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異世界に落とされた…  作者: ほのぼのる500
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72.エントール国国王 エスマルイート王2

-エントール国 エスマルイート王視点-


謁見の間に1ヶ所、周りと異なる窓が出来上がった。

他とは違い、その窓の開口部はかなり大きい。

まるで大きな存在が出入りするために作られたかのようだ。

……いや、現実をちゃんと認識しないと駄目だな。

そこから出入りするのは、間違いなく大きいアルメアレニエだろう。


「完成しましたので、我々は帰ります」


目の前に並ぶ、3体のゴーレム。

正直、どう返事をしていいのか悩む。

俺はこの国の王だ。

だから、「ご苦労」か?

いやいや、森の神が作った存在に向かって言うのか?

不敬では?

まて、ゴーレムより王の方が……面倒くさいから、立場を考えるのは止めよう。


「ありがとう」


いや、「ありがとう」はおかしくないか?

窓を破壊したのはアルメアレニエだ。

その壊れた窓を修復してくれただけなんだから。

修復?

どう見ても改装されてしまったが。


「これから必要だと感じたので、窓を大きくしました。問題がありますか?」


断ったら元に戻してくれるのだろうか?

というか、ゴーレム達から強い魔力を感じる。

もしかして、圧を掛けられているのでは?


「問題は、ない」


恐ろしいから、魔力を強めないでくれ。


「よかったです」


ゴーレムから感じていた魔力が、すっと無くなる。

小さく息を吐き出すと、出来上がった窓の近くにいるギルスに視線を向けた。

彼は俺を見ると、静かに首を横に振った。

まぁ、ゴーレムを止められるのは森の神だけだな。


バッチュ殿が目の前からいなくなった後、すぐに王城に戻った。

側近達に、色々と説明しなければならなかったからだ。

それにバッチュ殿は、問題を起こしている首謀者を連れて来ると言った。

それなら、騎士達の準備も必要だろう。


執務室で側近たちと話をしていると、隣の謁見の間から大きな音が響いた。

慌てて謁見の間に駆け付けると、窓があった場所に大きな穴が空いていた。

そして、そこから姿を見せたアルメアレニエ。

あの時の、側近たちの混乱は凄かった。

アルメアレニエは、教師達の護衛に付けた騎士ギルスを連れて来た。

そして、前脚を上げると颯爽と去って行った。

何が起こったのかよく分かっていない状況の中、半壊した窓から次に姿を見せたのは3体のゴーレム。

アルメアレニエが現れた時以上の大混乱に陥った。

そんな中ギルスが、3体のゴーレムがここにいる理由を説明してくれた。

「窓の修繕に来た」と。

その内容に、ちょっと釈然としない物を感じたが、お願いした。


「ご協力感謝いたします。では」


ゴーレム達が、窓の傍で佇むギルスの前で立ち止まる。


「ギルスはどうする?」


ゴーレムの口調が変わった事に気付く。

俺には、丁寧に話してくれていたのか。

魔力はぶつけられたが。


「えっと、ダダビスと戻ります」


そういえば、バッチュ殿と一緒にダダビス団長も来ていて、バッチュ殿と一緒に何処かへ行ったな。

あいつ、護衛としてちゃんと働いているのか?

あっそうだ。

第1騎士団のガルファ団長は無事だろうか?

首謀者を捕まえに行くと聞いて、一緒に行ってしまったが。

アルメアレニエに乗ると聞いて、顔色を悪くしていたから心配だ。


「そっか。それじゃ、また後で。バイバイ」


ゴーレム達はギルスに向かって手を振ると、出来上がったばかりの窓から颯爽と帰っていく。

姿が見えなくなると、息をひそめていた側近たちが安堵したのが分かった。

あっ、座り込んでいる者までいるな。


「お待たせしました~!」


「「「「ひっ」」」」


ホッとした瞬間に、バッチュ殿の声が謁見の間に響き渡った。

緊張感が途切れた瞬間だったから、悲鳴を上げる気持ちも分かる。

俺はぎりぎり、持ちこたえた。


「ダダビスの方はまだかな? ……あっ、帰って来たね」


「遅くなりました」


「いや、俺も今帰ってきたところだから大丈夫。そうだ、先触れを出したのに、3人共逃げていたからびっくりだよ。ちゃんと待っていてと伝言までしたのに」


やはり、先触れを見て逃げたみたいだな。

ん?

