23.リーダーだから
魔神力を溜めていた洞窟で、とうとう欠片に変化が起きた!
まだ1個だけど、他の欠片とは明らかに大きさが変わった。
これまで何度も欠片が出来ては消え、欠片が出来ては消えを繰り返してきた。
そろそろ次の段階に行って欲しいと願っていたので、本当に嬉しい。
オアジュ魔神に話すと、慌てて洞窟に駆けて行った。
そして、魔神力が安定していると教えてくれた。
これでようやく1個目の魔珠宝が、出来る。
オアジュ魔神の話だと、ここまでくれば洞窟が崩れない限り成功すると言われたからな。
家に戻っても、ちょっとテンションが落ち着かない。
頑張ってと言うか、魔神力を足し続けただけなんだけど、俺が作ったという気持ちだから。
「あっ、リーダー。訊きたい事があるんだけど」
「はい、なんでしょうか?」
「魔界ではまだ魔珠宝が出来ない状態なのかな?」
俺の言葉に、驚いた様子のリーダー。
それに首を傾げる。
リーダーの性格なら、魔界の事を詳しく調べると思ったんだけど。
間違ったかな?
「えっと、そうですね。魔神達の争いが落ち着かないため、魔珠宝は出来ていません」
やっぱり調べていたか。
「そうか。ありがとう」
「主。なぜ、魔界の事を調べていると知っているんですか?」
んっ?
「リーダーの事だから、神国だっけ?」
確か一つ目達が勝手に名前を付けていたよな?
「神国と魔界の事を調べるだろうなって思ったんだ。リーダーは慎重に先の事を考えるからさ」
この世界の事を守るために、リーダーだったら隣と言っていいのか分からないが隣接している世界の事を調べると思った。
だって、神国の神々は信用できないし。
魔界に至っては、権力争い中。
安心できる要素が全くない。
「あの、駄目でしたか?」
不安そうなリーダーの頭をそっと撫でる。
「駄目じゃない。ありがとう。この世界を守るために、調べているんだろう? リーダー達が調べてくれるから、俺は安心して報告を待つことが出来る」
いつも結果報告なのは、ちょっと悲しいけどな。
途中経過の報告も頂ければ嬉しい。
でも、もしそこで意見を求められると困るんだけど。
「主、安心して下さい。二度とこの世界を攻撃されるような事はさせませんから!」
安心していい言葉なのに、ちょっと不安を感じるのはどうしてだろうな?
「あまり無理はしない事。無理だと思ったら引く事。分かった? そしてどんな事でもいいから報告して欲しい」
「分かりました」
よしっ。
……なんの話をしていたっけ?
あぁ、魔珠宝の話だった。
「魔界でまだ魔珠宝が出来ないなら、もう少し魔神力を溜める洞窟を見つけようかな」
「魔珠宝の量産が目的ですか?」
リーダーの言葉に首を傾げる。
量産は確かにしたい。
でも、魔神力を溜めている洞窟を見ている限り、それは無理だ。
「とりあえず、オアジュ魔神の子供達をこちらに迎えられる数を確保したいんだ」
余ったら、欲しいという魔神や魔族にあげたらいい。
あっ、魔界を調べているリーダーにあげれば、有効活用してくれるかな?
「分かりました。ではウッズに適している洞窟を探すように言っておきます」
一つ目のウッズは森を管理しているんだったな。
洞窟まで把握しているのか。
凄いな。
「ありがとう」
んっ?
この世界の外に歪み?
あっ、この神力は。
「アイオン神が来たみたいだ」
知っていた神力に、笑みが浮かぶ。
この頃、遊びに来ないからちょっと心配していたのだ。
「……分かりました。お茶の用意をいたします」
「うん、ありがとう」
視線の先、庭の隅に光が集まり出す。
そして人型になると、アイオン神の姿が見えた。
「えっ、アイオン神? 何か、あったのか?」
傍に来たアイオン神を見て、唖然とする。
顔色は悪いし、目の下の隈も酷い。
「あぁ、ははっ、ふふっ。あいつ等、殺す」
壊れてる。
いや、疲れているみたいだ。
椅子を薦め、リーダーが入れたリラックスできるお茶を薦める。
というか、リラックスできるお茶なんていつの間に用意したんだ?
