31.子供達は可愛いが……。
魔石に問題はなかった。
いや、正確には少し問題はあった。
ダダビス達に見せた魔石は、獣人の国で換金が可能との事。
良かったと安心したのだが、まだ魔力を籠め過ぎらしい。
俺としては、少なすぎて心配だったのだが、3分の2ぐらいでも大丈夫と言われてしまった。
さすがに「えっ?」と思ってしまった。
まさか、そんなしょぼい……少ない魔力を籠めた魔石が出回っているとは。
俺とこの世界の人達の魔力量の違いを、本当の意味で実感した。
もう少し制御を覚えよう。
まぁ、先生達に渡す金の目途が付いたので、それは安心だ。
そしてもう1つ、懸念していた事が思わぬ形で解決した。
「今日の勉強は何をしたんだ?」
俺の質問に、嬉しそうに答えていく子供達。
そう、先生達に教えてもらわなくても子供達が話してくれる事に気付いたのだ。
初めて授業があった日の夕飯の席で、子供達が習った事を競って話し出した時は驚いた。
そして、子供達から教えてもらえる事に気付いた。
まさか、こんな形で悩みが解決するとは。
ただ、子供達によって話す内容が異なる時があるので、ちょっと困る。
まぁそんな時は、授業を見守っていたアイやバッチュに確認を取ればいいだけだ。
あれ?
最初からアイやバッチュに……まぁ、子供達も楽しそうだからいいか。
「この世界は、3人の神様が作ったんだって」
太陽が楽しそうに話すので頷くが、「ちょっと違う」と思ってしまう。
3人の神ではなく見習いだからな。
「その3人がそれぞれ、人、獣人、エルフを作ったらしいよ」
そういう事になっているのか。
でも、世界の実の力だよな。
あれ?
見習いが人と獣人とエルフを望んだから、世界の実が反応したのか?
どうだったかな?
翼の話に少し首を傾げてしまう。
「でもさ、この世界はちょっと前に完成したんだよね?」
雷の言葉に子供達が頷く。
子供は正直だからね。
「それは、内緒の事だから。この世界の人達は知らないんだよ」
感心した様子で俺を見る子供達。
「オアジュ魔神が完成させて、光が手に入れたんだよね!」
月の言葉に、近くで食事をしていたダダビス達が、唖然とこちらを見ている事に気付く。
うん。
これ、どうしようかな?
光を見ると、そっと視線を逸らされた。
「それも、内緒だね」
「そうなんだ。あとそうだ! 3人の神様を祀る神殿があるんだって」
えっ、神殿?
それは、知らないな。
「どこにあるんだ?」
桜が隣に座っている紅葉を見る。
2人で首を傾げているので、場所までは習わなかったのかな?
「地下神殿で、森の地下にあるらしいよ」
太陽の言葉に、桜と紅葉が「あっ」とした表情をして頷く。
「そうなんだ、ありがとう、教えてくれて」
森にある地下神殿?
シュリは、今日は参加していなかったな。
子アリを探すと、少し離れた所で骨付き肉と格闘していた。
自分より大きな肉に齧り付く子アリ。
「バリッボキッ」という音が聞こえてくるので骨ごと食べているんだろう。
凄い光景だ。
「ん? 主?」
俺の視線に気付いたのか、肉を前足で持ったまま俺の方を向く子アリ。
今日は生の状態なのか、手に持つ肉からは血が滴っているし、口の周りは血で汚れている。
知らない者が見たら、ホラーだな。
いや、分かっていてもちょっと引く。
いや、引いている場合じゃなかった。
「森の地下に神殿があるそうだが、知っているか?」
「神殿?……あっ、人の国の近くにあるそうです。でも、なかなか見つけられないし、見つけてもすぐに分からなくなるんです」
分からなくなる?
見習達が何か仕掛けをしているという事か。
人の国の近くにあるなら、気付かずに傍を通っているかもしれないな。
地下神殿か。
気になるな。
ちょっと行ってみようかな?
