表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界に落とされた…  作者: ほのぼのる500
片付けは隅から隅まで!
162/672

07.エンペラス国 第1騎士団団長

-エンペラス国 第1騎士団 団長視点-


エレガリ町の最終報告を確認する。

死者数 847人(元奴隷含む)。

行方不明者数 141人(元奴隷含む)。

怪我人 多数。

ため息をぐっと耐えながら、報告書から視線を上げる。

目の前には第2騎士団団長アルトローグと副団長ビスログがいる。


「ご苦労様。かなりの強行軍での移動だったはずだ、疲れただろう」


「いや大丈夫だ。今回のエレガリ町の事は、すでにほかの町や村にも広がりつつあるが、どうするつもりだ?」


「……何もしない。卑怯な方法だが、今はそれ以外に思いつかない」


「わかった」


「あぁ、アルトローグ団長、しっかり休憩してくれよ。部下達のためにも」


「……わかった」


俺の言葉に、副団長がホッとした顔をする。

この言葉を言っておかないと、このアルトローグ団長はすぐに他の仕事に向かってしまい、部下達の休憩を忘れてしまうのだ。

忘れると言うか、自分が大丈夫だから部下も問題ないと考えるらしいが……彼の部下達にとってはたまったものではない。

彼らには以前、同じ任務に就いている時に泣き付かれた事がある。

今も副団長の顔を見て、苦笑いがこぼれる。

2人が部屋から出ていくのを見送り、大きなため息がこぼれた。


今、エンペラス国は混乱の真っただ中にある。

その犠牲となったのが報告にあったエレガリ町だ。

町の住人と元奴隷達との争いが起きて、町が崩壊したのだ。

エレガリ町についた第2騎士団が見たのは、炎に消える町だったそうだ。

町で抗争ありと部下から連絡があり、すぐに第2騎士団に動いてもらったが間に合わなかった。

1つの町が崩壊するのに、たった2日だったという。


元奴隷達は町や村を支える、裏の仕事を押し付けられていた。

町の何処をどう潰せばいいのかを一番知っていると言ってもいい。

そんな彼らと、今まで苦労をせず過ごしてきた者達が、争って勝てるわけがない。

最初から結果が分かっていたため、第1騎士団の団員を各地の村や町に回してトップを説得してきたが……。

犠牲が出なければ、やはり理解は難しかったようだ。

だが、犠牲が多すぎる。


今この国では各地で奴隷解放に対し反対の声が上がっている。

だが、このエレガリ町の事が広がれば、おそらくその声も少しの間だけでも、落ち着くだろう。

その間に、何か手を打たなければ、また多くの被害が出てしまう。

……どうすれば、いいのか。


……


部屋の入り口が勢いよく開く。

驚いて視線を向けると、慌てた様子の第3騎士団副隊長クルビアビスが駈け込んで来た。


「魔石が!……魔石の一部が盗まれました!」


その言葉に息を飲む。

もしもの事を考えて、魔石の護衛を第3騎士団にお願いしていたのだが。


「申し訳ありません。団長が……」


あぁ、第3騎士団の団長ヴィルトアは、確かに少し不安があった。

だが、人手が足りずその事に目をつむってしまったのだ。


「すまん、俺のミスだ」


第3騎士団の中は、団長寄りと副団長寄りで2つに割れてしまっていた。

副団長は奴隷解放に理解があったが、団長は……。

副団長の話によれば、盗まれた魔石の一部と共に半数近くの第3騎士団の姿が消えたそうだ。

目の前の副団長は、顔を白くして悲痛な表情で何度も頭を下げる。


「落ち着け。これは俺が予想しておかなければならなかった事だ」


そうだ。

騎士の中にも奴隷賛成派は、少なかったが、一定の数がいたのだ。

第1騎士団や第2騎士団、そして第4騎士団などは城の中で奴隷達が何かに守られる姿を目にしている。

目にしていなくとも噂を耳にし、奴隷に手を出した者達の結末も聞いている。

記憶や知識が奪われると言うのは騎士にとって恐ろしい事だ、すべてを失うのだから。

恐ろしさを身近で感じていた者達は、奴隷解放に積極的と言ってもいいだろう。

だが、第3騎士団は城下町や各村に派遣されていたため、恐ろしさをその身で感じてはいない。

その違いが、ここに来て大きな分かれ道となってしまった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 因果が応報しているようだね。結構結構
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