それに、その効能は誰が調べたんだろう?
不思議だ。
「翔、ごめん!」
アイオン神が、テーブルに手を突いて頭を下げる。
それにびっくりして、持っていたお茶のコップを落としてしまう。
「あっ! ……んっ?」
コップから手を離したので、落ちるはずなのに落ちない。
よく見ると、左側にいたリーダーがコップを支えてくれていた。
「凄い、ありがとう」
よくあの一瞬で、コップを支えられたな。
「いえ、火傷をしていませんか?」
「大丈夫」
もし火傷を負っても、すぐにヒールで治療できるからな。
「あ~、ごめん。周りを見ていなかった」
アイオン神がばつの悪い表情をする。
「大丈夫。リーダーのお陰で怪我もないし」
リーダー、アイオン神に力をぶつけない。
力が揺れるから気付くぞ。
ポンと、リーダーの頭を撫でる。
あっ、止めた。
「それより、何が『ごめん』なんだ?」
何となく、原因はわかるんだけど。
アイオン神の言葉で聞いた方がいいだろう。
「落ち神の周りには、彼女を隠れ蓑に色々していた神々がいた事は話したよな?」
「あぁ、聞いた。よくある話だよな」
ロープが協力して洗い出しをしていると、聞いたな。
「その神達が、密かに何かを始めた」
そうなんだ。
チラリとリーダーを見る。
ん~、この様子からその情報は既に掴んでいるな。
「それで? 何をやりそうなんだ?」
「それが、いろいろ調べているんだが、何も掴めないんだ」
掴めない?
アイオン神は、今回の問題でかなりの多くの権限を得たらしい。
その力を使っても、掴めなかったのか?
「リーダーは何か掴んでいるか?」
「申し訳ありません。神国は魔界より複雑で、全てをまだ調べられていません」
リーダーの少し落ち込んだ声に、首を横に振る。
「ごめん。なんでも頼り過ぎたな」
「いえ。それは本当に、凄く嬉しい事なので、これからもどうぞ頼って下さい」
リーダーの発した言葉に苦笑する。
「ありがとう」
「神国?」
アイオン神を見ると、リーダーを不思議そうに見ていた。
「あぁ、一つ目達が神の住む世界の名前が無いのは面倒だって『神国』と呼びだしたんだ」
なぜか俺の言葉に神妙な表情を見せるアイオン神。
勝手に名前を付けるのは、駄目だったかな?
でも、この世界だけで呼ぶなら、別にいいだろう。
「名前か、いいな」
いいんだ。
そっちにビックリなんだけど。
「魔界と言う名前が、実は羨ましかったんだ」
「そうなのか?」
本当にビックリだ。
「あぁ。なんせ神達は、いちいち、ふふっ、いちいち書類に『神々の住む偉大な世界』とか、書かすんだぞ! なんだあれは!」
今度こそ、壊れた?
アイオン神が、ギロッと俺を見る。
その迫力に、体がちょっと後ろに下がる。
「本当に神ってやつは、面倒くさいんだ!」
そんなに力強く断言されても、何も言えないんだが。
「しかも神達が集まったら、『偉大な』『偉大な』とバカみたいに言い合って。しかもそれぞれ自慢話を延々と繰り返しやがって。こっちは色々大変なんだよ! 手伝う事が出来ないなら、邪魔をするんじゃない!」
そうとう鬱憤が溜まっているんだな。
リーダーと視線を交わして頷き合う。
「そうだよな、邪魔は駄目だよな」
俺の言葉に、頷くアイオン神。
「大変でしたね。それで?」
リーダーも話しやすいように、アイオン神に言葉を掛ける。
話す事で、少しでも鬱憤が晴れるといいんだけどな。