「主、もしかして行くの?」
わくわくした表情の風太の様子に苦笑してしまう。
見れば、他の子供達も俺を見ている。
「行くけど、まずは俺と仲間だけでな」
俺の答えに不満をこぼす子供達。
「一緒に行こう」と、言ってやりたいが無理だ。
見習い達のこれまでの事を考えると、地下神殿に何を仕掛けているか分からないからな。
安全が確保できるまでは、子供達は連れて行けないな。
「問題が無いと分かったら、一緒に行こうな」
「「「「「は~い」」」」」
元気に返事をする子供達の可愛らしさに、顔がにやけてしまう。
素直ないい子達だよな。
「あっ! あのね主、その地下神殿の近くには古代遺跡があって、そこで大きな魔石が見つかったんだって。それが森を襲った魔眼に力を与えていたらしいよ」
2人の先生が驚いた表情で、話した紅葉を見た。
なんだ?
何か、あるのか?
「そうなんだ」
先生達の様子を窺いながら、ダダビス達をそっと見るとワリアンを睨んでいた。
あぁ、なるほど。
魔眼についての話は、子供達にするつもりは無かったのか。
それなのに、ワリアンが勝手に話してしまったと。
ん?
彼は、何がしたいんだ?
魔眼の話をしても、あまり意味がないような気がする。
「主、その魔石ってロープの事だよね? ロープが森を襲ってたの?」
桜の質問に、首を横に振る。
というか、桜はこの質問の答えを既に知っているはずなんだけど。
まぁ、何をするのか分からないけど、付き合うか。
「いや。ロープは、洗脳されていたんだ」
子供達が顔を見合わせて頷きあう。
どうやら俺の行動は正解だったようだ。
「そうなんだ。確かに主を大好きなロープが、主の意思に反する事をするわけないよね」
桜の嬉しそうな言葉に、苦笑する。
ロープは、魔幸石という神々が作った凄い石なんだけど。
子供達からすると、どうでもいい事なんだろうな。
「うん。主が大好きだって、すごく伝わってくるよな」
翼の話に、子供達が頷く。
そんなにロープは分かりやすいかな?
「そうそう、だから人の国の人達が今から何かをしたとしても、ロープが森を襲ったりはしないよね」
ん?
あぁ、ワリアンが「人がまた森を襲う」とでも言ったのかな?
ワリアンに視線を向けると、下を向いているため表情が分からないが、微かに震えているようだ。
馬鹿だなぁ。
もう少し子供たちを見極めてから、動かないと。
まぁ、見極めたら何かをしようなんて思わないだろうけどな。
「あっ、ごめん。ワリアン先生。これって内緒だったね。ごめんね、先生」
うわ~。
桜、それはワザとらしい。
ほら、クウヒが笑い出しそうじゃないか。
「ワリアン先生、怒ってますか?」
口元を押さえた月が、申し訳なさそうにワリアンを見る。
可愛いけど、あざとい。
ウサ、「すごい」と感心しない。
太陽、翼、小さくガッツポーズをしない。
紅葉、鼻で笑わない。
先生達や騎士達からは見えてないだろうけど、俺からはばっちり見えているからね。
「えっと、あの」
ダダビスの声に視線を向けると、かなり戸惑っているのが分かる。
「ダダビス、気にしなくていい。ワリアン先生は、ちょっと口が滑っただけですよ。そうでしょう?」
子供達の様子から、これ以上は無いみたいだから終わらせよう。
「えぇ、そうです。すみませんでした」
ワリアンの態度に、ダダビスの目がすっと細くなる。
あの雰囲気は、そうとう怒っているな。
まぁ、俺は関わらないようにしておこう。
それにしても子供達は……まぁ、いいか。
素直ないい子達です。
いつも読んで頂き、ありがとうございます。
10月25日(月)より10月27日(水)まで、更新をお休みいたします。
申し訳ありません。
更新を再開いたしましたら、またよろしくお願いいたします。




