78.せめて名前で……断る!
「主、狩りに行くぞ!」
「あぁ、行くか!」
コアの声に座っていた椅子から立ち上がる。
今日もいい天気だ。
仲間全員に自分のことを話して既に1ヶ月。
この星にきた経緯や力の変化、暴走。
ロープのことや、記憶が変換されている事など様々な話をした。
皆と話すと、記憶の変換が強制的に行われたせいなのかこまごまとした記憶が異なることが判明。
というか、結構ざっくりとした変換がされていた。
ちなみに記憶が変換された原因は、星が安定していなかったために起こった誤作動らしい。
あまりの事実に頭痛がした。
悩んだ時間を返せ! である。
「今日は何を狙うんだ?」
「唐揚げだ」
「コア、唐揚げは可哀想だろう。ちゃんと名前で呼んであげないと。ちなみにどっちだ?」
話していると仲間たちのそのほとんどが唐揚げ好きだと分かった。
理由は酒に合うから。
唐揚げに向いている魔物は2種類。
1つはイビルサーペント、どう見ても不気味な巨大ヘビ。
最初見たとき、料理をするのに勇気が必要だった魔物だ。
次にキラーラグ。
こちらは巨大なウサギ。
ただ、日本で見たウサギのような可愛らしさは皆無。
恐ろしい牙を持っていて、恐ろしい目で襲いかかって来る。
どちらかと言えばイビルサーペントの方のジューシーさが鶏の唐揚げに似ている。
キラーラグは少しだけ淡白な味わいだ。
ある時期からこの2種類の魔物が大量に狩られるようになっていた。
その時はまだ会話が出来なかったため、大量にいるために狩る量が多いのだと思ったのだが、どうやら無言の唐揚げ要求だったそうだ。
まぁ、知らず知らずのうちに唐揚げの回数は多くなっていたので、何気にその要求は成功していた。
「いや、主。あれは唐揚げになるために産まれたのだから唐揚げで十分だ。ちなみに我はイビル派だ。今日も大量に狩るぞ!」
唐揚げになるためってものすごく可哀想だろう、それ。
ちなみにイビル派とラグ派に味の好みが分かれている。
コアはイビル派なのか。
俺もイビル派かな?
「狩りすぎるなよ? 滅んでしまったら意味がないんだから」
まぁ、狩っても狩っても何故か数が減っている形跡がないんだよな。
どうなっているのかは不明。
今度アイオン神が来たら聞くか。
そういえば、少しは落ち着いたのかな?
ロープとその仲間が神に寿命を押し付けて、数十分後アイオン神の部下が慌ててやってきた。
彼らの話によれば、かなり大混乱が起こっているらしい。
それを聞いたデーメー神はロープに戻せと怒鳴るが、アイオン神は何かを考えてからデーメー神を殴り飛ばして黙らせ、引きずって帰って行った。
さすがに黙って立ち上がってデーメー神を殴った時は引いた。
飛びトカゲも水色も引いていた。
それから数日してアイオン神がやってきた。
何故かとても不機嫌そうな雰囲気で、ちょっと構えてしまったのは仕方ない事だろう。
話を聞くと、どうやら寿命反対派の神たちは賛成しそうな神に色々と隠し事をしていたらしい。
意外に賛成派が多い事や、神が守っている星が既に滅んでいたこと、小さな争いが頻発している事など。
やはり争いはあったらしい。
よく隠せたモノだなと、少し感心してしまった。
「興味がないとそんなモノだ」
アイオン神が開き直って言うと、イラッとした水色が頭を尻尾で叩いた。
『大丈夫か』と少し焦ったが、アイオン神は苦笑い。
その後水色に謝っていた。
水色やここにいる仲間達は神の暇つぶしの被害者だ。
怒るのも分かる。
と言うか、龍の尻尾で叩かれたのに平然としていた神。
何気に恐いよな。
その日は、とりあえず色々と隠されていたという報告をして帰って行った。
そしてその数日後。
一瞬暇なのか? と疑ってしまったが忙しいらしい。
また、不意にやってきて、今度は大笑いをしだした。
しかも何故かロープまで一緒に。
……姿の無い存在と笑い合う姿が不気味だった。
落ち着いてから話を聞くと、反対派がかなり追い込まれているとの事。
