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異世界に落とされた…  作者: ほのぼのる500
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82.エンペラス国 タルタ伯爵

ーエンペラス国 タルタ伯爵視点ー


謁見の間に入ると、多くの貴族達が集まっていた。

その事に、安堵のため息を吐く。

急な呼び出しだったので、何かあったのかと勘ぐってしまったがそうではない様だ。


「タルタ伯爵様、お久しぶりですね」


「本当に久しぶりですね、テルース伯爵様。3ヶ月前の夜会以来でしょうか? お元気でしたか?」


仕事仲間であるテルース伯爵が、笑顔で私に挨拶をしてくる。

それに笑顔で答えながら、小声でこの集まりの意図を知っているか聞くが、彼は首を小さく横に振った。


「えぇ、元気ですよ」


テルース伯爵は、この集まりに少し不満そうだ。

まぁ、それも仕方ないだろう。

本当に、急に集められたのだから。


「テルース伯爵様は、この頃どうですか?」


仕事仲間だが、それを知っている者はほんの一握り。

なぜなら私とテルース伯爵が始めた仕事は、表では売れない物を扱うからだ。

既に、獣人国のある貴族とは話が纏まり、商品はいつでも手に入れられる状態になっている。

残りは販売経路。


「順調です。そちらはどうですか?」


「こちらも順調ですよ」


我々の会話に、注目している者達がいる事に気付く。

実はこのテルース伯爵とは、表の商売ではライバル同士なのだ。

実際に、私も彼も相手を蹴落とそうと躍起になっていた時期もある。

それを知っている者達は、我々がこの場で罵り合いでもすると思っているのかもしれないな。

王に呼ばれたこの場で、そんな馬鹿な事をするはずが無いのに。


「それは良かった。お互い、負けられませんからね」


テルース伯爵の表情を見ると、満足そうな笑みが浮かんでいる事に気付く。

彼はどうやら、無事に販売経路が確保できたようだ。

さすがだ。


「そうですね」


では、獣人国から商品を仕入れますか。

こちらに引き込んだ門番達が、いつ当番なのかしっかりと把握しておかないとな。


「では、失礼します」


テルース伯爵と別れ、隣の領地を治めている友人を探す。

謁見の間は少し広さがあるが、この国の貴族はまだそれほど多くない。

だから、すぐに見つける事が出来るはず。


「おかしいな、いない。全ての貴族が集まっていると聞いたんだが」


もしかしたら、まだ来ていないのかもしれない。

もう少し待ってみるか?


「お久しぶりですね」


ん?

後ろを振り向くと、今まさに探していた人物がいた。


「お久しぶりです。ゆっくりと話がしたいと思っていたんです」


これからの事を思うと、心が浮き立つ。


「そうだったんですか? どんな話でしょう」


ナルアン侯爵が、私の言葉にスッと目を細める。

少し警戒している様子に、そうでは無いと首を横に振る。

彼は、ある事業を成功させている。

私は、その事業でしか手に入らない物が欲しいだけなのだ。


「どうしても欲しい花があるのです。それを手に入れるために、協力いただけないかと思いまして」


彼は私をじっと見て、意図を探っているようだ。


「花ですか?」


「えぇ、とても綺麗なんですが、なかなか手に入らなくて。ナルアン侯爵であれば、手に入れる事が出来ると確信しております。私の商売では、まだそれを手に入れる事が出来ないのですよ、残念な事ですが」


ナルアン侯爵は、私が始めようとしている商売を知っている。

少し助言を貰ったためだが、こう言えば何を欲しがっているのか分かってくれるだろう。


昔、本で見たエルフに私は恋をした。

大人になってから、エルフと話す機会があった時は心が躍った。

だが、なぜか話をしても笑顔を見ても、心は満たされなかった。

そして私は、気付いた。

私は、エルフのすべてを支配したいのだと。

つまり、エルフの奴隷が欲しいのだ。


「なるほど。それはとても綺麗な花なんでしょうね」


気づいてくれたようだ。


「えぇ、そうなんです。手に入りますか?」


私の質問に、ナルアン侯爵が自信ありげな笑みを見せる。

あぁ、長年の夢が叶う。

興奮を悟られないように、小さく微笑むと頭を軽く下げる。


「んっ? 宰相の姿がありますね。という事は、そろそろ王がいらっしゃるようですね」


言葉は丁寧だが、ナルアン侯爵がガンミルゼ王やガジー宰相を見下している事を知っている。

彼は、前王時代から続く貴族家の1つだ。

そのため、発言力もあり多くの貴族の当主達が彼の言葉に従う。

例え王だとしても、彼を疎かにすることは出来ない。

それだけ特別な存在なのだ。


謁見の間に姿を見せたガンミルゼ王に、胸に手を添え、目を伏せた。

ガンミルゼ王が、数段上にある王座に座ったのを音から判断する。


「楽にしてくれ。急であったが、よく集まってくれた。感謝する。今日は皆に、ある御方の使者を紹介する」


ある御方?

エンペラス国の王である者が、そのような言い方をするとは。

賢いと思っていたが、そうでも――


「えっ? あれは……ゴーレム?」


ざわついていた謁見の間に、静寂が訪れる。

誰もが口を閉じ、その存在をじっと見つめる。


「ガンミルゼ王、お久しぶりですね」


ゴーレムの言葉に、多くの貴族が息を飲む。

私もその1人だ。

「お久しぶり」と声を掛けるほどの関係なのか?


「バッチュ殿もお久しぶりです。森の神は、お元気でしょうか?」


「はい。我が主はとても元気ですよ。忙しいガンミルゼ王の事を心配していました。『彼は無理をするから心配だ』と」


バッチュ殿とガンミルゼ王の会話に、歓喜を見せる者、戸惑いを見せる者、顔色を悪くする者がいる中、私はなぜか寒気に襲われた。


「今日は今まで預けていた物を、引き取りに来ました。そして、今まで守ってくれていた事に感謝し少し掃除を行う予定ですが、いいでしょうか?」


「なるほど、それはありがたいですね。ご自由にどうぞ」


「では」


バッチュ殿がパンと手を叩く。

何が起こるのか、嫌な予感がする。

今すぐに、この場から逃げ出したい。


「ひっ」


隣にいるナルアン侯爵の小さな悲鳴に視線を向け、固まった。

視線の先には、ナルアン侯爵の傍を飛ぶアルメアレニエの姿があった。

動く事も声をあげる事も出来ず見ていると、アルメアレニエの前脚がスッと上がる。

すると音もなく、天井から数匹のアルメアレニエが降りてきて、ナルアン侯爵の体の周りをくるくると回り出す。

しばらくすると、糸でぐるぐる巻きにされたナルアン侯爵が床に転がった。


「………………」


その間、数秒だったと思う。

私は何が起こっているのか全く理解できず、呆然と佇んでいた。


「夢は夢のまま、終わらせた方が良いよ」


えっ?

夢?


「まだ、エルフが欲しいの?」


……なぜ、それを知っている?

誰にも言った事など無い。

いや、探した過去はあるがそれはかなり前の事だ。

だから、知られているはずがない。


「欲しいの?」


低くなる声に、慌てて首を横に振る。

怖い、恐ろしい。


「そう、良かった。商売がうまく行けばいいね。でもね、あなたの取引相手は既にいないよ。ふふっ」


肩に微かな重みを感じてそっと視線を向けると、拳大のアルメアレニエがいた。

叫びそうになった俺の口を、アルメアレニエの前脚が押さえる。

その行為に、全身から血の気が引く。


「見ているよ、全部ね。これからは、この国のために尽くそうね」


何度も頷く俺に満足したのか、肩から天井に向かって糸をするすると登って行ったアルメアレニエ。

倒れ込みそうになるのを、なんとか踏み留まる。

少し離れた場所で、ドサリという人が倒れるような音が聞こえた。

だが、それを確かめる余裕は一切ない。


「わっ」と謁見の間に声が響いた。

それに体がビクリと震える。

だが、何が起こったのか確かめるため視線を向けた。

謁見の間に不釣り合いな魔石があった。

あれが、森の神から預かったと言われる魔石なんだろう。


「我が主がガンミルゼ王に『今までありがとう。これからも仲良くして行こうな』と言っておりました」


「こちらこそ今まで大切な魔石を預けてくださり、ありがとうございました。これからも仲良くして頂けるという事で、嬉しい限りです。また、色々な面での協力には本当に感謝しております」


森の神とガンミルゼ王の関係が、ここまで良かったなんて。

全く予想していなかった。

しかも色々な面での協力?


「ガンミルゼ王を甘く見過ぎていたのか」


床に倒されたナルアン侯爵に視線を向ける。

が、そこには誰も居なかった。

周りを見回すが、その姿がどこにもない。

ははっ、何が特別な存在だ。


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― 新着の感想 ―
[一言] ガンミルゼ王がバッチュたちに怯えてないことに安堵した笑。 ますます面白くなってきたなぁ。
[一言] まぁ奴隷貿易みたいな裏の商売をしようとしていた人間は全員把握されて王様にバラされてるんだろね。
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