リーダーがこちらを見た。
「どうした?」
「魔石の用意が出来ました」
「あぁ、ありがとう」
クウヒに魔力の事を聞いた後、空の魔石を使ってごく少量の魔力を魔石に溜める練習をした。
結果、無理!
どんなに量を減らしても多すぎてしまう。
なので、魔石の準備が出来ても、俺の方が駄目。
なんとかしたいんだが、どうすればいいのか。
「こちらです」
リーダーについてくと、保管場所になっている洞窟の最下層に来た。
そしてある一室に案内された。
「あっ……そうか」
室内に入って、俺は自分の考えが甘かった事に気付いた。
どうして魔力を溜める魔石が、数十個だと思ったんだ?
そんな事が、あるわけないのに。
「世界中で魔法が使えるようになるって、分かっていたのにな」
この世界は、魔法が使える環境になる。
つまり、この世界の住人は全て魔法が使えるようになるという事だ。
そしてそのほとんどの人に、魔石が必要なのだろう。
「凄い数だな」
目の前には膨大な数の魔石が、山のように積みあがっている。
「これは第一弾です」
ははっ、第一弾かぁ。
そうか。
「お願いがあるんだけど」
「はい。なんでしょうか?」
「空の魔石に魔力を少しだけ溜めようとするんだけど、どうしても多くなってしまうんだ。何処かで多すぎる魔力を使う事は出来るかな?」
俺の言葉に少し考えるリーダー。
そんな難しい事を言ったかな?
「魔石を使いたい者の家で、必要になるまで通常の魔石として使用してもらうとか」
「それは無理です」
無理?
「主の魔力は澄みきっていて濃いです。そのため、各国で使っている道具に使用すると、道具が壊れます」
マジで?
あっ、獣人達が持ってきた道具が俺の力で壊れた事があったんだった。
あれは俺の力が濃いせいだったよな。
最後の手段で、余分な魔力を使ってもらおうと思ったのに残念。
「それと、主の魔力はほんの少しで数年は使えるようになるので、必要な時に間に合わないと思います」
俺の力は省エネなんだな。
それにしても、困ったな。




