08.エントール国へ行こう!
オアジュ魔神が新しい大地へ行くのを見送り、アイオン神が補佐に回収されるのを見守る。
彼女は何か文句を言っていたが、「仕事しろ」と暖かく見送った。
毎回、毎回、補佐の役目も大変だ。
そういえば、補佐を務めているマッシュの顔色がちょっと悪かったな。
「上司がアイオン神だからなぁ」
次に彼が来たら、甘い物でもプレゼントしよう。
少しでもストレスが軽減出来ればいいが……無理かな。
さて、今日の予定は……少し遅くなったがエントール国へ行こうかな。
教師の性別と、性格を少しは把握しておきたい。
本音を言えば、会ってどんな人物なのか確認したい。
会ってみたら、なんとなく波長が合わないという事もあるだろうし。
でも、ダダビスに任せると言っておいて最後に口を出すのは、不愉快な思いをさせてしまうよな。
とはいえ、大切な子供達の教育を任せるんだし……。
少し意見をいうぐらいなら、大丈夫かな?
「主、一緒に行ってもいいですか?」
「ん? 一つ目のリーダーか……」
教師たちの面倒を見るのは、一つ目達になるんだよな。
それなら一緒に行って、教師たちの様子を見てもらった方がいいかもしれないな。
「そうだな、一緒に行こうか」
そういえば、一つ目達は人や獣人達に恐れられているらしい。
怒らせない限りは無害なのに。
「ありがとうございます。準備は終わっていますので、いつでも行けます」
準備?
「この時間ですと、今日中に戻って来られるか分かりません」
そういえば、既にお昼を過ぎた時間だったな。
今からエントール国に行ってダダビスを見つけて……確かに帰って来られないかも。
「なので、飲み物や食べ物、宿に泊まる準備や森で過ごす場合の準備をしておきました」
凄い。
「さすが一つ目、抜かりないな」
「ありがとうございます」
凄く嬉しそうに言う一つ目の頭をポンと撫でる。
一つ目が準備したのなら完璧だろうし、俺のする事は無いな。
「行こうか」
「はい」
ウッドデッキに出ると、出掛ける事に気付いたコアとチャイがすっと左右に並ぶ。
今日の護衛は、コアとチャイらしい。
2匹だけというのは珍しいな。
あれ?
親玉さんが来た。
「親玉さんも来てくれるのか?」
俺の言葉に頷く親玉さん。
「今日はよろしくな。ん? 孫蜘蛛5匹もか、よろしくな。それと、今日は一つ目も一緒だから」
孫蜘蛛が前脚をあげて、手を振ってくれている。
可愛い。
「主、今日の予定は?」
親玉さんの言葉にコアとチャイも俺に視線を向ける。
「今日は、獣人達の国、エントールにお邪魔する予定だ。子供達の教師を確認したいから」
そうだ、コアとチャイは既にお邪魔した事があるけど、親玉さんはエントール国に入れるかな?
……お願いしたら、大丈夫かな?
「そうか。我は森で待っていた方がいいだろう」
「えっ、一緒に来ないのか?」
「我は行かないが、子供達が一緒に行く。何かあればすぐに駆け付けるから大丈夫だ」
そうか、残念だな。
それにしても、「何かあれば」とは何だろう?
獣人達は凶暴なのか?
ダダビスと話した感じは、全く横暴には感じなかったが。
どちらかと言えば、かなり気を使っていたような気がする。
「まぁ、何もないとは思うがな」
そうだよな。
「分かった。コア達もいるし、森でゆっくり待っていてくれ」
特訓中の子供達に、獣人がいるエントール国に行く事を伝えると、なぜかすごく心配されてた。
もしかして子供達より、俺は弱いと思われているのか?
そんな事は無い……と、思いたいが。
「私も行きます」
「えっ?」
ウサが?
それは駄目だ。
まだ獣人達といい関係を築けたとは言えない。
行って、何かあったら。
「今日はいいよ。今度にしよう」
「駄目ですか?」
うっ。
そんな悲しそうに言われると……いやいや、ダメダメ。
ここはぐっと耐えて。
「私、強くなったので護衛が出来ます!」
「いや、それは駄目でしょう」
子供に守ってもらう俺って何!
