38.収穫と魔法
「収穫だ!」
色々あり過ぎて忘れていたけど、今は秋!
と言うか、呪いの世界に移動した時に、季節の流れが止まっていたみたいだ。
農業隊から「季節がおかしい」という報告を受け、俺が季節を意識した瞬間に動き出した。
一瞬、何が起こったのか分からなかったが、調べてみると俺は季節さえ自由に出来るようになっていた。
「俺の力が、俺の想像を超えていて怖い」
そう思った俺は、自分の力について詳しく調べた。
前に、魔法を使用しなくても、この世界の事なら全て見る事が出来ると分かった事がある。
でも、それ以上の事を知ろうとは思わなかった。
なぜなら必要性を感じなかったから。
でもそれでは駄目だと、今回の事で実感した。
特に、何が出来て、何が出来ないのか。
これは絶対に分かっていなければならない。
知らない間に、大きな問題を起こしてしまう可能性があるのだから。
そして調べた結果、俺は全てに干渉、修正、変化、消滅が可能だと言う事が分かった。
正直、それを知った時は寒気がした。
なぜなら、俺に何か起こった場合の影響が計り知れないから。
でも、怖がってばかりいては駄目だ。
そう思ったので、俺は一つ目のリーダーとサブリーダー、農業隊のリーダーであるファースト、飛びトカゲ、コアに相談した。
さすがに俺1人では抱えきれなかった。
彼等は俺を信じていた。
その力を負の感情で使う事は無いと。
もちろん俺もそのつもりだ。
でも、神を見ていて感じた事だが、時間は残酷だ。
そして俺は、今では呪国の王だ。
どれだけの時間を生きるのか、全く分からない。
もしかしたら途方もない長い時間を生きる事になるかもしれない。
その長い時間は、神達が歪んでいったように、俺を歪めるかもしれない。
それが、俺の心配なのだ。
リーダーや飛びトカゲ達は、俺の心配を理解してくれた。
そして考えてくれている。
俺がおかしくなった時の対処法を。
今はまだ、どんな対策が取れるのか分からないが、何かあった時のために準備は必要だ。
俺は、アイオン神やオアジュ魔神にも、何か対策が出来ないか相談した。
2柱はかなり難しい表情をして、俺の力が問題だと言った。
どうやら、俺の力はかなり特殊な物になっているそうだ。
そのせいで、呪国を治められる次の王が誕生するかも危ういらしい。
皆を守りぬいた力なので、今までの行動に後悔はしない。
でも、もう少しこの世界は俺に優しくてもいいと思う。
本当に!
まぁ、俺が歪んでおかしくなるとしても、それはもっと未来の話。
今、その不安を募らせても意味がない。
大切なのは、今を大切に生きる事。
「主は、奥にある畝をお願いします」
だから、今は収穫を頑張る。
「分かった」
農業隊のファーストに指示をもらい、受け持った畝に向かう。
担当は、じゃがいも系の野菜のようだ。
土を掘り返すのが大変だけど、畑に魔法はご法度。
「頑張りますか」
野菜を傷つけないように気を付けながら畝に鍬を振る。
久々なので、ちょっと緊張する。
「それにしても、未だに収穫しか手伝わせてくれないんだよな」
時間が空いている時に、手伝わせて欲しいと農業隊にお願いするが、1回も許可が下りない。
これにはちょっと不満だ。
力を、抑え込む事が出来るようになったのに!
いや、待った。
魔神力だけで作った魔珠宝も、元の魔珠宝とは異なる性質を持っていた。
あれはもしかしたら、他の力の影響を受けた可能性があるのでは?
という事は、抑えこめていると思っているけど、実際は抑えこめていないのか?
えっ、マジで?
「収穫が終ったら、しっかり力を制御できるように訓練しようかな?」
いつまでも垂れ流していては……いや、駄目だ。
今は、俺の力に合うように世界がゆっくり変化しているんだった。
訓練するのは、変化が終わった後だな。
「終わった」
と言っても、今日の収穫が終わっただけ。
明日からも、収穫はまだまだ続く。
「さてと、この時間なら夕飯を作っている最中だよな。手伝いに行こうかな」
まぁ手伝いと言っても、最近は俺より一つ目達の方が料理上手だからな。
配膳ぐらいなら、手伝えるかな。
「あっ、子供達が既に手伝っているのか」
それだと俺に出来る事は無いな。
あとは……あれっ?
ウッドデッキに獣人達が集まっているけど、どうしたんだろう?
「クウヒも一緒みたいだな」
なぜか、クウヒが獣人達に囲まれている。
クウヒの表情を見る限り、困った事にはなっていないようだ。
と言うか、獣人達の方が困った表情をしている。
「んっ?」
クウヒが、獣人達に何かを渡した?
ん~……気になる。
行ってみよう。
近付くと、獣人達がクウヒにお礼を言っているのが分かった。
内容は、訓練中に助けてもらった事みたいだ。
どうやら今日の訓練で、何かが起こったみたいだ。
「クウヒ殿、ありがとう。まさか、魔法が使えるとは思わなくて」
魔法が使える?
この世界は魔法が消えかかっていたはずだけど。
「どういたしまして。それの使い方は分かりますか?」
「はい。この魔石の中に力を流して溜めていけばいいんですよね。ただ、理解はしていますが、初めてなので上手く出来るか心配です」
質問をしているのはキミールだ。
なんだかちょっと情けない表情をしている。
「大丈夫です。力を抜いて、ゆっくりと魔力を溜めていくだけです。一気に入れようとしないで、出来る限りゆっくり、ゆっくり。その魔石に魔力が溜まる頃には、魔力の扱い方を感覚で掴めているはずです」
「分かりました。頑張ります」
魔力の扱い方?
やっぱり魔法が使えるようになったのか?
あっ!
そういえば魔力とは違うけど、力がこの世界に溢れたから魔法を使える環境が整いつつあると言っていたんだった。
つまり、キミール達が使えるという事は、魔法を使える環境が整ったという事か?
「主?」
クウヒの言葉に、キミール達が驚いた表情で振り返る。
それに軽く手を上げる。
「悪い、ちょっと気になって。皆は、魔法が使えるようになったのか?」
「そうなんです! ビックリしました。 いきなり手が火に包まれて」
「えっ! 手が火に包まれた? 怪我は?」
キミールの手を見るが、どこにも火傷のあとは見当たらない。
それにホッとして彼を見る。
「大丈夫です。すぐにクウヒ殿に治療してもらいました」
キミールが嬉しそうにクウヒを見る。
なるほど、そのお礼だったのか。
「そうか。良かった」
「主、後で報告しようと思ったんだけど、どうやらここにいる彼らは魔法を使えるようになったみたい」
「そうか。えっと、おめでとうでいいのか?」
俺の言葉にキミール達が、嬉しそうに笑みを見せる。
「おめでとう」で正解だったみたいだ。
消えるはずだった魔法が復活か。
あぁ、だから魔石を使って力の制御を覚えるのか。
「力の制御、頑張って」
俺の言葉に、真剣に頷く獣人達。
魔力の制御が出来ないと、暴走もあるらしいから本当に頑張って欲しい。




