34.ある国の騎士
-エンペラス国 第1騎士団 団長視点-
廊下を急いで歩いていると後ろから声がかかる。
「聞いたか?」
「あぁ」
今、この話題で城全体が緊張感に包まれている。
王は報告を受け、その場で報告をした騎士を殺した。
俺からすれば殺しても意味がないが。
そんなことを一言でも声に出せば、首が飛ぶか奴隷落ちか。
どちらにせよ、人生が終わる。
森の1回目の異変。
王はおそらく最後の抵抗とでも考えたのだろう。
魔眼に力をつけることで決着をつけようとした。
だが、結果は。
……
複合魔眼魔法を支えるのは1つの魔石。
古代の遺跡から見つかったと言われる魔石だ。
この魔石の発見により実現した複合魔眼魔法。
魔石は異常なほど力を持ち、魔導師が解析しようとしてもできず。
多くの魔導師の血が流れたと聞く。
その魔石を利用したのが我が国の王。
最初は魔石の力でその身の老化を止めた。
いや、止めたというのは違うな、遅らせた。
少しずつだが老いてはきているらしい。
次に世界の王となるため複数の魔眼魔法の強化に魔石を利用した。
魔石に注がれた数万人を超える生贄。
その贄と血によって、より強固になった魔石、強固になった魔眼魔法。
森を手に入れ世界の王になるのだと誰もが信じて疑わなかった。
それだけの力があるのだあの魔石には。
……
その魔石に本当に小さなひびが入った。
そう小さなひび。
見つけた魔導師はかわいそうにな。
王の逆鱗に触れるものを見つけてしまったのだから。
そして今。
第4騎士団に集合がかかったらしい。
おそらく森に行って調べるという命令が下されるだろう。
あそこはまだ、森の王の力が存在している場所だ。
森の周辺は抑えられてきているようだが。
森全体を見ればまだ、10の1にも満たない。
しかも調べるとなるとおそらく、森の中心部分。
森に手を出しているエンペラスの騎士がいったらどうなるか。
しかし、何が起こっているのか。
魔石は見つけた当初よりもかなり強化されたと聞いている。
その魔石に傷をつけた存在。
森の王たちは今までも反撃を繰り返してきたという。
だが、魔石に影響を出せるほどの力はなかった。
それが急に。
何かが目覚めたのか?
森の王より力のある存在?
王の上にいる存在とは神か?
神が目覚めた?