それにはロープが課した魔法の発動が関係しているそうだ。
ロープたちは今までの恨みを込めて、星や子供たちに被害があった場合寿命を短くする魔法を付与したらしい。
それはこれからの未来に対してのモノだったのだが、今までの事が明るみに出るとそのあまりのひどさに過去に対しても寿命を短くする魔法を課したらしい。
その結果、重鎮と言われる反対派の神たちの寿命が数百年単位で消えた。
「いったい何をしたら数百年も消えるんだ?」
俺の言葉に、ロープが教えてくれた。
魔王を使っての神信仰の布教。
自分達を崇めさせるためどれほどの子供たちが被害にあったかは、数が多すぎて把握できず。
また、暇な神たちは、どれだけ魔王を強く出来るか競いだした。
その結果、1人の勇者では討伐できない状態になり複数の勇者を同時に召喚。
俺の時は4人だったな。確か。
魔王の討伐には成功したが、勇者にするためにギフトを贈りすぎて修復不可能。
生き残った勇者が災いの元になりだしたため回収。
が、回収した勇者も神たちには不要。
なのでそのまま消滅させたそうだ。
消滅させられた子供たちの数もまた数が多すぎて不明。
他にもと話し出すロープを途中で止めた。
あまりの馬鹿らしさに。
「つまり、全て暇な神と自分が大好きな神が起こした問題だな」
「……そうだな」
アイオン神が苦笑を浮かべる。
ちなみにアイオン神の寿命は縮まっていないそうだ。
たとえ縮まったとしても、それは仕方ない。
自分の責任だと言っていた。
…………
「今日も大猟だな、主!」
「……チャイ、加減をいい加減覚えようか。このままの数を狩り続けると本当にイビルサーペント、滅びるから」
目の前に大量に積み上がったイビルサーペントを見る。
短時間で狩るのは別にいい。
だが、数が多すぎる。
「いや、主。この魔物大量にいるぞ。まだあそこに」
チャイが前足を指す方を見ると、少し離れた森の奥に大量の魔物が。
全てイビルサーペントの様だ。
大量の巨大ヘビが立ち上がってくねくね、くねくね。
見なかった事にした。
「それにしてもこう大量に積み上がると、怖いモノを感じるな」
目が半開きの状態のモノもいるため、呪われそうだ。
「そうか? 美味そうに見えるが」
……絶対に見えないから。
見えるチャイの眼がおかしいから。
いや、他の仲間達も舌なめずりしている。
怖いって。
仲間たちが魔法でイビルサーペントを空中に浮かせた状態で家へ戻る。
死んだ巨大ヘビの大行列。
それが森の中を静かに移動。
正直、ホラー映画だな。
「おっ、帰って来たな。お帰り。それにしても不気味な光景だな」
家に帰るとアイオン神がいた。
おかしいな、5日ほど前にも遊びに来ていたよな?
やっぱり暇なのか?
忙しいと言ったのは聞き間違いか?
「忙しいと言っていたのに、大丈夫なのか? また前回のように部下が泣きついてきたりしないだろうな?」
前回は仕事の時間に抜け出してきたようで、部下が泣きながら乱入してきた。
速攻追い返した。
「今回は大丈夫だ。なんせ、反対派のばか……神たちが、一掃されたからな」
いっそう?
えっと、一層……一掃?
「えっ! 一掃? なんで? 誰に?」
いやいや、なにこの急展開。
反対派もまだまだ頑張っているような事を言っていたのに。
「創造神だ。あのお方が最終判断を下された」
「……今さらだな。創造神がもっとしっかり管理していればよかったことだろう?」
「その通りなんだろうが、許してほしい。問題を起こした神たちの消滅、歪められた星の修復、魂力の安定に全ての力を使って、混乱を収めたのだから」
全ての力?
「創造神は力が無くなっても問題は無いのか?」
「まさか、そのままお亡くなりになったよ。次の創造神は賛成派の1人だ」
亡くなった?
つまり命をかけて一掃したって事か。
「それで、お願いがあるんだ」
「断る!」
「まだ、何も」
「断る!」
嫌な予感しかしない。
これ以上、巻き込まれてたまるか!