ダダビス団長の後ろにいる巨大なあれは……。

人を乗せたアルメアレニエが3匹、開口部を大きくした窓から入って来た。


「少し遅くなったな」


「問題ないよ。親蜘蛛さん、ありがとう」


1匹でも存在感があるのにそれが3匹もいると、謁見の間が狭く感じるな。


「ここに転がしておくぞ」


「うん、ありがとう」


アルメアレニエの言葉に、バッチュ殿が頷く。


ゴロゴロ、ゴロゴロ、ゴロゴロ。


アルメアレニエから降ろされた者達を確認する。

バッチュ殿が連行してきたのがオルトル男爵、タルレスタ女伯爵、バーリュ侯爵。

ダダビス団長が連行してきたのがマッロシ伯爵とキャベル伯爵だった。

キャベル伯爵の姿を見た瞬間、眉間に皺が寄った。


「キャベル……貴様だったのか」


信用し傍に置いていた者が、紐でぐるぐる巻きにされ床に転がっていた。

まさか、昔から信頼を寄せていた者が俺を裏切っていたとは。

その事実に落胆する。


「エスマルイート王。今から彼らの罪を説明していくね。とりあえず俺が分かっている範囲で証拠がある分だけだけど」


「お願いする」


いったい、森の神はどこまでこの国の醜聞を知っているんだ?

少し緊張するな。


「あっ、その前に。証拠を先に渡しておくね」


ドサドサドサ。


ん?

バッチュ殿が、アルメアレニエに合図を送ると、何処からか大量の書類が出て来た。

それが床に落とされると、バッチュ殿がそのうちの一枚を手に取る。


「爵位を付けて説明した方が、分かりやすいよね。えっと、タルレスタ女伯爵は、オルトル男爵にいいように使われていた事が多いんだけど、元宰相のヴィスルイの脱獄には手を貸しているね」


タルレスタ女伯爵が?

だがあの時、彼女は何もできないと……あぁ、キャベル伯爵が進言したんだったな。

くそっ。


「元宰相のヴィスルイの監視に当たっていた6人の騎士を、毒殺したのが彼女だね。それと、ヌースル魔術師が魔物を操って国内で暴れさせようとした事にも協力しているし、エルフの密売人から攻撃に特化した大量の魔道具を手に入れていたのも彼女。証拠はばっちりあるから確認してね」


バッチュ殿がタルレスタ女伯爵に視線を向けると、少し小ぶりなアルメアレニエが彼女の傍に書類を置いた。

あれが証拠か。

確認には何日も掛かりそうだな。


「あっ、ヴィスルイはエルフ国にいたから引き渡してもらって、今こちらに護送中。ヌースル魔術師とその護衛をしていた元騎士達は、ダダビスがいた第3騎士団に引き渡しておいたからね。魔道具は証拠として各1個ずつは残したけど、残りは処分したから」


ヴィスルイはエルフ国にいたのか。

それにしても、エルフ国でもバッチュ殿はある程度自由に行動できるのか?

普通は、元宰相の地位にいた者を簡単に引き渡したりはしないよな。

エントール国との交渉に使えるのだから。


「えっとマッロシ伯爵とバーリュ侯爵は、ヴィスルイの研究を引き継いで奴隷紋を研究していたんだ」


えっ、研究を引き継いだ?


「全て処分したはずだが」


ヴィスルイが奴隷紋を研究していると知って、内密に研究機関や書類を全て処分した。

そこで働いていた者達も、既にこの世にはいない。


「この2人は元宰相のヴィスルイにも内緒で、研究資料を持ち出して別の場所で研究していたんだ。彼と違ったのは、奴隷紋が完成していないのに実験を行った事」


実験?


「うっ、えっここは……あっ」


目を覚ましたバーリュ侯爵と目が合うと、現状を理解したのか一気に青ざめた。


「マッロシ伯爵とバーリュ侯爵は、未完成の奴隷紋を身寄りのない獣人達で試したんだ。そのせいで多くの獣人達が亡くなっているよ。俺が把握してる人数は、112人。でも、研究所に残されていた資料を見る限りもっと多いと思う。あと、人の国から来た元奴隷達も被害にあったから」


身寄りのない獣人?

そういえば、マッロシ伯爵は教会を運営していたな。

両親がいない子供達を保護すると言っていたが……その子達か?


「研究所は3つ。ダダビスに紹介してもらった第2騎士団と協力して制圧したから。そうそう、研究所で保護した獣人32人は、リーダーがヒールで癒したから、もう大丈夫。証拠は、第2騎士団が持っているから。証人も」


えっ?

いつの間に、第2騎士団が協力していたんだ?

ダダビスに視線を向ける。

あっ、目を逸らしやがった。

あいつは!


「で、キャベル伯爵とオルトル男爵だけど」


キャベルか。

奴はいったい何をしたんだ?


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[一言] ろくなやつが居ないな汗
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