103.魔石はどう?
なんでだ?
岩にどんな魔法を付与しても、弾け飛んでしまう。
「もう無理。どうしたらいいのか、何も思いつかない」
呪いに反応しないようにしたし、岩の強度もかなりあげた。
それでも弾け飛んだから、呪い自体に結界も張った。
それなのに、結果は変わらない。
「何をどうしたらいいのか……」
「岩の本質と呪いの本質の相性が、悪いのではないか?」
飛びトカゲの言葉に首を傾げる。
本質?
それって独自の性質の事だよな。
それの相性が悪い?
「そんな事があるのか?」
独自の性質の相性ねぇ。
水と油みたいな感じかな?
「分からない。だが、ここまで色々して無理なら、ゴーレムの素材を変えた方が良いかもしれないぞ」
なるほど。
ゴーレムの素材を変えるのか。
今まで岩でしか作った事が無かったから、その考えは思いつかなかったな。
「飛びトカゲ、ありがとう。他の素材を考えてみるよ」
ゴーレムの素材にするなら、魔力が良く流れて加工がしやすくて強度の強い物。
もしくは強度を上げられる素材じゃないと駄目だよな。
思いつくのは、金と銀の鉱石だけど……金色のゴーレムに、銀色のゴーレム?
ん~、なんだろう。
凄く嫌だ。
他の素材にしよう。
何があるかな?
鍋を作った鉱石やコップを作った鉱石は、今使用している岩に比べるとちょっと強度が弱いよな。
森の木も素材としてはいいんだけど、強度面から言うと駄目だよな。
魔力が流れやすいから、加工はしやすいんだけど。
他の素材、他の素材……あれ?
今使用している岩以上の素材が、もしかして無い?
やっぱり、金か銀の鉱石になるのか?
……全身金ぴか……まだ銀の鉱石の方がよさそうだな。
「主、これはどうですか?」
ん?
リーダーの手の中にあるのは魔石だよな。
魔石でゴーレムを作るのか?
「確かに魔石だと魔力は流れやすいし、強度も十分にあるな」
考えてみれば、岩以上の素材かもしれないな。
ただ、魔石は小さ過ぎる。
魔石1個で作れるゴーレムのサイズは、小指サイズぐらいだよな。
「どうぞ」
「ありがとう」
リーダーから魔石を1個受け取る。
やっぱり小さいよな。
魔石の中には大きめの物もあるけど、それで作ったとしても人差し指ぐらい?
そんなに変わらないよな。
「とりあえず、形を変えられるか試してみるか」
魔石を両手で包み込み、魔力を流す。
スーッと魔石の中に魔力が溜まっていくのが分かる。
ん?
溜まったら駄目だよな。
ゴーレムにするなら、魔力を溜めるのではなく魔石全体に魔力が流れるようにしないと。
えっと、魔石の中を魔力が流れるイメージを作って、魔力を魔石に流すと……上手くいった!
両手を開けて魔石を確認する。
淡い光を出す魔石から、流れている魔力を感じる。
「このままの状態をキープ出来れば、成功だな」
傍のテーブルに魔石を置く。
淡い光は手を離れると消えたが、魔石から感じる魔力の動きは変わらない。
「大丈夫みたいだな」
しばらく様子を見たが、魔力は流れ続けてくれている。
次は、加工だな。
魔石を両手で持ち、形を変えるイメージを作る。
あれ?
「おかしいな。イメージが上手く纏まらない」
イメージが作れなかったり消えたりする時は、魔法が発動しない時なんだよな。
今だと、魔石の形を変えられないという事になる。
ん~、さっき魔石に流した魔力は、弾け飛んだ時の事を考えて最低限の量だった。
もう少し魔石に流す魔力を多くしてみようかな。
もしかしたら、魔力の量が少ないのかもしれないから。
手から流れる魔力を多くして、魔石に流す。
「この状態で、イメージをつくって……」
あっ、イメージが出来た。
ははっ、小指サイズの一つ目をイメージしてしまった。
なんだか、可愛いな。
そうだ。
このまま、ゴーレムとして動くようにしよう。
のろくろちゃんが小さい一つ目に入って固定、信号で制御、一つ目達のように動くイメージを作って。
「小さい一つ目を作製。のろくろちゃん専用ゴーレムに進化」
手の中の魔石が動いている事が、掌から伝わってくる。
うまくいって欲しいな。
あっ、魔石の動きが止まったみたいだ。
「出来たかな?」
うわっ、ドキドキする。
そっと両手を開く。
「おぉ~、出来た!」
手の中には、透明の小さな一つ目がいた。
のろくろちゃんがまだ入っていないので、動いてはいない。
でも、なんとも可愛い。
「主! これは、私達ですね!」
リーダーの興奮した声に驚いて視線を向ける。
「あぁ、そうだよ」
ふわっと、のろくろちゃんが完成した小さい一つ目に近付く。
あっ、これ失敗して弾けたら凄いショックを受けそう。
小さい一つ目を作ったのは、失敗だったかもしれない。
のろくろちゃんが入っても、弾けませんように。
小さい一つ目の中にスーッと入って行く、のろくろちゃん。
その様子を、固唾をのんで見守る。
「弾けるなよぉ」
小さな声で祈ると、手の中にいた小さな一つ目がピクリと動く。
動いた!
成功か? 失敗か?
どっちだ?
小さい一つ目は、手の中でむくりと起き上がって、周りを見る仕草をする。
良かった、成功だ!
「うまくいってよかった」
ホッとすると、手の中の小さい一つ目をテーブルに乗せる。
「体に異変は無いか?」
首を縦に振る小さい一つ目。
「腕や足はスムーズに動く?」
その質問には、無言で頷く小さい一つ目。
あれ?
どうして話さないんだろう?
「話す事は出来る?」
えっ、首を横に振ったという事は、話せないという事だよな
どうしてだ?
……あっ、動く一つ目をイメージはしたけど、話すイメージを付加してない。
これでは話したくても、話せないよな。
「ごめん。話せるようにしていなかった。今、話せるようにするからな」
テーブルの上にいる、小さい一つ目を両手で包み込み、話している一つ目をイメージして魔法を流す。
「話せるようになる」
そっと両手を小さい一つ目から離す。
小さい一つ目は首を傾げて俺を見上げる。
「話せるようになったか?」
「あ゛~、あ~、い~。はい、話せます」
ん?
聞こえてきた声に首を傾げる。
何となく、数人の声が重なっているような気がする。
「えっと、小さい一つ目の居心地は問題ないか?」
「うん。問題ないよ。手も足もしっかり動くから! すごい、すごい!」
やっぱり、複数の声が重なっているように聞こえる。
1匹ののろくろちゃんに、複数の存在を感じていたのは間違いじゃなかったんだな。