悲しすぎる。
「もっと大人になってから頼むから」
これは譲れない。
大人としてのプライドの問題です!
俺の本気を感じ取ったのか、口を尖らせて頷くウサ。
不満そうだが、ここは譲れません!
「行ってきます」
家を出て森を駆ける。
通常の速度で行くと今日中に着けないので、風魔法を使って一気に速度を上げる。
コア達も親玉さんも普通についてくるからさすがだ。
って、孫蜘蛛も普通について来てるのか、凄いな。
一つ目は……余裕そうだな。
「このスピードだと、数時間で着くな」
…………
コアを先導で5時間弱。
「主、見えたぞ」
隣を走るチャイが教えてくれるが、残念ながら俺にはまだ見えない。
でも、そろそろ着くようだ。
「……あっ、見えた」
エントール国を覆う結界が視界に入る。
「結界は上手く動いてるな」
立ち止まって、森からエントール国を覆う結界を見る。
急いで張ったわりには、ちゃんと動いているようだ。
「あれ?」
結界の一部が光った?
「獣人がいるな」
コアの視線を追うが、遠すぎて見えない。
遠見を使って見ると、4人の獣人が結界の一部を攻撃していた。
何か道具を使っているようで、さっき見えた光はその道具から発生しているようだ。
「結界に攻撃してるよな? 何をしてるんだ?」
獣人達の行動に首を傾げる。
自分たちの国を守る結界を、攻撃する意味が分からない。
とりあえず、話しかけてみるか。
「結界に何か問題が起きて、対処しようとしているのかもしれないしな」
まぁ、攻撃しているようにしか見えないが。
「主の張った結界に問題? それは無いだろう」
親玉さんの言葉に、コアとチャイが頷く。
そう思ってくれるのは嬉しいな。
でもあの時は、結構急いでいたから完璧な結界は張れていないと思う。
なので、何が起きてもおかしくない。
「とりあえず、何をしているのか聞いてみるか」
そう判断すると、獣人達に向かって走る。
真後ろまで来ると、一番後ろにいる獣人の肩をポンと叩く。
「何をしているんだ?」
というか、こんなに近くにいるのに気付かないなんて、大丈夫か?
「えっ? うぎゃぁぁぁ」
うわっ。
煩い。
「煩い!」
えっ、俺じゃないぞ。
「一つ目、シッ!」
バタバタバタ。
「えっ? あっ、失神?」
まさか一つ目を見ただけで失神?
いや、待て。
振り返ると、ドーンと親玉さん。
「あっ、ひっ、いの、ち……ひっ」
あっ、1人だけ失神していない。
話が聞けるかな?
「ここで何をしていたんだ?」
「もう、しな……しな……うっ」
うん、よくわからない。
彼に説明は無理だな。
地面に倒れている3人の獣人を見る。
そして目の前で、真っ青な表情で震えている獣人を見る。
「仕方ない」
話は聞けないな。
「ひっ!」
……そんな怖がらせるような事を言った覚えない。
「ちょっと一緒に来てくれ」
「ひっ!」
大丈夫か、こいつ。
心配になって1歩、目の前の獣人に近付く。
「あっ」
バタ。
「さすがです!」
「いや、何もしてないから!」
一つ目の言葉を否定する。
「はぁ、ここに置いておくわけにはいかないよな。一緒に連れて行くか」
親玉さんを見る。
一緒に来てくれてよかったかも。
「ごめん、親玉さん。糸で動かないように固定してくれるか?」
移動する時に手とか足とかぶつけたら、可哀想だからな。
「分かった」
親玉さんは前脚を器用に動かして、倒れた4人の獣人たちを糸でぐるぐる巻きにしていく。
暫く待つと、全く動けないように固定された4人の姿が目に入った。
「うん、完璧」
糸でぐるぐる巻きの獣人達を親玉さんの背に乗せる。
「彼らは、誰に渡したらいいんだろうな?」
そういえば、前に来た時に門があったな。
そこに門番みたいな獣人がいた。
彼らに渡したらいいかな?
あっ、そうだ。
その獣人達に、ダダビスの事を聞けばいいや。
確か、ダダビスと色違いの服を着ていたはずだ。
うん、そうしよう。
「行こう」




